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2006.11.30
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カテゴリ: 邦書

 第二回ジャンプ小説・NF大賞入選作品。


粗筋

洋上でプルトニウムの輸送船とその護衛艦が忽然と消え失せた。国連は多国籍船団を編成し、捜索する。その船団を、謎の戦闘機が襲いかかる。レーダーに反応しないステルス機だった。船団には軍艦も含まれていたが、レーダーに依存するハイテク兵器制御システムが仇となって手も足も出ない。船団は一方的に駆逐された。
 国連は更に船団を送り込む。ブラック・オニキスと名付けられた謎の戦闘機に対処するため、各国の戦闘機が一帯の警備に当たる。
 しかし、ブラック・オニキスは突然現れると、警備に当たっている戦闘機を次々撃墜していった。
 業を煮やした米海軍は、一人の傭兵パイロットを雇う。日本人の各務徹(カガミ・テツ)である。また、軍事企業「オーシャン・トップ」は、自社で開発した戦闘機「シルフィード」を貸し出す。
 各務は、シルフィードに搭乗し、ブラック・オニキスとの一騎打ちに挑む……。


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解説

帯に近未来戦争シミュレーション超絶空中バトルとでかでかと書かれているが、所詮1990年代初期に書かれた作品。現在読むと古くさい。近未来、というよりファンタジーになってしまっている。
 ブラック・オニキスは、シルフィードを開発したオーシャン・トップによって開発されたものだった。一連の事件は、誕生したばかりで販売実績の少ないオーシャン・トップが、自社が開発した戦闘機を売り込む為の工作だった……ということだが、これは大問題だろう。
 本作品が発表された1990年代初期でも既に軍縮が叫ばれていたのである。現在は尚更だ。売り込みに成功できたとしても、裏工作にかかった資金を回収できるほどの発注があるとは思えない。こんな回りくどい工作をするより、正々堂々と売り出した方が安上がりだったのでは、と思ってしまう。
 オーシャン・トップがこの工作をしたのはブラック・オニキスの優秀性を実証する為のものだったというが、戦闘機は単に空中戦において優秀であれば売れるという代物ではない。もしそうだとしたらどの国もF-15、F-14、あるいはF-16を採用している筈である。採用していないのは、戦闘機購入には無論戦闘機そのものの運動能力も考慮されるが、それ以上にコスト(購入・運営費用)が考慮されるからだ。
 いかに優秀な航空機でも、べらぼうに高ければどの国も買わない。現在の軍は戦闘機に多用途性(爆撃や攻撃能力)を求めるから、ブラック・オニキスやシルフィードのように空中戦専門の航空機には手を出さないはず。一機で複数の任務をこなせれば、いくつもの種類の航空機を買う必要がなくなるからだ。少量の航空機を多種類揃えるより、大量の航空機を一種揃える方が整備面でも安くなる。
 また、オーシャン・トップがどうやって二機の全く異なる戦闘機を開発できたのかも不明。軍用機開発には巨額の費用が必要で、その資金を極秘裏に捻出するのは、たとえ大企業といえども無理な筈。また、航空機は一社で開発できるものではなく、メイン・コントラクターの下で複数のサブ・コントラクターが各部の開発を請け負う(開発コストとリスクを軽減するため)。
 米空軍次期主力戦闘機YF-22とYF-23のコンペティションでも、機体とエンジンの開発は別々で、YF-22とYF-23の開発者はそれぞれゼネラルエレクトリック社のエンジンとプラット・アンド・ホイットニー社のエンジンを搭載した機体(つまり最低でも四機)を製作したのである。もし社外に全く漏れずに開発できたとすると、オーシャン・トップは機体、エンジン、兵器制御システム、ミサイル……などを全て自社で製作したことになる。そこまでできる企業があるとは思えない。開発リスクが高くなり過ぎてしまう。
 戦闘機の開発には飛行試験が無論必要。空を外から見えないようにするには不可能なので、飛行試験すれば外部に必ず漏れてしまう。F-117は外部になかなか漏れなかったが、それは米政府の協力があったから。立入り禁止空域の空軍基地で試験飛行を行えた。しかし、オーシャン・トップが独自で開発した時は米政府の支援はなかっただろうから、空軍基地は使えなかっただろう。それともオーシャン・トップは飛行試験せずに開発できたというのか。
 作中のステルス技術も分かり辛い。ステルス技術はレーダーによって捕捉され難くする為の技術であり、レーダーから100パーセント見えなくなる、というのは不可能。
 この点は作中でも指摘されているが、ブラック・オニキスが採用しているステルス技術は結局「レーダー吸収塗料と電子妨害システムの組み合わせらしい」くらいしか説明がなされていない(ファイアフォックスみたいだ)。しかも雨が機体に付着するだけでステルス性が低下するというお粗末なもの。塗料となると機体全体に塗れない筈だから(高熱にさらされるエンジンノズルに塗料なんか塗れるのか)、その程度の技術でレーダーに全く映らなくさせるのは有り得ない筈。
 ブラック・オニキスはどこからもなくやってくる、ということになっているが、戦闘機の航続距離はそんなに長くないから、発進基地の位置くらいおおよそ特定できる筈。米軍がそれを全く掴めない、というのは信じ難い。
 また、ブラック・オニキスを相手にした船団の装備も現実離れしている。レーダーに映らない為手も足も出せず一方的にやられてしまうのだ。レーダーに映らないといっても肉眼で見えない訳ではないし、赤外線なら探知できる筈で、それに準じた兵器システムを搭載している筈。全てをレーダーに頼るのは有り得ない。
 作中には「F/A-18は多目的軍用機なので、空中戦を専門とするF-14との空中戦には勝てない」となっているが、これも正確ではなくなっている。軍用機はアビオニックスや内部構造の更新によって性能が向上できるので、機体の基本的な形状がそっくりでも運動性能が異なったり、搭載されている兵器の性能が向上されていたりする、ということも有り得る。現在では、更新がなされず旧式になりつつあるF-14が、最新型のF/A-18との空中戦で必ずしも有利に立てる訳ではない。
 作者は単に究極の空中戦を書きたかったらしい。現在となっては、そのアイデア自体時代遅れになってしまった。
 漫画化を前提とした賞の故、キャラもその行動も、ストーリー運びも漫画的(その割には文章が小難しい)。つまらなくはないが、首を捻りたくなる場面や展開が多い。大人になるとこういったものを素直に楽しめなくなるのは残念だ。
 主人公が日本人である為、他の登場人物が外国人であるにも拘わらず日本的な作品に仕上がっている。国連の役割が異様に大きいのもその為か。海外では、国連はここまで評価されていない。



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Last updated  2006.11.30 21:55:50
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