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2006.11.30
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カテゴリ: 邦書

 推理作家鮎川哲也が本格推理短編を一般公募した結果出版された短編集。12編収録されている。残りは こちら


粗筋

「柳之介の推理」:利根祐介
 近所で二件の殺人事件が発生した。男性が公園で殺された事件と、女性が密室となった自宅でバラバラにされた事件である。当然ながら、世間の興味は後者の事件に向いていた。
「僕」と柳之介は、この二件の事件について推理する。柳之介は、二件の事件は同一犯で、その犯人はバラバラ殺人の第一発見者の女性だと言う。この女性はある男性を殺したかったが、そのまま殺すと自分に容疑がかかるので、公園で物取りの仕業に見せかけて殺した。更に、警察の捜査が手薄になるよう、近所に住む全く無関係の女性をバラバラにし、現場を密室にして殺害した、と。
 ……これが事件の「真相」となっているが、この推理がおかしいのは明らかだろう。
 男性の殺人から警察の注意を反らせるかも知れないが、女性の殺人に注意が行ったら、そちらから事件の真相が発覚してしまうのでは、と考える筈。警察なら男性の交流関係とバラバラ殺人の第一発見者に繋がりがあることを即座に掴む筈。
 柳之介は「俺は警察じゃないからこの推理について通報する義務はない」と言ったところで本編は終了してしまう。典型的な無責任探偵の名推理。いや、新聞記事からの情報のみで組み立てた「推理」で、事件解決に貢献していないのだから、所詮偏屈男の戯言に過ぎない。
 作者は柳之介を通して密室殺人論をあれこれと展開するが、犯罪行動心理論についてはどう思うのか。

「鳥」:蕎麦米単九
 金に不自由しない道楽者が殺される。殺害現場は密室で、被害者本人が集めた鳥類数十羽が放たれていた。被害者は、自宅に建築家や、手品師や、音楽家などを住まわせていた。警察は、いずれかが犯人、と見る。
 犯人は手品師だった。犯人は現場から出て鍵で施錠した後、手品で使うハトに鍵をくくり付け、郵便受けから現場内に放って、密室を完成したのである。数十羽の鳥を室内に放ったのは、鳩が中にいても不自然でないようにする為のカモフラージュだった。
 被害者が飼っていた鳥には番号が付けてあり、全て回収したところ一羽多いことが判明し、そこから犯人が割れてしまう。手品師ならもっと手の込んだトリックを使ってもらいたかった。被害者がヘボ手品師と罵倒した(それが動機)のも当然。
 やたらと図が多いのはなぜか。読んでみても必要とは思えないのだが。
 編集者は「奇妙な筆名」とコメントしているが、はっきり言ってふざけた筆名。最近はこういう筆名を見ると萎える。

「藤田先生と人間消失」:村瀬継弥
 小学時代の学生らが同窓会を開く。何よりも楽しみしていたのが担任教師藤田先生との再会だった。誰もが小学時代のある謎の真相について知りたがっていた。
 小学時代、末浜という少女が経済的な理由で退学した。クラスメートがそれについて様々な風評を広めそうになるところを、藤田先生が止める。末広は竜宮城からのお姫さまで、竜宮城に帰るのだと。藤田先生は、末広はプールで消えるんだ、と豪語した。
 クラスメートは半信半疑でその日を迎える。末広は九人のクラスメートと共にプールに飛び込んだ。九人が反対側に泳ぎ着いた頃には、末広は消えていた。それ以後、末広は姿を現さなくなった……。
 同窓会で、元クラスメートは藤田先生に真相を迫るが、藤田先生は真相を言わなかった。末広はブラジルで暮らしている、ということだけを告げた。更に付け加える。あのトリックは当時小学生だったからできたことで、大人となった現在は無理だし、今の小学生でも無理かも知れない、と。
 幹事役は、末広の手紙から真相を知る。末広はプールの中で女子用水着を脱いだ。下には男子用水着を着けていた。末広は長い髪を切っていた。ヘアピンで留めていたその髪を外すと、短髪の、上半身裸の男子を装ってプールから出た。他がプールを探し回っている間にその場を何気なく後にしたのだ。現在の小学生は発育が早いから、トリックは無理かも知れない、と藤田先生は言ったのは、その為だった。
 ……まさに子供騙しのトリック。プールに入らなかった他の子はプールから出てきた末広に気付かなかったのか。ま、真相を知ってしまうと謎は呆気ないというのは事実らしい。
 作者は「作者の言葉」の部分で藤田先生シリーズは全部で七作あると言っているが、さっさと採用しろとの催促か。「作者の言葉」は採用が決まってから書くのだろうからこんな言葉でも大丈夫だったようだが、原稿を送った時点でこんな言葉を添えていたら編集部に図々しいと思われ、作品そのものが却下されていたかもしれない。
 それにしても小学を退学、なんていつの時代か。

