バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

北イタリアバスの旅



  午前六時半、駅構内の掃除の為外へ追い出されてしまった。
 仕方なく寒い外へでて、毛唐三人と一緒に、昨日降ろされたバスに向かって歩き出す。
 道がわからなくなるといけないので、駅で偶然会った日本人の彼とは駅で分かれた。

  会社へ出勤する為か、駅に集まるイタリア人達が多く集まってくる。
 相変わらず、外はガスが立ち込めまだ薄暗い。
 とぼとぼと、来た道らしき道を戻る。

  バス停に着くと、イタリア娘がもうバスを待っていた。
 シュラフを肩に引っ掛け、汚い格好をした毛唐たちと俺を、”何で今頃歩いてんだろう?”というような変な目で見てくる。

  何とか、もとの場所まで戻り、ガイドたちが泊まっているホテルに入る。
 運転手やガイドたちの宿泊費は、俺達乗客たちが払っているのに、何で俺は野宿なんだろう。
 ホテルのロビーに座り、皆が部屋から出てくるのをジッと待つ。
 待つことへの辛抱。
 なかなか出て来ない。

  途中、腹が減って近くで開いていたパン屋へ入って、イタリア・リラをまだ両替していない事に気がつき、慌てて店を出ると言うハプニングもあった。
 ホテルの支配人が起きてくるのを待って、仕方なくホテルのレートで両替を頼む。
 本当なら、闇で換えた方が得するのだがこの際仕方がない。

      ≪1ユーゴ$≒36イタリアリラ≫
      ≪1ドラクマ≒16イタリアリラ≫
      ≪1円≒2イタリアリラ≫
  以上が、ここホテルのレートである。

  ユーゴのお金を4000リラに両替してもらったが、ギリシャのドラクマ・コインは断られてしまった。
 とにもかくにも、お金が手に入りさっき慌てて出てきたパン屋へ、今度は大きな顔をして入っていった。
 ハーフKgで380リラ(190円)の美味しそうなパンを手に入れる。
 もうこの頃になると、外も少し明るくなり、会社に出勤する人の姿も多く見られるようになった。
 空からは、雨がポツリと落ちてきた。

    俺「良かった!昨晩この雨が降っていたら最悪だったけどな。」

  午前8時30分、暖かいホテルに泊まった人たちが集まってくる。
 しかし、彼らはこれから朝食を取り、のんびりとバスでの長旅の疲れを癒している。
 自分達の都合で野宿をしたのだが、こうまでのんびりされると、だんだん腹が立ってきた。

  午前十時、バスがスタート。
 雨が本格的に降ってきた。
 雨に煙るイタリアの街が、バスの窓を通して見えてくる。
 大きな、ヨーロッパ特有の大理石の建物が目に飛び込んでくる。
 日本にいるとき、思い巡らしていた本当の中世ヨーロッパの姿を見たと感じたのは、ここ”VENICE(ベニス)”が初めてのような気がする。

  あの太陽いっぱいのギリシャの陽気さと対称的に、このイタリアの雨に煙る、しっとりとした冷たい街、これが同じヨーロッパ、それもすぐ近くの国同士なのか、疑いたくなるようなそんな雰囲気に包まれている。

  午前8時出発が、二時間も遅れたせいで、ミラノの街に着いたのが午後1時。
 バスはイタリアの小都市を快調に走ったにしては、予定より三時間も遅れてしまっている。
 大きな大理石の建物群に、立ち枯れの林の中をのんびり散策する地元の人達、そしてトロリーバスがゆっくりと走って行く。
 いつの間にか雨は止んでいる。

  普通の道路脇のバス停に停車して十五分の休憩。
 その間に、ミラノまでの乗客が数人、バスを降りていった。
 ミラノの街を暫く走って、バスは郊外を抜け”GENEVA(ジェノバ)”に向かう。
予定では、午後六時頃到着なのだが、いつのことになるのやら。

  最初の予定では、このミラノで降りるつもりにしていたのだが、考えが変わりパリまで行く事にした。
 イタリアへは再度立ち寄るつもり。
 今は通過するだけのイタリアだけど、バスの中から見るイタリアもなかなか風情があり、立ち去りがたい気になる。

                 *

  郊外に抜けてまた、道路をまたいだようなドライブインに、午後二時半に立ち寄った。
 一時間の休憩だ。
 食事を取る。
 ここでまた、ワインの栓抜きを490リラ(245円)で手に入れてレストランに入る。
 ここもセルフ・サービスになっていて、スパゲティ―・パン・野菜(キャベツだけ)・ミネラルウオーターの四品で1680リラ(840円)を支払う。

  久しぶりに食事らしい食事をした気がした。
 ユーゴスラビアからイタリアにかけて、こうした道路を横断して建っているレストランを数多く目にすることが出来た。
 この地域のファッションなのかも知れない。

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