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2007.07.21
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カテゴリ: 洋書

 レポーターや裁判官などの経歴を持つDave Pedneauによる警察小説。
「B&E」は警察用語で、「Breaking & Entering(不法侵入)」の略。


粗筋

米国ウェストバージニア州にある田舎町ミルブルック。
 犯罪が稀にしか起こらない筈の町で、押し入り強盗事件が多発する。窃盗犯は、家の中に保管されてあった銃を盗み出していた。
 そんなところ、ベニング家に3人組の泥棒が入る。通報により警察官が駆け付けるが、彼は窃盗犯によって射殺されてしまう。
 ミルブルック検察局の捜査官ウィット・ピンチョンが捜査に当たる。これまでの窃盗事件は地元警察が担当していたが、殺人に発展したとなっては検察局も捜査に参加せざるを得ない、と。
 しかし、目撃者がいたものの曖昧な証言ばかりで、証拠は皆無に近い。捜査は進まなかった。国内の過激派による犯行らしい、ということしか分からなかった。
 一方、ベニング家の高校生の娘ジャニスは、犯人が誰か分かっていた。ボーイフレンドで高校生のミッキーと、その友人2人である。ジャニスは、ミッキーに父親が銃を所有していること、そしてそれらをどこに保管しているかを話したことがあったからだ。また、父親は「押し入り強盗の一人は背が低かった」と言っていたが、ミッキーの友人の一人は背が低かったのである。
 ジャニスはこのことを誰かに打ち明けようとする。警察官を父親に持つ女友達スーザンに相談するが、「下手に打ち明けない方がいい」と言われてしまい、誰にも打ち明けられない。
 押し入り強盗犯のミッキーらは、他人の為に犯行を重ねていた。盗み出した銃を「ある男」に売り付け、金を得ていたのである。ミッキーは、どうやらジャニスが自分らを疑っているようだ、と「ある男」に漏らしてしまう。
「ある男」は直ちに行動に出る。ベニング宅に爆弾を設置し、ベニング一家を住宅もろともに爆破したのだった。
 これに驚いたスーザンは、父親の警察官に、ジャニスが知っていた事実を打ち明ける。
 捜査当局は、押し入り強盗犯がミッキーと2人の仲間であることを掴んだ。3人の居所を急遽突き止めようとする。
 同じ頃、ミッキーと2人の仲間は、「ある男」に呼び出された。次の「仕事」の話だろうと思っていたが、「ある男」は銃で襲撃してきた。「ある男」は、手下を口封じすることにしたのだ。その結果、ミッキーの仲間2人は射殺され、ミッキーも瀕死の状態に。ミッキーの身柄は、ウィット・ピンチョンによって確保される。
 ミッキーは病院で治療を受け、捜査に協力する為証言する、と言う。ウィット・ピンチョンらは、当番弁護士などを伴って、ミッキーの病室を訪れる。そこでミッキーは、「ある男」が誰かをその場で指摘する。当番弁護士だった。弁護士は、国内の過激派グループの一員で、銃を調達する役割を担っていたのである。
 弁護士は、捜査官を人質にして病院から逃走。事前に借りていた倉庫に籠城する。
 ウィット・ピンチョンが駆け付けると、そこにはミルブルック署長に就任したばかりのウォーレスがいた。ウォーレスは、「自分はこのような状況に何度も直面している。俺にやらせろ」と言い出し、勝手に倉庫に入ってしまう。
 ウィット・ピンチョンは、前々からミルブルック警察署に内通者がいる、と感じていた。警察の情報が相手に漏れているとしかいえないことが度々起こっていたからだ。
 その内通者は、ウォーレス新署長だった。彼も過激派グループの一員だった。ウォーレスは、弁護士を口封じの為殺し、そのまま逃走しようとするが、ウィット・ピンチョンに追跡され、事故死する。


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解説

本作の最大の問題点は、主人公ウィット・ピンチョンが底無しの無能であること。
 無能な主人公は、必ずしも小説にマイナスではない。主人公の無能振りをユーモラスに描き、良作にすることもできるからである。
 ただ、本作の場合、作者本人が主人公が無能であることに気付いていない模様。
 だから問題になってしまっている。

