「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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セイシェル旅行記 その3
ドバイでは現時点で考えられうる完璧といってもいい贅沢三昧をふたりで堪能する計画だ。
実際、ドバイでの旅程は事前に丹念に調べあげ、念入りに予定を組んだ。
セイシェルでは美しく静かな環境でゆったりリゾートライフを、ドバイでは俄かセレブリィティを堪能しようと企てていたのだ。
ドバイでの予定は次のとおりである。
まず、午前セイシェル国際空港から復路を行き、正午前にドバイ国際空港に到着。
空港から天を突く勢いの超高層ビル「バージュ・アラブ」をはじめ建設・開発ラッシュに沸く都心部を抜け、砂漠の道を行く。
ドバイ国際空港から車で約45分。
「ジュメイラ・バブ・アル シャムス・デザート・リゾート&スパ(JUMEIRAH BAB AL SHAMS DESERT RESORT & SPA)」へ。
そこは、「ドバイ・インターナショナル・エンデュランス・シティ(競馬場)」に近い、首長一族が経営するジュメイラ・グループの優雅な砂漠リゾートホテルだ。
アラブの伝統的な要塞をかたどった美しいデザイン、客室はアラビアスタイルの神秘的なインテリア、エキゾチックな雰囲気のレストランではアラブの伝統料理や各国料理、イタリアンなどさまざまな味を堪能できる。
ホテル到着後、まったりと、らくだ乗りや鷹狩りといったデザートアクティビティや、砂漠に浮かぶ美しいプールで水遊びやプールサイドでカクテルなどを楽しむ。
夜はドバイのリゾート初となるオープンエアのアラビアンレストラン「アル・ハディーラ(Al hadheerah Desert Restaurant)」」をオンライン予約してある。
そこは、ベドウィン族の砂漠のテント生活をモチーフに、民族音楽の生演奏やベリィダンス、アラブ独特のヘンナ装飾なども体験できるエンターテイメント性の高いレストランだ。
翌朝はアラブの家庭料理「アル・フォッサン」にて朝日を受ける砂漠を眺めながら、オープンテラスで朝食を。
そのとき、これまた日本で予約してあるホテル内にある「サトリ・スパ(SATORI SPA)」でのエステ&リフレクソロジーを我がキューティーハニーにプレントだ。
「サトリ・スパ」は、その名の通り「悟りの境地」を意味しているそうで、直観力や精神力を目覚めさすスパ療法は世界的にも疲労回復や体力増強などの面からも高い評価を受けているそうだ。
「結婚15周年。ささやかだけどプレゼント。これからもよろしくね」
なんて言いつつさりげなく予約カードをテーブルに置き、渡すのだ。
彼女がスパでいない間、私はこの旅で唯一のプライベートタイムだ。
なにしようかな、ウシシシシ・・・・・。
正午、「バブ・アル・シャムス」を出発し、ドバイ都心部へ宿を移す。
今度はクリーク(運河)のほとりに建つ、「グランド ハイアット ドバイ(Grand Hyatt Dubai)」。
ドバイ国際空港からわずか10分の場所に位置するグランド・ハイアットは、15ヘクタールの庭園内に佇むホテルドバイ最大級を誇るクラブホテル。
ホテル内部に足を踏み込むと目を奪われるのは、ロビーエリアの天井に吊るされたドバイ伝統のダウ船。
明るい陽が差し込み、見事までに鮮やか緑の中、滝や小川が流れ、まるで砂漠のオアシスさながら。
そのオアシスを取り囲む様にいくつかのレストランも。
シティーホテルでありながら、リゾートの様なプールエリアとジム内には室内プール、
ホテル内のスパではアユルベーダや世界各地のマッサージも楽しめ、宿泊客を飽きさせないホテルだ。
夜は、クリークでのダウ船クルージングディナーを楽しむ。
これもまた日本でオンライン予約してある。
ドバイの中心をゆったり流れるクリーク(運河)には、たくさんの船が停泊しており、その中でも有名なのが、ダウ船。
ダウ船とは、イスラム圏の伝統的な木造の船で、釘を一切使わず、紐やタール(乾溜液)などによって組み立てられているのが特徴。
ドバイの街は、このダウ船をつかって貿易を行い栄え、たくさんのツアー会社がダウ船ディナークルーズを行っており、値段は、200Dhs(ディラハム)=約6,400円前後から、もっと高くて豪華なものと様々。
