風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

P.コーンウェル

『異邦人』

『神の手』

『黒蠅』 相原真理子訳

 のっけから「うじ虫」である。映像化されれば、きっとこの話の最初のカットはこれのアップでしょう。ごていねいにいろいろ解説まで付いている。この黒蠅が、話の中にときどき出てくるので、この題かな。
 今回の話は、『警告』でつかまった狼男とその仲間のシャンドン一家が相手。コーンウェルは、悪者は悪者としてしか描いていないので、ものすごく醜悪に描かれている。(本当に女性が書いているのかと思うほど。)でも今回の狼男は、ちょっと内面が伺えて、同情はできないものの、見方が変わった。

 ルーシーはかなりのスーパーウーマンになっているし、マリーノも警察やめてるし、登場人物の周辺はかなり変化している。
 主人公のスカーペッタは、前に検視局長を辞めてフリーになっているので、以前のような政治的駆け引きもなく、サスペンスもあまりなく、今回が一番安心して読めた。狼男と面会するときもっと心理的に追いつめられるかと思ったが、そうでもなかった。
 かわりに、まわりがものすごく手を汚している・・・。今回スカーペッタは周囲の人たちに過保護にされているような気がした。でも次回からは、今までのように緊張感に満ちた話になりそうだ。
 FBIの証人保護プログラムというのを知ったのは『名探偵コナン』でだったけれど、ここにも出てきていた。それに武器やコンピュータ、検視など、いろいろな科学知識は健在。このシリーズを読むと、犯罪を犯すのがばかばかしくなると思う。

 驚きが二つ。
 スカーペッタが若返っている!前作の時は50代後半だったと思うけれど、今回46才!作者が設定し直したそうだが、今までの検視局長のキャリアは一体いつからのことになるんだ・・・。まあ、新しい話が始まったと思えばいいか。
 それと、いきなりあの男が復活! な~に~?そんなのあり~!?

 なんだかスカーペッタが身軽になったせいか、作者も何でもありになっているような気もしないでもないけれど、これからの話も目が離せないなあ。(2004.1.24)

『痕跡』

 すでにベストセラーになっているようですが、スカーペッタのシリーズです。

 前の『黒蠅』で再会したスカーペッタとベントンは、今回もすれ違いのような。一緒にスキーに行けなくて、スカーペッタはご機嫌よろしくない感じです。
 しかも、スカーペッタの足をひっぱる人物がやっぱり出てきて、ドロドロとしています。
 ルーシーもあいかわらず恋人運が悪いです。

 スカーペッタが依頼されてもと勤めていた検屍局を訪ね、そこで遭遇した事件と、ルーシーとベントンが関わった事件とが並行して進み、思いがけないところからリンクしてきます。
 で、今回はあやしい人物が始めから描かれているので、どういうふうにつながるのかとか、動機の部分とか、事件に関わる人物の闇とかの方に重点が置かれているようです。

 主役なり準主役がねらわれている状況というのは、どうもハラハラしてしまって、読んでいて落ち着きません。
 でもきちんと解決してくれているのでまあよかったです。

 訳者あとがきによると、映画化の話があるようです。スカーペッタはジョディ・フォスターらしいです。

 あと、この文庫本は妙にフォントサイズが大きい。上下巻にするためでしょうか? それから「有象無象」くらい漢字で書きなさいよ~、と突っこみたくなりました。(2004.12.24)

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