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2016.07.05
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カテゴリ: 邦書

 自身の登山の経験を活かして小説を発表する梓林太郎の長編ミステリー。
 当然ながら、登山がストーリーに深く関わっている。


粗筋

旅情報誌の記者小池南海子が、取材旅行に出掛けた後、消息を絶った。
 出版社の話では、編集部に女性のシルエットが写った写真と、この女性は何者か調べてもらいたい、といった匿名の手紙が送り付けられて来た。消印では、諏訪市から送られた、となっていた。
 手紙の内容そのものが記事になるかは疑問だったが、諏訪湖周辺を取材する口実にはなる、という事で南海子は取材旅行へと発った。
 初日は、問題の写真は当初思われていた諏訪湖で撮られたものではないらしい、といった報告があったが、それ以降は連絡が無い。
 出版社は心配になって、南海子の自宅に問い合わせるに至った。
 家族にも連絡が入っていないのを知り、警察に通報する運びとなったのだった。
 兄の克人は、旅発つ際に妹に不審な部分は見受けられなかったし、仕事を放棄して行方をくらます理由も思い付かなかったので、事件だと確信する。が、警察からすればこの程度の事態は日常茶飯事なので、訴えても家出人として受理するだけだった。
 克人は、南海子の同僚の鎌田と共に、南海子を探す事に。
 南海子が取材に訪れたと思われる場所を訪ねると、確かに南海子が訪れた、という情報が得られた。が、南海子が言っていたのと同じ様に、問題の写真の撮影場所が分からない。
 手紙の封筒に書かれていた住所も、現在は市町村合併に伴い使われていない地名だった。
 克人と鎌田は、近くの別の湖を訪れると、漸く写真に写っていた女性を発見。宮島沙絵という名の女性だった。話を聞くと、この湖をよく訪れているという。しかし、写真に撮られていた事は知らず、その写真が出版社に送られていた事も知らなかった。
 ここで、捜査の糸が途切れる。
 手紙を送り付けた者は、南海子を何らかの理由で誘き出して拉致した、というのは分かったが、誰が、どういった理由でそんな行動に出たのかは分からなかった。
 警察も、相変わらず単なる失踪事件としか見なさず、本腰を入れて捜査しようとしない。
 克人は、あらゆる手段を使って妹の行方を捜すが、決定的な情報は得られなかった。
 数週間後、能登で女性の遺体が発見された、という情報が入る。克人が確認しに行くと、南海子だった。何者かによって殺害されたのは明白だった。
 南海子の葬式が営まれ、友人知人が多数集まる。その中に、克人の登山仲間の細野と三上もいた。細野は南海子に好意を寄せていた事もあり、落ち込んでいた。
 細野は、その後登山中に消息を絶つ。数日後、遺体となって発見された、当初は滑落による事故死と思われたが、登山用具で殺されていたのが判明。
 それから間もなく、三上も登山中に行方不明になり、その後遺体となって発見される。彼も、何者かに殺害されていた。
 一連の殺人事件が互いに無関係とは思えず、克人は一体誰が妹と友人二人を殺したのか、と思う。
 そしてついに、克人も何者かに狙われるように。
 要するに、何者かが南海子、細野、三上、そして克人に恨みを抱き、殺害に及んでいるらしい。
 克人は、自分らに殺される程恨まれる様な事をした覚えは無かった。あるとしたら、共通の趣味である登山関連の事である。
 そもそも、細野も三上も登山中に殺害されているので、犯人が登山経験者なのは疑いようが無い。
 その時点で、克人はある事件を思い出す。
 少し前、克人、細野、そして三上の三人は雪山を登山した。雪に阻まれ、予定が狂ったものの、三人は救助を要請する事無く自力で下山した。
 それとほぼ同時期に、別の登山グループが同じ様に雪に阻まれ、救助隊へSOSを発信し、救助されていた。
 話によると、この登山グループは大した雪でもないのにSOSを出してしまい、救助されていた。
 この事に克人らは憤りを感じた。何故なら、救助を要請したのが自分らだと勘違いされてしまったからだ。南海子は、易々と救助を求めたがる者は登山すべきでない、SOSを要請したのは何か別の理由があったのではないか、といった趣旨の記事を雑誌に載せた。
 この記事が怒りを買ったのでは、と克人は考える。
 克人は、SOSを出した登山者の身元を特定。奥村という人物だった。
 奥村は結婚していたが、順子という愛人がいて、現在はその女と夫婦同然の生活をしていた。が、つい最近、会社を辞めていた。順子も、数ヶ月前から姿を現さなくなっていた。
 奥村の周辺を聞き込み調査したところ、彼にはまた別の愛人が出来たとの事だった。
 順子の行方は、彼女の親すら知らなかった。
 怪しいと感じた克人は、警察に通報。
 警察は、奥村から事情聴取し、事件の全貌が漸く明らかに。
 奥村は、結婚している身で、順子という愛人がいながら、また別の女と付き合うようになっていた。
 順子は、奥村と正式に夫婦になれない事に苛立ちを感じ、奥村をなじる。
 口論になり、奥村は順子を殺してしまった。
 奥村は、登山仲間と登山に出掛ける直前だった。土壇場でキャンセルしたら怪しまれると思い、順子の遺体を自宅に残したまま、登山に向かった。いざ山に登ると、今度は自宅に残した遺体が心配に。急いで帰りたい、との思いから、SOSで救助を要請してしまった。
 SOSで「救助」されて自宅に戻ると、遺体はそのまま残っていた。取り越し苦労だった。
 奥村は、遺体を山で処分する事に。
 遺体を車に乗せて山道を進んでいると、女性がヒッチハイクしていた。奥村はどうしてもその女を無視出来ず、乗せてしまう。その女性は、雑誌記者の南海子だった。
 南海子を乗せた結果、その時は遺体を処分出来なくなった。
 南海子が登山関連の記事も書いている記者だと聞いて、彼女の記事が載っている雑誌を入手。すると、登山でSOSを発して救助されたグループを批判する内容の記事が載っていた。記事は、SOSを要請したのは何か別の理由があったのではないか、で結んであった。また、克人、細野、三上も、同様の内容の投稿をしていた。
 記事を読んだ奥村は、南海子があの時ヒッチハイクしていて、彼の車に乗ったのは、「別の理由」を探る為に、彼の周辺を嗅ぎ回っているからではないか、と早合点。
 口封じの為に、4人を殺さなければ、と思うように。
 奥村は順子の遺体を処分した後、南海子を誘き出す方法を考える。偶々撮った写真を出版社に送り付け、誘き出す事にした。
 南海子は思惑通り誘き出され、奥村は彼女を拉致。話を聞いてみると、あの時彼女がその場をヒッチハイクし、奥村の車に乗ったのは単なる偶然で、記事の「別の理由がある」といった文句も、確信があった書いたのではないのが分かった。が、今更解放する訳にもいかず、殺害。
 他の3人も、やはり何か知っているのでは、という考えも捨て切れず、SOSでの救助要請について小馬鹿にされたもの許せなかったので、殺す事に。
 その結果、細野と三上は殺せた。が、克人は何度か試みたものの失敗し、逆に追われ、逮捕されるに至った。



