バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

加茂律子デニーズ



  アテネ大学でのはじめての授業も終わり、教室を出ると太陽は中空にあり、眩しいほど輝いていた。
 いつもなら、まだ寝ているところ。
 アッ!と言う間の三時間が過ぎ、爽やかな気持ちにさせられた。

  月~土曜日までの、午前10:30~11:00にアテネ大学に行けば、こうした人たちを見ることが出来るだろう。
 たとえ一日とは言え、こうした世界を身をもって体験できた事は、ひとえにドゥ-シュンのおかげである。

  ISHに戻って、ランチを作る事になった。
 食材は、ライスとミートとトマト。
 一人、20Dr。
 ライス600g(16Dr≒130円)に、ミート3人分(32Dr≒255円)。
 ライスは俺が受け持ち、ミートとベジタブルはドゥ-シュンが料理を担当する事になった。

  日本のように炊飯器はない。
 鍋に水洗いしたライスを入れ、適量の水を浸し、30分ほど炊き上げる。
    俺     「ちょっと硬いか?」
    ドゥ-シュン「ベリー・グッド!」
    俺     「ほんと?ちょっと硬いと思うんだけどなー!」
    ドゥ-シュン「大丈夫!」
    俺     「しょうがないか?鍋で炊き上げるの初めてだもんな!」

  ドゥ-シュンは野菜とミートをゴッチャにして炒めて、俺の炊き上げたライスの上に載せて食べる。
    俺     「うん、美味い!」
    ドゥ-シュン「美味いね!」
    俺     「いけるやん!」
 美味そうに食っていると、タイミング良くショ-ンが帰って来た。
 もう一人加わって、四人で昼食会。
    ショーン「ジャパニーズ・ライス!ベリーグッド!」
 何もしなかったのに、美味そうに食ってやがる。

                  *

  夜になって、あの日系三世がISHに戻ってきた。
 ストーブにあたっていたおかげで、再会する事が出来た。
 ストーブを囲んで、一時間ばかり話をする機会をもつ事が出来たのだ。

  彼女、日系三世とは言え、日本語はほんの少しの単語だけで、ほとんど会話はできないので、もっぱら片言の英語で話をする。
 彼女の日本語より、俺の英語の方がまだましだと言う事なのだ。
 「パードゥン?」と何度も聞き返しながらも会話が続く。

    俺   「学生なの?」
    デニーズ「学生よ!21だもん。」
    俺   「専門は?」
    デニーズ「専攻は犯罪学よ!後一年で卒業するけど、もう二年上で勉強するつもりなの。」
    俺   「好きなんだ!」
    デニーズ「あなたは?」
    俺   「建築!学生は卒業したけど、会社辞めてここにきてるんだ!」
    デニーズ「アーキテクト!素晴らしい!」
    俺   「犯罪学は面白いだろうね!でも危険じゃない?」
    デニーズ「事件の後だから、危険じゃないわ!面白いわよ!」

  今、カナダ・トロントに住んでいる。
 日本でも仕事をしてみたいけど、どういう職業があるのか?とか、アパートの家賃はいくらかかるのか?などと現実的な質問をしてくる。
 三人姉妹の真ん中で、ミドル・ネームをRitzuko(律子)と言う。
 正式には、”Denise Ritzuko Kamo”、つまり”加茂律子デニーズ”さんが彼女の本名なのです。

    デニーズ「二ヶ月のユーレイル・パスを二つ持って、これからスイスに行く予定よ。あなたはこれからどうするの?」
    俺   「取り合えず、フランスかな!」
    デニーズ「いつまで?」
    俺   「さあ?おれにもわからない?あえて言えば、金が続くまでかな。」
    デニーズ「良いわね!」
    ・・・・・・。
    デニーズ「トロント~アムステルダム間の往復の飛行機代が400$なの。」
    俺   「へ~~!安いじゃん。」
    デニーズ「安いでしょ。このユーレイル・パスも二ヶ月で195$なのよ!」
    俺   「俺のユーレイル・パスはたださ!」
    デニーズ「どうして?」
    俺   「日本の旅行者に、もう使わないからって譲ってもらった。」
    デニーズ「それって、犯罪でしょ!?」
    俺   「見つかればね。」
    デニーズ「祈ってるわ!」
    俺「有効に使ってって言うから、慈善事業のようなものだ。」
 彼女みたいに、日本の若者にも、もう少し安く海外にいけるようにならないと、良い国際人に育たないと思うんですが・・・・どうでしょう。

  アテネの山には、雪が積もっている。
 街の中にもクリスマスの準備が少しずつ始まっているようだ。
 街はもう冬支度。
 ショ-ンは、明日イスラエルのキブツに発つ。
 そして、律子も明日、北ヨーロッパに向けて旅立つ。
 皆、確実にかっこたる目的を持ち、自分達以外の国を必死に理解しようとやって来る。
 彼らは皆、学生なのだ。
 日本の学生はいかに遊ぼうと頑張っているが、ここに居るほかの国の学生達は、見知らぬ国から何かを学ぼうと必死なのだ。
 この差は、いつかはっきりとした形であらわれてくることだろう!

   日本の学生達よ!
 国の中で遊んでいないで、大海に泳ぎでよ!
 差の開かないうちに!!!!


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