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2015.11.30
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カテゴリ: 邦書
紀の川殺人事件 長編旅情推理





粗筋

旅行作家の茶屋次郎は、諸越真奈美という女性から手紙を受け取る。彼女は、以前は茶屋が編集者と打ち合わせするのに利用していた東京のホテルで勤務していたが、現在は故郷である和歌山のホテルで勤めているという。是非和歌山を訪れてほしい、で結ばれていた。
 この手紙を読んだ茶屋は、次の記事の取材で和歌山に行く事を決める。
 真奈美とも会う約束をした。
 茶屋は、和歌山のホテルにチェックイン。真奈美と会おうとするが、会えない。何者かによって客を案内中に殺害されていた。犯人らしき男が客を装って殺害したらしい。
 茶屋は、まるで真奈美が自分と会うのを誰かが阻止したかったかの様なタイミングで殺害されたのを疑問に思い、独自で捜査を開始。地元警察は、東京からやって来た旅行作家の行動を疎ましく思う様になる。
 真奈美が東京から故郷に戻った背景を、茶屋は知る。銀行員で、真奈美の父親である諸越佳孝は、ある事件に巻き込まれていたのである。
 その事件とは、会社の同僚で、愛人関係にあったとされる矢内千雪と一緒にデパートを訪れた所、千雪が試着室で自殺した、というものだった。
 諸越佳孝は千雪とは愛人関係には無かったと主張するが、世間体を考えて勤務先の紀南銀行は責任を取らす形で退職させていた。
 諸越佳孝という人物は、「愛人」の自殺と、実の娘の殺害という、2人の女性の死に直面した事になる。
 偶然にしては出来過ぎ、と考えた茶屋は、更に捜査を続ける。
 すると、退職させられていた筈の諸越佳孝は、紀南銀行の関連会社で、かなりの好待遇で再就職している事実を掴む。
 ますます不審に思った茶屋は、紀南銀行を調べる。
 紀南銀行が、防衛庁関係者の接待に携わっていた事を知る。接待で起用されていたコンパニオンの一人である寺森京子が、現在行方不明になっていた。
 茶屋は、寺森京子がカギだと感じ、行方を追う。
 京子の唯一の肉親である弟の徹郎を訪ねようとするが、彼も行方不明だった。
 茶屋は、徹郎を追う。真奈美を殺害した人物の容貌が徹郎と似ている、感じたからだ。
 偽名を使って雲隠れしていた徹郎を発見した茶屋は、真奈美と千雪を殺したのは貴方だと指摘。更に、背景には紀南銀行と防衛庁との癒着が絡んでいる、とも指摘した。
 徹郎は、茶屋が読んで来た警察によって逮捕される。



解説

 二番煎じか三番煎じの2時間サスペンスドラマのノベライズ、といった感じの小説。
 とにかく低予算で映像化出来そうな内容になっている。

 本作はシリーズ作らしい。
 そんな事もあり、お馴染みらしいキャラ達がお馴染みらしいやり取りを繰り広げた後、漸く核心部分である事件に入るのだが、このシリーズに馴染みが無い読者からすれば、魅力に乏しいキャラらが魅力に乏しいやり取りをするのを延々と読まされる羽目になるので、出だしからつまらない。
 小説を本当に面白くさせたいなら、出だしで主人公が事件のど真ん中にいる様子を描いて読者の興味を引き、次の章でその場面までの経緯を遡って描け、と言われるが(要するに、小説が時系列に展開する必要は無い)、本作はその法則を完全に無視している。アマチュアがやりがちな小説作法なのである(時系列にしない、というのもやり方を間違えるとアマチュアっぽくなってしまうが)。

 主人公である茶屋は、著者は優秀な人物だとして描き、他の登場人物も彼を物凄く優秀な人物だと思い込んでいる様だが、読んでいる側からすると、その優秀さが伝わって来ない。
 旅行作家という肩書を盾に、事件の関係者を巡り歩いて質問するだけ。作中では誰もが知っている著名な作家、という設定になっている様だが、旅行作家如きでそこまで一般に知れ渡るのか、そこまで横暴な態度に出られるのか、と思ってしまう。

 ストーリー展開も、茶屋が事件関係者を一人、また一人と訪ねていく内に事件のカギを握る人物に行き着き、その人物がそのまま犯人だった、というもの。奇怪な謎やトリックは一切無く、無論茶屋が不可能トリックを大胆に暴いてみせる場面も無い。
 この程度の真相にすら辿り着けない本作の警察は、ただただ無能としか言い様がない。
 本作が発表された当時は防犯カメラがまだ一般的では無かったが、現在だったら殺人現場となったホテルやデパートの防犯カメラに映像が確実に残る。映像から徹郎は直ちに特定され、指名手配され、逮捕されていただろう。その程度の事件なのである。
 殺人事件は大した事ないのに、その発端となる陰謀だけはとにかくでかい。本来はそちらがメインの事件となるべきなのに、著者の力量不足なのか、著者が重要ではないと勝手に判断したからか、殺人事件が解決した時点で小説は終了、となってしまう。陰謀の方は尻切れトンボで終わっている。
 そもそも、何故今回の件が殺人事件に発展したのかが不明。
 犯人の徹郎は、コンパニオンを務めていた姉が、防衛庁絡みの接待で機密情報を知る事となり、命を狙われる様になった事に腹を立て、接待の仲介役を担った紀南銀行の担当者である諸越佳孝を恨む。恨みを晴らす為、諸越の同僚と娘を殺す。が、何故恨みの矛先がこの二人に向いたのかが全く説明されていない。常識的に考えれば、諸越本人を狙えば済む事。
 諸越佳孝も、単に勤務先が防衛庁との関わりが深く、接待の担当を任されただけに過ぎない。彼自身が京子の命を狙った訳ではなく、指示した訳でもない。
 犯行の動機に何の合理性も見受けられないのである。

 本作は、旅行作家を主人公としているので、舞台となる和歌山の観光情報を写真入りで掲載している。
 が、事件そのものには全く関係していない。
 舞台が和歌山でなくでも充分成り立つ。
 観光情報も、パンフレットかネットで調べた情報をそのまま載せているだけ。著者が一帯を実際に巡った、という印象は受けない。

 登場人物に魅力は無く、ストーリーにこれといった特徴は無く、推理小説を名乗りながらトリックと呼べるトリックも無く、観光情報も大した事無い。
 誰に対し、どういう目的で書かれたのかがさっぱり分からない小説。


紀の川殺人事件 長編旅情推理

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Last updated  2015.12.02 07:01:04
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