ホテルや企業の高層ビルの明かりや、クリーク沿いのレストランやモスクの灯り、行き交うアブラ(水上タクシー)にライトアップした様々なダウ船。
現代と過去が入り混じった神秘的な風景で、心地いい風に当たりながら、ゆったりと食事を楽しみつつ眺めるドバイの夜景は最高のエンターテイメントだ。
次の日は、「グランド・ハイアット」内でまったり過ごしたあと、お昼前に出発。
ドバイ滞在中のメインイベント、世界で最も高層でゴージャスなホテル、「バージュ・アル・アラブ(Bruj Al Alab)」をめざす。
ドバイには建設中のホテルを含め数多くの五つ星ホテルが存在するが、中でもメディア登場頻度が断トツでナンバーワンは、1999年にオープンした202ある客室全てがメゾネットタイプのスイート・ルームという並外れた豪華さを誇る、究極の五つ星デラックスホテルのバージュ・アル・アラブ。
バージュ・アル・アラブは2年間の月日をかけて埋め立てられた人工島の上に優雅に聳え立つ、東京タワーよりも少しだけ低い、ダウ船の帆を模した321メートルのギネスブックに載る世界一高いホテル(もちろん値段も)。
タイガー・ウッズ、マリア・シャラポア、マイケル・ジャクソンなど世界中のセレブリティーが宿泊したことでも有名な七つ星の異名を持つホテルは外観だけでなく、煌びやかなインテリアやアメニティーに至るまで超・超・豪華絢爛。
宿泊まではとても手が届かないが、その敷地に一歩でも入り込んでみたい、そしてあわよくばランチを楽しもうという目論見である。
しかし、易々とはいかない。
ホテルへは、宿泊ゲスト以外はレストランなどの予約客しか立ち入ることが許されない。
入り口では、厳重に予約の有無を確認されるため、もちろん予約会社を通じて事前予約をとってある。
クレジットカードの裏表のコピーにはじまりあらゆる個人情報をホテル側へ送らねばならなかった。
そのやりとりだけで何往復ものメールと日数が必要だった。
ホテルにある数あるレストランのなかで予約したのは、地上200mにある「アル・ムンタハ(Al Muntaha)」。
専用エレベータで27階の天空レストラン「アル・ムンタハ(究極の意味)」へ。
専用の予約番号表とたくさんの注意書き(ドレスコード、撮影禁止や、時間厳守などあれこれ)が書かれた和英語の書類が送られてきた。
予約会社からアドバイスも受けた。
「ディナーのメニューを見ると凍りつくと思いますので、事前予約の際に、Restaurant Informaionの添付を送付してもらうのが良いと思います。最低1人60Dhs(20,000円)ぐらいは見ておいた方が無難です」
それもあるけど、予約手数料だけで2,500円もかかって凍りついたんですけど(笑)。
そして、「モール・オブ・エミレーツ」や「スーク・マディナ・ジュメイラ」を冷やかした後、再びグランド・ハイアットへ舞い戻り。
夜はレバノン料理は世界最高峰と称えられ、そのまた最高峰のレストランと謳われる「アウタール(Awtarl)」へ。
これまた事前予約してある。
そこでアラブ音楽や本格的なベリィダンスを楽しみながら、フェトゥーシュ、タブーラなどのサラダ、定番のひよこ豆のペースト、ホムス、羊の生肉のミンチ、ハムールというアラビア海でとれる魚を焼いたもの、シシカバブなどなどを堪能する腹づもり。
これらすべて修学旅行並みの予定行動。
そして、生まれてはじめてといってもよいくらいの料金度外視、最初で最後の破格のデートプランだ。
実際は、これらすべてを巡ったあと、眠気と疲れがたまるだけ。
私は、水平線にアラビア海を望む地上27階のレストランで「寝てた」そうだ。
「はやく飛行機で眠りたい」
「ショッピングセンターにある椅子に座って寝る度に警備員さんに叱られてたもんね(笑)」
「ドバイの全部がハリボテだったな」
「ほんまじゃね」
ドバイ兵たちの夢の終幕だった。
さらば、砂上の楼閣―――そうとは知らず―――。
―待ってろドバイ――
しかし、実は、待ち疲れてくたびれもうけの私なのであった―――。
今回の旅は、「どう行けばいいのか?」というテーマとともに、絶えまなく汗が滴り落ちるという体感の旅であった。
17時32分、関西空港駅到着。
関西空港で、はやくも汗ダクダクだ。
20時30分。
関西空港国際線ロビー4階。
AからKまでずらりとあるチェックインカウンター。
