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2007.06.02
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カテゴリ: 洋書

 ニューヨークのテレビ業界を舞台にしたミステリー。
 作者のMike Lupikaは、本業はスポーツコラムニスト。元メジャーリーガーであるレジー・ジャクソンの自叙伝を共同執筆している。
 本作が初のフィクション。


粗筋

数ヶ月前に、女性テレビタレントのペギー・リンが突然姿を消した。
 ペギー・リンが自発的に失踪する理由はないし、誘拐されたにしても身代金の要求はない。結局どうなったのか、と世間は騒いでいた。
 そんなところ、ビリー・リンという男が、テレビレポーターのピーター・フィンリーを訪ねる。自分はペギー・リンの夫で、妻は殺されたに違いないと感じている。だからその犯人を探し出してほしい、と。
 ピーター・フィンリーは、ビリー・リンがペギー・リンの夫だと聞いてびっくりする。なぜなら、ベギー・リンは過去にピーター・フィンリーを付き合っていた時期があり、その時点ではペギー・リンは自分に夫がいるなど言っていなかったからだ。
 ビリー・リンは、そのことについて、結婚したものの早々と離婚に至ってしまった、と説明した。しかし、不仲が原因で離婚に至った訳ではなく、ベギー・リンは現在も頻繁に手紙を寄こしてくる、と。
 ビリー・リンは、ペギー・リンが働いていたテレビ局の関係者によって殺されたと信じていた。だから、ピーター・フィンリーに調べてもらいたい、と言う。
 ピーター・フィンリーは乗り気になる。真相を探し出せれば、スクープになる、と感じたからだ。
 ピーター・フィンリーは、ペギー・リンが働いていたテレビ局GBCを訪れる。
 そこでは、ペギー・リンの女友達クリス・スタンフォードや、仕事仲間のサム・カミングスや、現在の恋人であり彼女を現在の放送局に引っ張ってきたセス・パーカーなど、ペギー・リンの味方が数人いたものの、殆どはベギー・リンを嫌っていた。何の才能も技能もない成り上がり者だけだ、頭脳よりベッドテクニックを駆使してのし上がってきた、と。
 ピーター・フィンリーは、ペギー・リンがいなくなっても良い、と感じていた者が多くいたことを知っても驚きはしなかったが、容疑者の多さにゲンナリする。
 そんなところ、クリス・スタンフォードやセス・パーカーなど、ペギー・リンと交友関係があった者が次々と殺される。
 これらの死はペギー・リンの失踪と関係しているのか、そうだとしたら今更なぜ、とピーター・フィンリーは疑問に思う。しかし、犯人は直ぐ判明する。
 ビリー・リンだった。
 実はビリー・リンはペギー・リンと結婚したことはなかった。異母兄妹だったのである。しかし、ビリー・リンはなぜか自分がペギー・リンの夫で、唯一の理解者であると信じるようになった。彼は、ピーター・フィンリーを通じて「ペギー・リンを殺した可能性が高い者」の身元を掴み、手当たり次第に次々と殺していたのだ。いずれ真犯人に行き当たる、と思い込んで。ビリー・リンは、ピーター・フィンリーによって別の人物を殺すところを阻止された。
 ピーター・フィンリーは、自分はビリー・リンの素行調査を怠った為、ビリー・リンの凶行に手を貸してしまった、と悩む。
 しかし、悩んでいる暇はなかった。
 ペギー・リン失踪事件が未解決のままだったからだ。
 ピーター・フィンリーは、ベギー・リンの周辺を再調査。すると、友人らにもペギー・リンを殺す動機があったことを知る。
 殺されたクリス・スタンフォードやセス・パーカーは、自分らはペギー・リンの理解者で、裏切られることをはない、と信じ切っていたようだったが、ベギー・リンは自身のステップアップの為に二人との関係を絶つつもりでいた。ペギー・リンが自分らを裏切るつもりだ、という事実をどこかからか知ってしまったなら、クリス・スタンフォードやセス・パーカーにベギー・リンを殺害する動機はあった。
 ペギー・リンが働いていた放送局GBCは三大放送局の牙城を崩す「第四の放送局」とされてきたが、最近は財政的に苦しく、GBCのオーナーはリストラを敢行する予定だった。その中にはペギー・リンの解雇も含まれていた。ペギー・リンは、それを阻止する為、オーナーを脅迫する材料を得ていた。オーナーは、若い頃はポルノスターで、ペギー・リンはその出演作のビデオを持っていたのだ。オーナーにもペギー・リンを殺す動機はあった。
 しかし、ピーター・フィンリーが更なる調査を進めると、どれも動機には成り得ない事を知る。クリス・スタンフォードやセス・パーカーは、自分らが近々裏切られる予定だったことを全く知らず、オーナーが殺したんだろう、と堅く信じていた。ペギー・リンを怨む理由はない。
 GBCのオーナーにもベギー・リンを殺す理由はなかった。なぜなら、GBCは近々テレビ宣教師が所有するネットワークに買収されることがほぼ決まっていた。ペギー・リンはそのテレビ宣教師に取り入っていた為、GBCを解雇される可能性はなくなっていた。ペギー・リンにはGBCのオーナーを強請る必要などなかったのである。
 ピーター・フィンリーは、これらの事実を照らし合わせ、ペギー・リン失踪の黒幕はGBCの買収を狙うテレビ宣教師だ、という結論に至った。
 彼はテレビ宣教師が最近訪れている別荘地に足を運ぶ。そこにペギー・リンがいた。
 失踪は、ペギー・リンとテレビ宣教師が仕組んだものだった。テレビ宣教師は、GBCを完全に手中に収めた時点でペギー・リンを「復活」させ、話題作りするつもりだった。
 しかし、「ペギー・リンの夫」が、ペギー・リンが姿を消したのは仕事の問題がきっかけで殺されたからだ、と勝手に判断し、関係者を次々殺す、という凶行に。
 単なる話題作りとしてやった行為が殺人にまで至ったとなっては「復活」のタイミングが難しい。
 そうこうしている内にピーター・フィンリーは真相を掴んでしまった。
 ピーター・フィンリーは、「失踪」はペギー・リンとテレビ宣教師が仕組んだもの、というスクープで大々的に発表。
 ペギー・リンはGBCを解雇され、テレビ宣教師は不正行為で転落への道を歩むこととなった。