「信州推理紀行」:友杉直人
 女性推理作家が、男性と共にロープウェイに乗る。終点駅にたどり着くと、ロープウェイ内に男性の姿はなかった。女性作家は全裸で倒れていた。クロロフォルムを嗅がされ、気を失っていたのである。女性の衣服も消えていた。ロープウェイは高所を進むので、途中飛び降りるのは無理。男性はどうやって姿を消したのか。なぜ女性を裸にして荷物と共に消えたのか。また、この事件は女性作家自身の著作そっくりだった。なぜ小説とそっくりの事件が発生したのか……。
 紀行作家がこの謎に挑む。当初は、女性作家が隠し持っていたフィルムを奪いたかったのでは、と推理する。フィルムを探し出す時間がなかった為、男性は女性の荷物と衣服を奪い、ロープウェイから去ったのだ、と。
 しかし、紀行作家は実際にロープウェイに乗って、真相に気付く。ロープウェイに乗る際、係員が頭を深く下げるのだ。その隙に男性はロープウェイから出られた。女性作家は一人でロープウェイに乗ったのだ。終点にたどり着く前に、女性作家は服を脱ぎ、荷物と共に外へ放り出した。全裸になったのは、無論「被害者」を説得力ある形で演じる為だった。自分の売れない著作を話題にする為の工作だったのだ。
 ……売れていないとはいえ、女がここまでやるかね、が率直な意見。それにしてもこのロープウェイの係員は非常に丁寧なおじぎをするようだ。
 作者は女性アナウンサーを主人公とした長編を書いているとコメントしているが、結局どうなったのか。

「愛と殺意の山形新幹線」:太田宜伯
 山形新幹線で男性の死体が発見される。ある会社の会計課長だった。警察はその会社で横領事件があったのを知る。横領事件が絡んでいるのでは、と考えた。ただ、横領した本人にはアリバイがあった……。
 テレビの火曜推理サスペンスをそのままなぞったような作品。
 列車で旅行する度に乗り換えのトラブルに直面する身としては、本作品で使われた列車乗り換えトリックもピンと来なかった。
 犯人は刑事に真相を突き付けられて自殺を試みるが、刑事の説得によって生きて罪を償うことになるラストも、テレビドラマそのもの。
 とにかく印象に残らない作品。印象に残るのは作者が本作品を書いた時は14歳だった、という事実だけ。

「砧未発表の事件」:山沢晴雄
 尾沢は人を殺してしまった。死体の顔を潰し、自分が殺されたと見せかけることはできないか……と考える。
 不動産会社で、ある死体が発見される。社長の知人である尾沢の死体だと断定された。現場は密室だった。警察は首を捻る。尾沢が現場に入るところは見られていないからだ。ただ、事件直前に、現場へ扉付きの書類棚が運ばれている。社長が書類棚に死体を入れて現場に持ち込ませたのでは……?
 真相は、尾沢が別人を装って現場に入ったのだった。そこへ、書類棚に隠れて運び込まれた社長が、尾沢を殺したのだ。冒頭で尾沢が人を殺した、というのは、実は五年も前の事件だった。
 ……冒頭の事件は実は五年も前の事件で、その殺人と今回の事件は直接関係はなかった。これだけでも充分面白いトリックなのに、他に色々盛り込んでいるので訳が分からなかった。作者はアマチュアでありながら推理作家協会会員なので、それなりに巧みな技を見せてくれるが、本短編集の上限である50枚という短い中に詰め込み過ぎてしまったようだ。

「仮面の遺書」:北森鴻
 著名な画家城島が焼死という謎の死を遂げてから三年。依子はある青年が城島の遺作を眺めているのに気付く。青年は城島の作品と、城島の死に興味を持っているという。
 城島は死亡前、殺人容疑が向けられていたのだ。しかし、アリバイが成立し、容疑は晴れた。青年がその事件を疑問に思う。殺したのは城島だと。青年は、画風から、「城島」は一人ではなく、二人いたのだと推理する。世間に出ていた「城島」は、愛人を殺した。しかし、表に出ていない「城島」がアリバイを手助けした為、殺害容疑から逃れられた。ただ、表に出ていないもう一人の「城島」は、アリバイで利用されたことを怒り、殺人犯である表の「城島」を殺害した。
 そのもう一人の「城島」は……依子だった。依子はそれを隠す為、青年を殺す羽目になる。
 ……奇妙な作品。青年が謎を解いてしまう場面に、依子が居合わせるというのは、偶然としては出来過ぎていないかと思ってしまうが。



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Last updated  2006.11.30 08:56:56
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