「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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10月のバラ 【4】
陽はいつの間にか落ちかけようとしており、すでにプールサイドには私一人だった。
部屋へ帰ることにした。今晩の予定を決めかねぬまま----。
部屋へ戻ると妻は、
「どうする?7時の約束だったんだけど、6時の方がいいって」
「何が?」戻るや否やの問い掛けは何のことかわからなかった。
「何がって今晩のことよ。ラクダのおじさんから電話があった」
「電話?何が?」
南国の熱と空想熱に浮かされていた私の頭の回転は少々鈍っていたが、ようやく現
実へ引き戻された。
「だからパーティーよ。ホテルの外で待ってるって。どうする?私はどっちでもい
いけど、あなた決めてよ」
―あなた決めてよって言いながらとっくに決めてるくせに――
「ちょ、ちょっと待って・・・」
ホテルの外から急に時間の変更の連絡・・そして、パブリックスペースを避けるか
のようにホテルの外での待ち合わせ・・・
うーん・・・・・ミステリー&サスペンス映画の前奏のようだ。気分はすっかりワ
イルドでデンジャラスな事件に次々と巻き込まれるヒッチコック映画の主人公だっ
た。
私の胸の内を見透かしていたのか否か分からないが、ホテル内の土産物屋を冷やか
したりしていたので、一方的に約束を取り付けてきた6時までにはもう時間がなか
った。
顔の頬あたりの筋肉が弛緩していく。
胸は締めつけられるようになっていく。
――落ち着け、落ち着け――
毎日世話になってきたバラカのミネラルウォーターを飲む。
そして、彼女に動揺を悟られないよう言い聞かせながら薄暗い室内を見渡す。
ここは、オベロイ・ホテルの1006号室。
ピラミッド・ビューが売り物のこのピラミッドサイドの部屋には3泊。
出国前、このホテルを手配した時は得意げに、
「朝日が窓から溢れてきてまどろみの中、目覚めるやろ。
そして眠気眼で窓に目を見やると、ドーンとピラミッドが迫りくるんで。
いやドドドドドーンかな?すごいだろ」
私はガイドブックで得た知識そのまんまをオベロイのセールスマンかのごとく吹聴
していたのだった。
観光客の誰もが体験する、カイロからギザへ向かう通称ナイトクラブ通りからだん
だん近づいてくる三角点を実感するより、モット非現実的に朝方目覚めると、 ピラ
ミッドが-そこにあった--というような訳知りの演出家気取りで旅程を組んだの
だ。
ギザ初日はアブシンベルからカイロ着が夕刻後の予定だったが、ルクソールで急遽
予定を早められながらも結局ヘリオポリス空港に到着したのが午後10時を廻り、
ホテルに チェック・インしたのは11時近くだった。
翌日は三日前にルクソールの現地で世話になったミスルトラベルのバヨミ君に、
「やっぱり地中海をみなくちゃあね」とアレキサンドリアへのオプションを急遽お
願いしており、早朝5時に出発した。まだピラミッドは拝んでいない。
そして、アレキサンドリアからの帰路、途中で寄ったレストラン「フェルフェラ」
の入口にて茜色から紫色に染められた西空の前にうっすらと浮かび上がる三角のシ
ルエットを垣間見て、しまったと後悔しながらもなるべく見ないようにしてホテル
へ帰った。
そして今日の最終日にいよいよ---------。
―近くに迫りくる―ファラオの遺業を神々しい日の出とともに拝ませていただこう
と、起きしたのに、なんとなんと窓の外は信じられないことに深い霧に包まれてい
た。
愕然としたのは言うまでもない。
後で知ったことだが、温度差の激しい砂漠地帯である ギザ高地は地中海から生温
かい気流と交じりあった時、年に何度も遭遇しない深い霧に包まれるのだそうだ。
めったにお目にかかれないものを見たのはいいけど・・。
-妻に何を言われるかたまったもんじゃない--私は霧が晴れるのと彼女が目を覚
ますのがどちらが早いか気を揉みながら祈るような気持ちだったが、太陽は不吉な
世界の終わりの暗示かのように霧の向こうに黒々としているままだ。
さて、妻が起きて3時間たってしまった。
彼女は起きるのは遅いが腹が減るのは早い。
ようやく霧が晴れてきた。
そして、私たちはついに---------。
部屋の前には庭がありポプラの大木がピラミッドの姿を見事に隠してくれてい
た・・・。
カーテンが引かれた薄暗い部屋のサイドテーブルに目を移すと、二日前までは生あ
る瑞々しさを保っていたウェルカムフルーツは腐りかけていた。
「フウ」と、ため息をつき沈黙を破ったのは私だったが、
「行ってみようよ、おもしろそう」
と、やっぱりというか、お気楽に決断したのはいつものように妻の方だった。
しかたなく、私は不安と不満で充満した風船をしぼめながらジーンズのポケットの
財布から抜き取った10$紙幣2枚と20エジプトポンドを同じく2枚、綺麗にた
たんで、それぞれを左右に分け仕舞い込み、財布は置いて「彼女に付いて」行くこ
とにした。
もしもの時に安全を買う金として忍ばせたにしては少なすぎる気もするが知ってて
飛び込む羊の餌は適当でよいのだ。もちろん、これは安全料ではなく明らかに授業
料として見積もったつもりだ。いよいよ「知りすぎていた男」のジェームズ・スチ
ュアートだ。
