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2015.07.27
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カテゴリ: 邦書

 イラストレーター、絵本作家、俳優、作詞作曲家等、多方面で活躍している著者の半生を、母親と父親と本人の関係を軸に描いている。


粗筋

 ボクは、福岡県の寂れつつある町で誕生。
 物心付いた頃には、母親(オカン)と父親(オトン)は別居しており、ボクは母親の元で暮らしていた。別居しているといっても、オカンとオトンは非定期に会っていて、ボクとオトンの間にも繋がりはあった。
 暮らしは楽でなく、オカンとボクは親戚らの間で住まいを転々とする事を強いられるが、そんな生活が当たり前だと思っていたボクは、特に不自由を感じる事無く育った。
 高校を卒業したボクは、東京の美術大学に入学。堕落した生活を送りながらも何とが大学を卒業すると、仕事を見付け、東京で暮らし続ける。
 福岡に残っていたオカンは、癌を患う。ボクはオカンを東京に呼び寄せ、同居生活を開始。手術と治療により、癌を克服出来た。
 オトンも度々東京にやって来ては、オカンとボクと適当に絡んではまた福岡に帰る、という関係が続く。
 ボクは徐々に仕事で成功を収めるようになっていくが、オカンを楽させるまでには至らない。
 そんな中、オカンはまた癌を患う。転移や再発ではなく、新たな癌だった。治療は不可能な癌という事で、オカンの体調は悪化していく。
 ボクは奇跡が起こる事を願うが、適わず、オカンは亡くなる。
 オカンは、生前得意な料理をボクの友人や関係者に振舞っていた事もあり、葬式にはボクが想像していた以上の人数が参列。オトンは、ボクの前で初めて涙を見せた。


楽天ブックス(large)

解説

 母親や父親の記憶を詳細に綴った記録。
 個人の日記を整理し、他人が何とか読める様に直した感じ。
 著者本人も、母親や父親も作中で老いていくので、当然ながら死を迎える、という場面が描かれる。
 悲しいといえば悲しいが、誰の記憶も、結局はこういう結末に至るだろう。

 著者が生まれたのは1960年代。
 この時代、母親が一人で息子を抱えて育てるのは大変だったと思われる。
 ただ、それ以前の戦時の動乱期、終戦直後の混乱期、そして激動の経済成長期の時代を生きざるを得なかった母親らからすれば、まだまだ楽な方だっただろう。
 21世紀の現在でも、戦乱で祖国を追われ、子供を抱えながら命辛々逃れる母親だっている。
 その意味では、「普通の母親」を描いているだけ。
 著者からすれば、書かずにはいられない、唯一無二の存在であるのは痛い程理解出来る。が、読む方からすれば、「自分の母親も大体似た様なもんだよ」という事になってしまう。

 本書は、500ページの前半を、著者が母親の元で育ち、地元を離れて東京で暮らすようになる経緯を、母親とのエピソードを交えて描いている。
 散発的な、オチの無いエピソードが殆ど。
 子供時代の記録は、古きよき昭和を描いていて興味深い。雰囲気からして終戦直後かと思わせるが、実際には1970年代初期頃の出来事なので、同じ日本でも首都圏と九州では経済成長にかなりの差があった事を窺わせる。
 が、著者が中学生になると、学校でのエピソードがメインになり、退屈になっていく。
 著者からすればおもしろおかしな体験なんだろうけど。
 著者本人も、作中で度々登場するオトンも、まともそうな人物でないのも、読む側のテンションを下げる。中途半端なワルの中途半端な武勇伝が続くだけ。
 癌を患った母親を東京に呼び寄せて同居する後半辺りから、漸く再始動する感じ。
 ただ、母親との係わり合いを描く事に焦点を当てているので、著者本人の私生活についてはあまり触れられていない。そんな事もあり、大学を何とか卒業しながらも仕事に有りつけず、その日をどうにか食いつないでいる生活をしていた筈の著者が、いつの間にか様々な仕事を手掛けていて(仕事の内容は明らかにされない)、芸能界との繋がりも出来ていて、自身の事務所を構えるまでに成長している展開は唐突に感じた。
 仕事の内容や、その苦労等も一緒に描いていれば、著者の人物像にも納得がいく(九州の田舎から大都会にやって来た若者が、仕事でもまれていく内に自己中心的な人物になっていく)。が、そうした要素が全て排除されているので、単に嫌味な男のマザコン日記になってしまっている。

 ごく普通の人生を描いただけの記録が本として出版され、それが「感動作」として取り扱われる日本は、とにかく平和である。


東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

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価格:810円(税込、送料別)






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Last updated  2015.07.28 00:04:03
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