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2015.07.15
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カテゴリ: 邦書

 C★NOVELS大賞特別賞受賞作。
 異端書として礼拝堂に封印されていた手稿、という形で、「名も無き姫」の冒険を描く。


粗筋

 遥か彼方の遠い昔。
 ファルゴという小国の姫である「わたし」は、近隣の小国アイルトンの王子パジルファルと結婚する事に。
 が、結婚式の真っ只中、式場に雷が落ち、「わたし」は気を失う。
 目を覚ますと、パジルファルは死んだと伝えられる。納得がいかない「わたし」は、パジルファルの遺体がある棺の中を確認する。空だった。この事について、父親である王に問いただす。パジルファルは「わたし」と二人きりでいた所、落雷があって、姿が消え失せていたという。「王子が魔術で消えたらしい」となっては内外で宗教を絡めた大問題に発展するので、単に「死んだ」という事にしたのだという。
 納得がいかない「わたし」は、真相を知りたいが故に、幼馴染の見習い坊主イーサンを伴って、旅を始める。
 まず母方の祖父を訪ねる。祖父から、北の大国マドックにいるとされる魔法使いセラフなら何か知っているのでは、と教えられる。「わたし」とイーサンはマドックへと向かい、そこの王子マンフレートと出会う。
 三人は、魔法使いセラフと接触。
 セラフは、パジルファルについての真相は知っていると言いつつも、直接教える事は出来ない、という。真相は、ファルゴ・アイルトン・マドック等の小国を束ねる大帝国に伝わる御伽噺の中にある、とだけ伝える。また、マンフレートに対しては、王位継承の試練として、「わたし」の供をして目的を探すよう伝える。
 こうして、三人一緒で旅を続ける事に。
 御伽噺に関する書物を調べている内に、帝国そのものの歴史を辿る事になる。
 帝国を統括していた筈の皇帝は、現在は異民族の地へと亡命していた。配下の諸侯の反乱から逃亡した、という。
「わたし」は、この皇帝が何らかの理由でパジルファルをさらったのでは、と判断し、イーサンとマンフレートと共に異民族の地へと向かう。
 いくつかの試練を経て、「わたし」は皇帝の居城へ辿り着き、皇帝と接触。
 亡命した皇帝は、十数年前、「わたし」の母親との結婚を切望していた。そうすれば帝国の崩壊を食い止められる、と信じていたのである。が、「わたし」の母親は、皇帝ではなく、配下の小国ファルゴの王を選んだ。その結果、皇帝は諸侯の反乱を抑え切れず、亡命を余儀無くされる。
 が、皇帝は諦めた訳ではなかった。亡命中の十数年間で魔力を蓄え、「わたし」の母親をさらう事に。しかし、「わたし」の母親は、既に亡くなっていた。そこで、その血を継ぐ「わたし」を結婚式でさらおうとしたのだが、手違いで同じ場所にいたパジルファルをさらってしまったのである。
「わたし」は、復活を目論む皇帝と、皇帝の実子でありながら皇帝を恨む子息との戦いに巻き込まれるが、それを乗り越え、パジルファルを取り返し、イーサンとマンフレートと共に帰還する。
 後年、教皇にまで上り詰めたイーサンに、「わたし」からの手稿が届く。既に故人となっていた「わたし」の手稿では、今回の冒険により、神の存在を疑う行為を行っていた事が明らかにされる。
 イーサンは、「わたし」の遺書でもある手稿を、「異端書」とし、聖者でもある教皇の権限で封印する。


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解説

 RPGのノベライズを読まされた気分。
 RPGは、プレーヤーがある程度物語の成り行きを変えられる。が、本作は小説なので、著者が示す通りにしか物語は進まない。展開に納得がいかなくても、その通りに進むしかないのである。

 本作の大部分は、主人公である「わたし」の一人称で描かれている。
 そんな訳で、魔法や魔術が当たり前の世界にも拘わらずやけに「現実的」な思考を持つ「わたし」の主観や世界観が随所に盛り込まれている。物語は淡々としていて、しかも進行のペースが非常に遅い。
 ストーリーも、様々な人物と会っては真相について問いただすものの、「私の口からは教えられない。でもヒントは与えよう。後は自分で考えろ」といった禅問答ではぐらされ、たらい回しにされるだけの展開がひたすら続く。核心に迫っていかない。
 その割にはラストに差し掛かると「真相」がバタバタと明らかにされ、エピローグへとなだれ込む。
 婿の魔術めいた失踪の真相は早期に明らかにされるが、実はより大きな陰謀のほんの入り口に過ぎず、真相がまた新たな謎を生み、「わたし」一行は冒険を続ける……、というスピーディーな展開を期待していたこちらとしては、中ダレ感が否めなかった。

 結局、婿の魔術めいた失踪が最後まで最大の謎で、読み手は主人公が同じ質問を何度も問いただし、禅問答で返されるのを見守るだけ(しまいには「わたし」までもが禅問答を繰り広げる)。
 賢者か魔法使いか何か分からないが、「わたし」と接触する数々の登場人物の内誰か一人が「実はこうでした」と単純に教えてやればよかったのに、と思う。
 最後の最後で、婿の魔術めいた失踪の真相が明らかにされ、「わたし」が冒険中に接触した登場人物の多数が陰謀に関わっている事が明らかにされる(だからこそ尚更「わたし」に真相をさっさと教えてやればよかったのに、と思ってしまう)。
 が、その時点では、読み手のこちらは最早興味を失っていて(さっさと読み終えたいだけになる)、「あ、そうでしたか」くらいの感想しか思い浮かばなかった。

 一人称なので、主人公である「わたし」についてはくどい程描かれているが、それ以外の登場人物の描写は薄い。
 無駄な登場人物も多く、名前(片仮名ばかり)を追うだけでも一苦労になり、中ダレ感を後押しする。
 ヒーロー役である筈のマンフレートも、結局何の為に登場していたのかが分からない。彼がいなくても物語は充分成立していただろう。

 物語のメインとなる『「わたし」の手稿』そのものが、教皇となったイーサンによる『覚書』の形態をとったエピローグで、一つのトリックになっているのが何となく明らかにされる。
 が、そのトリックを楽しむ為だけに長々として抑揚の無い手稿を読む事を強要されても、と思ってしまう。

 調理のしようによっては物凄い物語になっていたと思われるのに、様々な事情(著者の力量、賞を開催した出版社の事情)により、本書を手に取った段階で抱く期待より遥かに小さくまとまってしまった小説。
 それでも中ダレするのだから驚き。







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Last updated  2015.07.16 00:12:48
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