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解説

外から見ると華やかだが、中はドロドロ、というテレビ業界を扱った小説。
 やり方によっては非常に面白い作品に成り得たが……。
 イマイチインパクトに欠ける。

 ミステリーとして成立していない、というのが最大の理由か。
 ある女性タレントが失踪。……と思っていたら、女性タレントの周辺の人物が次々殺害されることに。
 一連の事件はどう繋がっているの? 何か裏があるのか?
 ……と、読み進んでいたら、殺害事件は関連してはいるものの直接的な関係はないことが判明。
 生涯結婚したことがない、という女性タレントにも拘わらず、「夫だ」と名乗る者が現れた。
 そんな胡散臭い人物の言葉を疑いすらしない、というのはおかしい。二人も殺された後にやっと「夫」の素行調査をし、「実は夫ではなく、自身の妄想の中で夫だと思い込んでいた、近所では評判の変人」という事実を掴むが、遅過ぎ。
 テレビレポーターは、常にスクープの裏付けや確認を取っておくことが求められる筈。
「いい奴そうに見えた」といった理由で殺人犯に被害者リストを提供したピーター・フィンリーは、レポーターとしてはあまり優秀ではない、と言わざるを得ない。
 これほど無能な者が探偵役だと、読者の方が先に真相(テレビ宣教師が一枚噛んでいる)に気付いてしまい、ようやく最後辺りになって「実はテレビ宣教師が絡んでいた!」という真相が提供されたくらいで驚けない。
 むしろ「その程度の真相にたどり着くのにそこまでかかったのか」と呆れてしまう。

 本作の最大のトリックである(らしい)「ペギー・リンは実は生きていた!」というのも、弱過ぎ。
 死んでいる、と信じているのは作中の登場人物らだけ。
 読者に対しては、「ペギー・リンが確実に死んでいる」という証拠を提供されないのである。死体が出た訳でもないし。これでは、「ペギー・リンは死んでいるのだろう」と信じる読者の方がおかしい。

 結末もよく分からない。
 ピーター・フィンリーは、ペギー・リンの失踪はでっち上げられたものだ、とスクープを大々的に放送。
 それは当然のこととして、どういう訳かテレビ宣教師の「不正行為」により、元々彼が持っていた宣教テレビ放送局が解体に追い込まれる……、という結末になっている。
 ペギー・リンの失踪の自作自演が、まるで犯罪行為であったかのような扱いを受けるのはなぜか。
 失踪事件は、人が殺害される原因にはなったが、ペギー・リンもテレビ宣教師も直接殺人に手を貸した訳ではない。
 変人が勝手な思い込みで勝手に行動しただけである。
 ペギー・リンは、この変人に何年も会っていなかったと思われる。テレビ宣教師は、この変人に会った事もないどころか、存在すら知らなかっただろう。
 世間を欺こうとしたテレビ宣教師やペギー・リンが社会的に何らかの制裁を受けるのは当然だが、法的に制裁を受ける、というのは、作者の「ハッピーエンドの強引な演出」にしか見えなかった。

 小説の文体も問題。
 作者はスポーツコラムニスト
 スポーツコラムは、ウィットに富んでいないと読まれないから、そういった文章は問題ない。
 しかし、小説でやるとじれったい、回りくどい文章になるだけ。
 本作は、最初はウィットを過剰に含んだ読み辛い文体だか、作者にとってそれが次第に苦しくなってきたらしく、ラスト辺りではまともな文章になっている。最初からシンプルな文章で通していれば良かったのに、作者は「自分は新聞のコラムニストで、文章のプロ」という変なプライドが働いてしまったらしい。前半と後半で文体のバランスが悪い作品になってしまった。
 また、作中には実在の著名なテレビコメンテーターの名前が続々と登場するが、アメリカのテレビ事情に詳しくない者だとチンプンカンブンだろう。実在の人物を作中に登場させるのは、面白いといえば面白いが、古さを感じさせるものにもなってしまう。自分は作中の実在のテレビコメンターの名前が分かった。が、その中には既に引退してしまった者もいる。若い読者にとっては呪文同然だろう。
 その意味では内輪でしか楽しめない小説に成り下がってしまっている。

 本作は、テレビムービーとして実写版ができたというが、評価はどうだったのかね。



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Last updated  2007.06.02 17:14:46
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