ふゆゆん亭

ふゆゆん亭

私が読んだ本・12



「ラスト・チャイルド」ジョン・ハート著
東野さやか=訳 早川書房











■あらすじ■(裏表紙より抜粋)

13歳の少年ジョニーは、
犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた。

彼は、一年前に誘拐された双子の妹アリッサの行方を探しているのだ。

美しい少女だった妹は何者かに連れ去られたが、
警察はいまだに何の手がかりも発見できずにいた。

ジョニーの父親も、娘が誘拐されまもなく
謎の失踪を遂げていた。

母親は薬物に溺れるようになり、
少年の家族は完全に崩壊していた。

ジョニーは学校を頻繁にさぼり、
昼夜を問わない危険な調査にのめり込んだ。

ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って―――


英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞作。



■感想■

生活をコントロールできなくなり、
本を読むと意識が飛んでしまう事もあって
読書が進まなくなってしまったこの2年。

この内容の濃い真摯な1冊を読むのに
2ヶ月かかってしまい、
感想を書くのも1ヶ月掛かってしまったー(=_= )

まあ、以前あまりにも読み過ぎていた時期があるので
今は休憩の時期って思う事にした。



娘を誘拐され夫は失踪し、
絶望の果てに薬と酒に溺れ、

鼻持ちならない金持ちの実業家
ケン・ホロウェイにコントロールされて
全てを省みない状態に陥っている母親の傍ら、

ジョニーは一人で地元の性犯罪者の洗い出しをし、
一人で張り込みをし、
双子の妹を探し続けていた。

このジョニーは考え深い13歳の少年で
この少年が色んな思いで自分を支え
調べ続けなければ
この事件は解決していなかったと思う。

この健気な少年が一人で立ち向かう闇には
母親の薬物・アルコール中毒・希望の放棄
ケンからのコントロールなども含まれており、

絶望的な状況の中で諦めずに
知恵と勇気と希望を駆使して行動し続ける。


まあ~たまにこのような賢くて知恵に優れている
諦めない(多分これが一番大事)少年が出てくると
私は激しく感情移入して応援せずにいられなくなる。

私が持っていないもの、
私が持っているものを沢山沢山抱えた少年の意地と勇気。

それが胸の奥をざわざわと騒がせる。


ジョニーの母親の人生。
ジョニーの妹アリッサ誘拐事件を追い続けて
自身の家庭を壊してしまった刑事クライドの生き方。

クライドと反目する息子アレン。
クライドの相棒ヨーカム。

アリッサ誘拐事件の唯一の目撃者
ジョニーの親友、ジャックの人生。

脱獄囚リーヴァイ・フリーマントルの人生。


一人一人が抱える問題と苦悩を
じっくりじっくり考えつつ読んだ。

一人一人の人生を振り返りながら読んだ。

事実が判明する度に歴史を付け足し、
ジョニーの行動の理由や思いの深さを知ったので
最後にはとても他人に思えなくなった。


登場人物一人一人に長く深い人生があり
絡み合った地点の事件から紐解いただけで、

これらの人達はレイブン郡で生きているように
リアルな小説だったよ。


切なくて
何度も何度も読むのを断念しようと思ったけれど

後味が良くて希望が湧いたから
感謝した。


どんなに面白くて、濃くても
最後に絶望にまみれると
その後がとても大変だから。


脱獄囚の登場と宗教的な匂いのする状況は
以前読んだ「丘をさまよう女」シャーリン・マクラム著で

アパラチア山脈をずーっと走り続ける脱獄囚の事を
思い出した。

キリスト教の国の小説には
時々神がかり的なこのような人物が
素敵なプレゼントをくれるようだ。



ネットでたまたま感想を書いている人がいたから
図書館でリクエストして読んだが
とても好きな作家が一人増えてうれしい。

充実した1冊だった。


2012年10月読了











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