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2006.11.20
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カテゴリ: 洋書

 アメリカのSF作家フレデリック・ポールの著作。


粗筋

人類は地球を飛び出し、火星にもコロニーを築き上げていた。テラフォーメーション(地球環境化)が進んでいない火星では、住民は密閉された空間で生活することを強いられていた。生活は厳しく、「火星人」は地球からの財政支援抜きでは生存さえできず、同じ人類でありながらも地球人からは二流市民扱いされていた。
 火星を支援することは地球にとって大きな負担となっていた。にも拘わらず支援していたのは、もし火星の地球環境化が成功し、火星が広大な農地となり、食料を地球が輸入できるようになれば、地球の食糧問題は解決すると見られていたからである。火星の地球環境化計画には日本やロシアやヨーロッパが投資していたが、どこより投資していたのがアメリカだった。
 火星の地球環境化計画は、次の通りである:冥王星の外にはオルト雲がある。ハレー彗星などの彗星は、ここから誕生する。彗星は様々なミネラルを含んだ氷の塊である。彗星を人工的に太陽系の中心に向かわせ、火星に衝突させる。衝突により彗星は分解し、大量のガスが発生する。それが火星の大気となり、最終的には火星を生命維持機器抜きで住める環境へと変えるのである。
 デッカーは火星生まれ。他の火星人同様、裕福とはお世辞にも言えない暮らしをしていた。しかし生まれながらそのような環境に育っていたので、自分のことを不幸だと悲観することはなかった。
 デッカーは火星が地球同様の大気を持ち、肥沃な農地となることを夢見ていた。それを支援する為、彼はオルト・マイナーになることを願った。オルト・マイナーとは、オルト雲で彗星を抽出し、太陽系の中心に送る技術者のことである。
 残念ながら、火星は貧しい。オルト・マイナーの技術を習得するには地球にある訓練学校を卒業しなければならないが、デッカーは地球への旅費さえ捻出できない。
 そんなところ、長年消息を絶っていた父から連絡が来る。資金を調達するから、地球に来い、と。デッカーは訳の分からないまま地球に向かった。
 訓練学校に入学するには、まず試験に合格することが必要だ。デッカーは自信がなかったが、父はどこからか試験用紙を入手した。カンニングである。デッカーはそうと知らずそれを使って勉強し、試験に合格した。
 訓練学校で、デッカーは様々な生徒や教師と出会う。地球人が火星人を二流と見なしていることを嫌なほど感じる。
 一方、デッカーにとって不利なニュースが耳に入ってきた。火星地球環境化計画は時間も金もかかり過ぎることから、撤退もしくは縮小するべきだと主張する国が出てきたのだ。特に日本は地球軌道上にスペースコロニーを建設し、そこで食料を栽培・収穫するという計画を進めていて、こちらの方が火星地球環境化より安く早く完成するという。その計画が実現すると、火星コロニーは用済みになる。火星人は完全に見捨てられるか、財政支援の継続の為より不利な条件を飲むか、の二者択一を迫られていた。火星人の代表となったデッカーの母は、地球諸国政府との交渉で苦難の日々を送っているという。
 デッカーはそのニュースを聞きながら、オルト・マイナーの訓練を続けた。
 途中、デッカーは衝撃の事実を知る。生徒の多くがカンニングで入学し、進級していると。学校側に報告しようとするが、教師が多数関係していて誰に報告すればいいのか分からない上、自分自身もそのカンニングで入学したことを知らされ、何も言えなくなってしまった。
 数年後、デッカーはようやく卒業し、火星軌道上の宇宙ステーションに配属される。
 宇宙ステーションでの生活にも慣れてきた頃、デッカーは宇宙ステーションで何らかの陰謀が実行に移されるのを知る。
 その陰謀とは、宇宙ステーションを乗っ取り、太陽系の中心に向かっている彗星の軌道を変え、地球――日本――に衝突させることだった。こうすれば、日本やヨーロッパは火星地球環境化計画の離脱を撤回する(陰謀が成功すれば日本が残っていない可能性が高かったが)。火星地球環境化計画に多額の投資をしているアメリカにとって有利だし、火星にとっても有利な陰謀である。
 陰謀にはデッカーの同級生や教師が多数加わっていた。カンニングで入学した生徒が多かったのも、教師がカンニングに加わっていたのも、この計画の為だった。デッカーが入学できたのも、母が火星代表の為、陰謀に参加するだろうという考えがあったからだ。
 デッカーは困惑する。火星人として、火星の地球環境化計画が中止になったり、遅れたりするのは避けたいと考えているので、陰謀の根拠は理解できる。しかし、陰謀が成功すれば、多数の地球人が死ぬ。どうすればいいのか。
 デッカーは迷わず陰謀の阻止を選んだ。陰謀者を宇宙ステーションの一郭に封じ込めることに成功する。


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解説

無駄に長い感じがする小説。
 訓練模様が本の大半を占め、陰謀阻止の部分は短くて呆気なく終わってしまう。この程度のストーリーで280ページ(字が細かいので、普通の本の350ページに相当する)にもしてしまうのはちょっと……。
 単調で、最後まで盛り上がらない。
 ハードSFはみんなこうなのか。
 火星があまりにも貧しい為に争いごとがなく、そこで生まれた火星人は暴力を理解せず、戦争がまだある地球や地球人を文明的でないと考えている……、という設定はどうかと思ってしまう。貧しいと逆に争いごとが起こると思うが。現に、アフガニスタンはそうだろう。それとも火星の居住地は地球の資金援助で成り立っている為、そのような争いごとは有り得ないのか。
 とにかくデッカーが反暴力・反戦姿勢を頑固なまで固持するのは呆れた。著者にとっては理想のキャラかも知れないが、こちらにとっては非現実的なだけで、馬鹿にしか見えなかった。
 デッカーの愛読書が「ハックルベリー・フィンの冒険」というのもどうか。デッカーはこの小説が面白いというが、学校で読まされた自分としてはどこが? と思ってしまう。こう感じた読者は多かったのでは? 作中の「いかだの法律」について、デッカーが何度も述べる度に嫌になった。
 デッカーは地球人からすればうとい田舎者だが、精力だけは旺盛。女の後を追っかけてばかりいる。本作品でも何人もの女と付き合う。それでもうとさを失わないのはある意味超人的。
 本作は五、六年に及ぶデッカーの成長振りが描かれているが、時間の経過が明確に記されていない為、登場人物が急に年を取っている錯覚に見舞われることが多かった。
 本作は1980年代後期から1990年代初期に書かれたと思われる。日本がバブルで浮かれていた頃。その繁栄はアメリカ人である著者の目からも永遠に続くように見えたらしい。本作では未だに日本が経済大国としてアメリカやロシアや欧州と肩を並べていることになっている。その後の日本の不景気振りを見ると、信じられない話。中国の存在がまるでないのは、不気味でもある。
 現在著者が同様の小説を書いたら、アジア代表は日本ではなく中国になっていただろう。
 惑星間飛行が可能な未来が舞台となっている割には、技術や思想はそう進んでいないようだ。医療技術があまり進んでいない証拠としては、エイズは性病として健在であること(ワクチンはあるようだが)が指摘できる。思想が進んでいないことは、地球人が火星を単なる植民地としか見なしていないことから明らか。
 著者は、たとえ宇宙に飛び出せるようになっても人間なんてそう変わらない、と思っているのだろうか。



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Last updated  2006.11.20 15:10:36
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