航空会社や旅行代理店が入っているカウンター名と電光盤の表示とダイレクトメールで自宅に届いた場所が一致せず、あっち行きこっち行きになり汗ダクだ。
結局、指示されていたカウンターに行けばよかったのだが、そこは全然関係ない代理店だった。
「セイシェルでビザをとりますか?」
「え?ビザはいらないはずですけど?」
「う~~ん?そうですか・・・・・」
いや、その間はなに?なに?とても気になるんですけど・・・・・?
結局、この件はうやむやになったまま。
セイシェルが近づいたときに思い返すことになる。
そのときに、また汗ビッショリだ。
21時30分、保安検査場へ。
手荷物検査だ。
腕時計も携帯も財布をケースに入れてバッチシ。
手荷物もバッチシ。
機内持ち込み鞄にはしっかりウィスキーが入っている。
バッチシ。
2001年カメルーン旅行以来、海外渡航がピタリとやまっていた私には困惑しきりなのであったが、2007年3月1日より、「国際線航空機客室内への液体物持込制限」という規制導入があることを知った。
「――100mlを超える、あらゆる液体物の客室内への持ち込みは禁止です。手荷物検査場で破棄していただくことになりますので、あらかじめ航空会社にお預けになる手荷物にお入れ下さい。
ただし、以下の物品の持込は可能です。100ml以下の容器に入った液体物で、容量1リットル以下のジッパーのついた再封可能な透明プラスチック製袋に余裕をもって入れられている場合 ――」
成田国際空港公式ホームページ[http://www.narita-airport.jp/jp/whats_new/070209.html]にもこう書いてある。
これは、2006年8月に発生した英国航空機爆破テロ未遂摘発事件を受けて、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が各締約国向けに液体物客室内持込規制のガイドラインを作成したものに基づいて規制しているらしい。
2001年のカメルーン行きで機内全面禁煙というおぞましい経験から海外を諦めた私である。
あれからもう7年もの間、海外ブランク、旅知らずである。
旅の達人の名折れである。
その間、あちこちブログで「旅人まるくん」を卑下したり、ときには他者を啓蒙しようと意気込んだり、愛を語ったり(笑)、自ら楽しんでいたのだが、それも2年くらい。
続けられたのも4年まで。
あれはただの空蝉であったな。
―――――エアフランス(AF)289便は予定出発時間21時55分、約14時間ノンストップ便だ。
全席、禁煙らしい。
それを聞いただけで、アタシはパブロフの犬のごとく、とたんに脂汗が額を流れはじめ、生唾を何度も飲み込まねばならず、肺に空洞が開いたような感覚で、偏頭痛がしだし、心臓が止まったような気がしてならず、幻想まで見そうな様相で、すっかり足痛までが吹き飛んでしまった。
数年前、キャセイパシフィック航空も全便禁煙であったが、そのときはまだ全席禁煙の走りでアタシはたいして問題とせず、香港までわずか3時間のフライト中がまんできず、トイレで数本スパスパしたものだった。
そのとき、服にまとわりついた匂いからスチュワーデスに察知され、こっぴどく叱られたことを脳裏に浮かぶ。
当時はまだしも、いまや煙草を吸おうものなら出発空港までトンボ帰りをくらい、一生かかってようやく払えるかどうかの賠償金が待っているのだ。
以前、そんなことが実際起こったことがあり、メディアでも大きく報じられていた。
ますます汗がしたたり落ちる。
つらいかな、アタシは煙草を吸い始めてこの方、睡眠以外で10時間以上の禁煙した経験がない!(いばるな)。
健康増進法などまったく関与しないところだったのに、いよいよ公共の場では「生きていけない」時代に突入したようである。
アタシはX検査を終え、出国審査を終え、痛風の足をひきずりながらほうほうの体で向かったのは空港内でも唯一喫煙が可能らしい、カフェであった。
おお、同志たちがわんさといる。
ここで紫煙をくゆらせながら、間近に迫る苦痛をまぎらわしているではないか。
アタシは20分の間にここでたてつづけに13本!吸ったのである。
吸い貯め、ではなく、ニコチン中毒を促進したのである。
「タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない・・・・・・」
タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない、タバコが吸いたい、タバコが吸えない・・・・・・アタシは14時間のうち、2時間の睡眠時以外、ずっと汗をかきつつお念仏のように唱えていた。
「シャルル・ド・ゴール空港まであと10時間、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間55分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間50分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間45分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間40分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間35分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間30分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間25分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間20分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間15分、シャルル・ド・ゴール空港まであと9時間10分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであと
シャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであとシャルル・ド・ゴール空港まであと」
そして死ぬかと思った飛行機からようやくようやくようやくようやく解放され、モダンなシャルル・ド・ゴール空港内悲鳴をあげながら喫煙場所を探すのだが、空港のどこにもない!ようなのである。
アタシは飛行機内で血液の循環が悪く、ますます悪化した靭帯痛の足を引きずりながら、モーゼの十戒の心地でいた。
足が痛いのはこんなわけだ――――。
それはそれは、大変木枯らしの吹く日でした―――。
「せ、先生・・・・・これって・・・もしかして、もしかして・・・・・整形外科じゃなくって、あっちのほうでしょうかぁ~(泣き顔)?」
アタシは仲間に抱えられて、ほうほうの体で診察室にたどりついていた。
来たくなかった病院・・・・・。
ここだけはカンベンして欲しかった病院・・・・・。
「だって、安くなるんだろ?」
おめ~~らそういう問題じゃねぇ~~~。
若い医師の背後に立つ同級生の看護婦が笑いをかみ殺している。
アタシはこいつを殺してやりたい気分だ。
なんでって・・?このオナゴは、アタシの診察券を見るや否や地下にいる妻をいち早く呼びに行ったのである。
そういうわけで、瀕死のアタシの背後で鬼の首をとったかのような顔で魔女は仁王ダチだ。
二日間アタシが立つこともできなかった左足のふくらはぎを押さえながら医師の沈黙。
――も、もったいぶらんと、はやく言うてくれぃ~~。覚悟はもうできております(泣)。せ、せめて、アタシの後の鬼を追い出してくれんかなぁ~~・・・・・(泣)あんた勤務時間中じゃなくって・?・・減給よ!(泣)・・・・・。
「・・・・ああ、痛風ねぇ・・・・・・なにか心当たりあるんですか?」
「さぁ~~・・・・・?あっ、サッカーをやっておりまして、久方ぶりにしたので、痛めたのかな?」
「ああ、サッカーを・・・?」
「先生、一応血液測ってみましょうか?」
間髪いれず、背後から聞きなれた、とても聞き飽きた(笑)声がする。
ほらきた!だから、はやくこの女追い出せというのに!そして、ほぼ同時に医師の背後の女がたまりかねたように噴出し笑いころげた。
う、動けるものならけり散らしてやるところだわ・・お、おまえらなぁ~~(大泣)・・・。
まさか、まさかではあったが一応安堵した。
しかし、この痛さはハンパじゃない。
結局、杖を借りて地下の検査室へ降りた。
妻に血を抜きとられた人、この世で何人いるのかしら・・・・・?
アタマはまっ白だった。
で・・・・・医師曰く、「判定は、限りなく黒に近い灰色ということですね」
アタシは犯罪者か???