解説

日本のミステリーで発表される例に漏れず、低予算でテレビドラマ化出来そうな内容。
 奇想天外なトリックも、ラストでのどんでん返しも無く、ごく普通の事件を坦々と追うだけの展開になっている。

 本作は、事前に裏表紙の粗筋を読んでいるか、いないかで、大きく評価が変わる。
 裏表紙を読んでいない場合、何の事前知識も無く物語が進んでいくので、「主人公の妹は無事なのか? ・・・・・・無事じゃなかったか。残念。じゃ、犯人は誰だろう?」という風に読める。
 が、裏表紙を読んでいる場合(大抵の読者はそうするだろう)、主人公の妹が他殺死体となって発見される事も、主人公の登山仲間が次々死んでいくのは既に分かってしまっている(そういう内容の粗筋)。したがって、失踪した妹が死体となって発見されるまでの経緯や、登山仲間が次々と殺されるまでを延々と引っ張られても、間延び感しか抱かない。
 漸く妹の他殺死体が発見され、登山仲間が殺される頃には、物語の大半が終わっていて、後は主人公が別の登山グループを疑い、犯人に行き着くほんの僅かな展開しか残っていない。
 著者が裏表紙の粗筋を書いたのではないと思われるが、何故物語の殆どをばらしてしまう内容にしてしまったのかが分からない。「妹が取材旅行中に突然失踪し、兄が行方を捜している内に、過去の事件との関係が明らかになっていく」・・・・・・くらいの粗筋に出来なかったのかね。
 あまりにもスローペースな展開なので、粗筋を担当した編集者(だろう)は、ネタバレしない粗筋を書けなかったのか。

 よく分からないのが、奥村が愛人を殺害した後登山に行き、SOSで救助要請を出して急いで帰宅し、死体を捨てに行くまでの期間。
 死体が腐敗する事を考えると、そう長い期間とは思えない。数日、長くて1週間だろう。
 が、奥村が死体を捨てに山に向かうと、そこで奥村がSOSで救助要請を出して下山した事を非難する記事を書いていた南海子がいた、という展開になっている。
 登山中に起こった事件が、そんな短期間の内に記事になり、奥村本人が「これは俺の事を書いている! 俺の事を疑っている!」として読む事が出来るのか。

 犯人の奥村も、行動に一貫性が無い。
 結婚している身にも拘わらず愛人を作り捲くり、その内一人を行きばったりで殺してしまうのだから、かなりいい加減な性格。殺した直後に登山に参加しながら、山中では自宅に残した死体が心配になって、嘘のSOSで救助を要請し、なるべく早い下山を試みる無計画振り。その場しのぎで人生を歩んでいる様である。
 ・・・・・・と思いきや、南海子、細野、三上の殺害では、顔見知りでない3人の身元を探し当てて徹底的に調べ上げ、住所や行動を把握する等、やけに周到に計画して実行に移している。
 やけに周到に計画して実行に移した犯行の動機は、本人の勘違い。必要の無い犯行に手を染め、自滅している。
 賢いのか、鈍いのか、さっぱり分からない。

 警察がひたすら無能なのも気になる。
 2件の殺人は登山中に起こっている遺留物が色々残っているし、そもそも重装備が必要となるレベルの登山となれば容疑者も限られてくるので、直ぐ特定出来るのではないかと思いきや、克人が奥村を突き止め、通報するまで、誰が犯人なのか検討も付いていなかったらしい。
 事件捜査をした経験が無い素人探偵がどうにか行き当たった真相を、何故警察が全く掴めなかったのか。

 複線の意味も分からない。
 写真に写っていた宮島沙絵を探し当て、彼女が湖に毎日の様に立っていた理由を追及する場面にかなりのページが割かれているものの、殺人事件には全く関係が無い(この部分が本書の展開のペースを落としている)。
 彼女は浮気をしていて、その浮気相手が登山中に失踪した為、その山を見つめていた、浮気相手は実際には死んでおらず、別の場所で偽名で働いていた・・・・・・、といった事実が明らかになるが、読者からすれば「だから何? 殺人事件の方はどうなってるの?」といった感じ。

 著者が登山経験が豊富な事もあり、本書にはその知識が至る箇所に散りばめられているが、それが面白い小説を成立させているのかというと、そうでもない気がする。







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Last updated  2016.10.21 17:49:03
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