 ウィット・ピンチョンは優秀な捜査官、という設定になっているのだから、ジャニスから話を聞き出し、押し入り強盗犯の身元を掴み、その黒幕にさっさと迫っていく、……と思いきや、つまらない事情によってなかなか核心に迫っていかない。
 そんな訳で、押し入り強盗犯の話は結局ジャニス本人ではなく、友人のスーザンから聞く羽目に。
 では、押し入り強盗犯の身元が掴めたのだから、さっさと彼らを捕まえ、黒幕の「ある男」について聞き出し、過激派組織を追い詰める、といった展開になる、……と思いきや、「実行犯は未成年なので法的手続きが必要」というしょうもない「障害」のお陰で、押し入り強盗犯の居所が掴めない。
 結局、押し入り強盗犯は黒幕の「ある男」によって始末されてしまう。一人が生き残ったのは、単なる奇跡。
 押し入り強盗犯の身柄を確保できた。「ある男」の正体が分かる。ウィット・ピンチョンは、「ある男」を追跡し、過激派組織を追い詰めに行く……、と思いきや、「ある男」は偶然にも同行させた弁護士だった。弁護士は人質をとって逃走。倉庫に閉じこもる。
 倉庫に閉じこもった弁護士の身柄を、ウィット・ピンチョンの活躍によって確保。過激派組織を追い詰めに行く……、と思いきや、弁護士はもう一人の過激派組織メンバー(新署長)によって射殺。新署長も逃走するが、事故死。
 小説はそこで終わり。
 こちらは、「ウィット・ピンチョンは優秀な捜査官を伝えられているのだから大活躍してくれるのだろう」と期待しているのに、その期待がことごとく破られる。市内が爆破されるなど、派手な展開があるのに、結局小さくまとまってジ・エンド。
 ウィット・ピンチョンが本当に優秀なら、上述したように捜査をさっさと進展させ、より大きな――国家的な――犯罪者に挑んでいた筈。しかし、無能な為、ローカルの凶悪ながらもみみっちい犯罪者の死を見届けるだけでおしまい。
 また、今回の事件では、ウィット・ピンチョンは何もしていない。押し入り強盗犯らの身元が判明したのも、押し入り強盗犯らの居所を掴んだのも、「ある男」を突き止めたのも、「ある男」を追い詰めたのも、「ある男」の上に立つ黒幕(新署長)の身元を掴んだのも、ウィット・ピンチョン以外の他人なのである。
 むしろウィット・ピンチョンがいなかったら、捜査はよりスムーズに進んだのに、と思われる部分が多い。
 ウィット・ピンチョンは事件捜査の中心にはいるのだが、解決には何も貢献していない。単なる傍観者。いや、傍観者ならまだいいが、本人は「俺は事件を捜査してるんだ!」と考えているから、始末が悪い。
 そうであっても、ウィット・ピンチョンという人物が魅力的であったら許せただろう。しかし、このウィット・ピンチョン、とにかく自分勝手で、頑固で、非協力的で、協調性もなく、周囲の人を苛立たせる。こいつ、誰ともやっていけないのか、と思ってしまうほど。最終的には読者まで苛立たせる。
 なぜここまで魅力に欠ける人物を主人公にしてしまったのか、理解し難い。

 主人公以外の登場人物も、魅力に欠ける。
 主人公の友人はどれも「いい人」、主人公と敵対する者はどれも「悪い人」ということになっている。過激派組織の一員だったことが発覚する新署長も、主人公と初めから対立していた。
 主人公に最も嫌われていた人物が犯人なのだから、意外性も何もない。

 本作で登場する過激派組織も、リアリティに欠ける。
 活動の為に火器を必要とするのは理解できるが、調達の為に押し入り強盗を使って一般市民の家から盗み出す、という危険な手法になぜ頼るのか、理解し難い。組織は「押し入り強盗の実行犯なんてトカゲの尻尾切にできるから大丈夫」と高をくくっているのか。
 銃は、メーカーによって規格が異なる。同じメーカーでも、使用する銃弾が異なる。ただただ闇雲に集めても、膨大な銃器コレクションが出来上がるだけで、実戦で利用できるインベントリは出来上がらない。
 この過激派組織は白人至上主義の集まりで、様々な政府機関に深く潜入している、ということになっているが、その割には緻密さや賢さを感じさせない。
 こんな組織を壊滅するのに連邦捜査局が手こずっている、とは信じ難い。

 捜査を未成年者保護法によって阻まれる、といった場面は、ユーモラスに描けばそれなりに読み応えがある展開になっていたと思われるのに、本作は全体的にシリアスな物語。ストーリーの展開速度を故意に落とす為の細工、としか思えない。
 300ページを超える小説にしては、中身がないのである。



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Last updated  2007.07.21 22:38:03
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