ホテルを出てすぐのピラミッドへ向かう大通りを渡ると、その道沿いには観光用の
ラクダ業者たちの事務所が軒を連ねている。事務所といってもバラック小屋だ。
トタンのような屋根に土造りの壁という簡易な家は農村風景のそれと変わらぬ姿だ。
その昔はトルコの王の別荘地で今は豪奢なホテル、そこから一歩外に出るとすぐ
に眼のあたりにするこの国のもう一方の現実であった。
通りは朝とはリズムが異なっていた。
今日の一仕事終えて観光客から開放され、否、開放したという表現のほうが相応し
い、私たちが無理やり世話になったモーセスの同業者たちが、この時とばかりに地
べたに座り込み、空虚な眼で空を見てじっと座り込んでいる。
成さずはこの世の幸、とばかりに。かと思えば、ゆったりとシーシャ(水タバコ)
を咥えて寛いだり、手製の草臥れた木の テーブルでチェスのようなゲームをした
りしている。明日は確かならざれば・・・だ。
今朝と同じように軒を連ねている坂道をピラミッドに向かっているが、あのなめま
わすようなアラブ人独特の視線は届いてこない。
明日できることは今日しないのだ。
テレビのサッカー中継前のムバラクを讃えるミュージカルショー(サッカー中継前
でなければ誰も観そうもない代物だが)にかじりついたり、なんたらかんたらと今
日一日の 出来事、家族や地縁者の噂話やもめ事に花咲かせたりと、いつもの彼ら
の流儀のままの風が吹いている。
--古来よりデルタ地帯は肥沃な土地で農耕に適していた--世界史で習った。
農耕民族にアコギな民がいるわけない。
日中とは別人のように私たちに一瞥投げかけただけで、また元の鞘に戻る。
その方がこの国ではよっぽど刺激的だ。
日中、この国の男たちは、私たちに自由はないぞとばかりにあれこれ世話を焼いた
り、もちろん究極の目的である私たちのポケットマネーがばらまかれるお手伝いに
奔走しているのだから。
メネス王さんから5千年・・エジプトもすっかり変わってしもうた。
髪の毛を焦がすような日中と夕刻を告げるアッザーンがモスクのスピーカーから流
れだす前後とでは彼ら砂漠の民の流儀は明らかに落差があり、彼らの生きる姿の一
脈をかいま見た気がする。ちょっとセンチになった。
そして、彼らのなかにモーセスはいた。
彼の人を上目遣いで見やりながらも、どこか人を小馬鹿にしたような屈折した目の
光は 失せていた。商売道具のラクダ(と馬)を引いていないだけで別人に変身し
ていた。
それは、昼間のとは明らかに違う黒に金色の刺繍をあしらった礼服(彼らの民俗衣
装であるネグリジェのようなガラベーヤ)を着ていたせいで、そう映ったのかもし
れなかった。紳士ぶったところが、ますます不気味でもあったが・・・。
そのかわり相変わらず、最愛の友に久方ぶりに会ったような仰々しい態度で、
「ハアロウー、マイフレンド」抱きつかんばかりの仕種でこちらに詰め寄って来た。
そして、私の視線を感じてか、 聞いてもいやしないのに、
「この服はスペシャルだ」ともったいぶたように何故か妻に向かって言う。
「わーきれいなガラベーヤ」と妻は指さして、合いの手をいれるのだ。
ピラミッドでの様子から推察しても、どうもこの二人はあいくちのようだ。
金をせしめるという肝心なことのみ私に用足すこの男、お喋りの相手はもっぱら妻
だ。
さすがに二人はグルとまで言い切ると、せっかくのミステリー映画も三流の滑稽ド
ラマになってしまうので自制するけども・・・。
一通りの挨拶が終わったのか、モーセスは目元を綻ばせて妻の肩を叩き、ピラミッ
ドの方向へ歩きだした。
今朝の忌ま忌ましいピラミッド場内への入口前の大きなカーブの手前で道を左に
とった。
舗装されていない小道は敷居との区別がわからない。道は右手側にラクダ小屋が点
在するすり鉢状に窪んだところにある広場に沿ってあった。すり鉢の上はピラミッ
ド。
左手側は塀づたいの向こうに違和感のある緑が生い茂っている。
この乾いたギザ台地に自生する緑はごく限られている。おそらくここは、オベロイ
が経営するゴルフコース。 ホテルのパンフを観て、たしか妻は「ゴルフやってみ
る?」やったことないのに・・・。
すっかり陽は暮れ、あっという間に墨色の夜空に衣裳換えした。
旅中、ずっと楽しみにしていた砂漠地帯の乾いた空気に包まれた西の空が金色に変
わる態様は見れずじまいだったのが心残りだった。小屋のどこかのラジオからコー
ランが流れてきた。道なき道を歩いている。
覚悟を決めるようにモーセスの背中を凝視しながら。
ゴルフコースがナズラット・サマーン村の増築に増築を重ねたような家々に変わる
頃、見覚えのある人影がこちらに向かい合って立っていた。
近づくとすぐに分かった。
モーセスの子分だった。相変わらずつまらなそうに視線を斜交いにして立ってい
た。
彼とは結局、最後まで言葉を交わさずじまいだった。よって名前も知らない。
彼やモーセスに対する私の態度が自然と彼を無口にさせたのかもしれない。
ひどい仕打ちをしたような気がして後で少し胸が痛んだが、それは真実ではなかっ
た。
彼の手にはいつものように手綱が引かれていた。
ただし、今度は4本、つまり馬4頭を従えていたのだ。
「やれ、やれ、またこれに乗らんといかんのか・・・」
★戻るくん★
★進むくん★
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