石膏で足を固められながら、アタシは気がかりでしょうがないことがあった。
「・・・で、先生・・・再来週から、ちょこっと、旅行の予定なんですが・・」
「え?スキー旅行とか言うんじゃぁないでしょうね・・・?」
「先生冗談きついわ(泣笑)。たんなる旅行ですよぉ~~」検査終えて、またまた付き添ってきた鬼妻を横目で見つつ、祈る気持ちだ。
「移動は歩くこともありますか?」
「あります、あります!・・・・・・・で!?どうなんでしょうか??」
「靭帯ですからね・・・安静にしていて回復するのが2,3週間ですけど・・・どこへ旅行ですか?」
「え~~と・・・外国です・・」
「えっ!????」看護婦まで、揃えて言わんでよろしっ(怒泣)。
「研修かなにかですか?」
「遊びです!!!」あっ・・・またまたアタシの後ろの鬼が口を開きましたか・・・・・あ、あなた、白衣の下の、ずいぶん大きくなったお腹さすりながら言わないでくださいます・・・・・(泣)。
「もうすぐ生まれるんでしょ?」
今度は後ろの鬼め、看護婦、うるさいっ!(怒泣)。
あんたら鬼のやりとりに先生、あきれ顔じゃないかっ(違だろ)。
・・・・で、回復の状況を待つ、というありきたりの診察と湿布と痛み止めを処方する、ということで長い長い一日が始まり、終わろうとしていた。
「・・・で、どちら方面へ行くんですか?」
「・・・・・・エムボマって知ってますか?」
「え?!」
だから、看護婦も口揃えんでよろしっ!!
「どこですか?それ?グアム??」
「カメルーンです・・・・・」
「えっ!!???」今度は先生まで、三人同時に叫ぶなっ!!
「どのくらい?」
あ・・・・・ついにその質問ですか・・・
「・・・・・・2週間くらいだったかなぁ~~(オトボケ笑)」
「えええええっ!!?」
は、ハモルのも上手になりまして(涙
あ・・・・鬼さんには「ちょこっとモニョモニョ」と、告げてましたっけ??
あそこ、経由地だからあながち嘘ではないのよ・・・・・。
医局でクスリをもらうとき、事務局で支払いをするとき、冷ややかな視線があちこちから向けられていた。そして、仲間どうしでささやきながら、クスリと笑うのだ(シャレではありません)。こ、殺しておけばよかった、看護婦め。
サイアクの一日の終わりと始まりだった。
もう、ひとおもいに、楽にさせておくれ、カミサマ――――――。
(2001年カメルーン旅行記「悪魔が微笑み、天使があざ笑う」より)
そこで一念発起、発想転換し、ていうか「なんちゃって禁煙」に成功したというのに。
なんとも世知辛い世の中だこと、トホホ。
汗、じゃなくって今度はホンマに涙がでるわい。
それでも仕事ではあきらめるのが早いが、趣味嗜好では決して諦めず妥協しない男、私である。
事前にちゃんと対策を立てて、自宅に転がっていたウィスキーのミニボトルが100ミリリットル以下の瓶であることを幸いに、これら数本にウィスキーを小分けして、脱衣所で見つけたハニーの洗顔セットの瓶などを取り出して、その透明袋に入れてきたのだ。
だが、若い担当官はピシャリ。
「法律で決まっておりますので、ドリンク類は破棄するか、ここで今すぐ飲んでください」
「ええっ?!」
ビックリ仰天、大汗。
それを側にいて聞きつけた先輩か上司らしき女性担当官がすぐに駆けつけてきた。
そして、私の目の前で、若者をこっぴどく叱りはじめた。
私にかまうことなく。
「ちょっと○○くん!今、破棄か飲めっていったの?どぉぉいうことよ~?ええっ!?」
さっきまで饒舌だった若者は急に黙り込んでしまった。
つらそうだ。
それはともかくとして。
「あの・・・・・・・ボクはもう通っていいんでしょうか?」
こっちがつらい、だわい。
★戻るくん★
★進むくん★
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