NEW桃太郎 第四話

ももたろう
第四話 羽柴サル吉登場の巻



 ときの将軍、信長公の家臣に忍者の頭領、羽柴サル吉はいた。

 信長公はよく気が付くし、機転も利くということで彼をえらく気に入っていた。

 そんな信長公の天下統一がひと段落ついたある日のことだった。サル吉は信長公の呼び出しをうけ、城を訪れた。

「サル吉、そちに頼みがある」

「なんなりとお言い付けください」

「じつは、わしの天下統一もひと段落ついたところで、どうしてもやっておかねばならぬことがあるのだ」

 信長の表情には久々に戦のときのような真剣さが溢れていた。それを見てサル吉にも事の重大さがわかった。

「そちに、鬼ケ島へ行って欲しいのだ」

「鬼ケ島・・・まさか・・・」

「そうじゃ、そちに鬼どもの制圧を命ずる」

「はっ、はい。かしこまりました」

 サル吉にしてみれば思ってもみない重大な任務だった。家臣といっても、これほどの重大な任務を一人で任されるものなどそうはいなかったのだ。

「そこで、作戦としてはな、少々卑怯ではあるのだが・・・まあ、奴らに比べれば卑怯も汚いもないのだが・・・奴らの不意をつこうと思う」

「先手必勝というわけですか」

「うむ、あまりもの大群を率いてもハイリスク、ローリターンで効率は悪そうなんでな、ごく小編成で攻めたい。そこで、そちのもつ日光猿軍団から少数の精鋭達を募り鬼ケ島へ渡って欲しいのだ。もちろん、人数、人選など細かなことはそちに任せるがのう」

 話を聞くうちにサル吉のほうもがぜんやる気になり、信長へのあいさつも早々にサル吉は城を後にした。

 まずは人選だ。サル吉が頭領をつとめている日光猿軍団には二十の軍団があった。そこで、実力と信頼度から各軍団を仕切っている司令官クラスの者から十五人をよりすぐり、連れていくことにした。さらに、島のことに詳しい者を募ったところ、、犬山ポチという者が現れたので、その者と、犬山の紹介で、参謀として、キジ村キジ次という者も加わることとなった。

 こうして、サル吉とその一行は信長公の命により、鬼ケ島制圧の為に城下町を後にした。

 ところで、鬼ケ島へ渡るには船が必要だった。しかし、なにぶん隠密裏な任務なので船がない。そこで、船を手配する間、サル吉たちは港町の茶屋で一休みすることとなった。

 サル吉は店先に「日本一のきびだんご」と書かれていたのでとりあえずきびだんごを注文した。ところが、一向にきびだんごが現れない、

「もし、きびだんごはまだかね?」

「あれ?もうずいぶん前にお持ちしましたけど・・・」

「何だと、私は受け取っておらんぞ」

「ええっ?えーと・・・あっ、あちらのお方です。あちらのお方がお届けするといって持っていかれましたが・・・」

 見るとそこには身の丈2メートルはありそうな若者がうまそうにきびだんごに食らいついていた。

「ふとどきものめ!貴様、何ものだ!」

 その若者を捕らえながら十五人衆の一人、サル五郎が言った。

「俺は桃太郎。剣桃太郎だ。俺なんかを捕らえてどうしようってんだー!」

「貴様、ぬすっとたけだけしいぞ!」

「まあ、待て、エン十朗。桃太郎といったな、貴様なぜ盗んだ?」

 サル吉が部下を制して言った。

「そんなの知るかよ・・・欲しいから盗んだんだよ・・・」

「ハッハッハー、欲しいからか・・・なるほど、それは大した理由だ」

「サル吉様?」

「いいんだ、エン蔵。私の子供時代を思い出したんだよ。あの頃は私も蟹の奴をからかったり、悪ガキだったなーと思ってな、いやぁ、これくらいのハングリーさがある奴は何をやらせても面白い結果につながるものなんだよ。そうだ、桃太郎、貴様、私と一緒に鬼ケ島へ行かんか?」

「なんと!」

 この一言にはサル吉以外の誰もが驚いた。

「俺が欲しいものはカネだ。カネがもらえるなら、ギャラ次第で何でもやるよ」

「そうか、ならばもし鬼ケ島から生きて帰って来れたら百万円くれてやろう」

「百万も!やるよ、やる。何でもやる」

「いや、お前は私の付き人だ。たいしてすることなどない。ただ、とても危険なところだ、自分の命くらい自分で守れなければ困る。そうだ、サルナリ、剣を一本渡してやれ」

 桃太郎が剣を受け取るとサル吉は続きを話し始めた。

「いいか、生きて帰れねばギャラはやるわけにはいかん。だから貴様は生きねばならん。それだけは心しておれ」

「そうだ、親孝行もしないで死ぬわけにはいかんからな」

 そう言ったのはサル太夫だった。

「親孝行?そんなの関係ねーよ」

「まあ、そう言うな、今回の場合、生きて帰れるって事だけで十分親孝行だ」

「ははは、そりゃ、違いねぇ」

 こうして、桃太郎を加えた十九人は決戦の地、鬼ケ島ヘと渡ったのであった。



つづく



次回、第五話  決戦、鬼ケ島の巻。 いよいよクライマックス、目が離せないぜ!


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