アフラ・マズダー

アフラ・マズダー

アフラ・マズダー
*左手に持っている光輪(クワルナフ)は、帝王権を意味する。
 翼の真ん中の丸いところは、太陽を表している。
 翼は鷹を示す。


 古代イランでは、大地を支配する者には、神から光輪(クワルナフ)が賦与されると信じられていました。
それゆえに光輪は帝王権の象徴として、アケメネスやササンの王朝美術で好んで描かれたのです。
ゾロアスター教では、光輪を賦与された者は、アフラ・マズダーに協力して、世界を立て直すとされています。
ゆえに帝王は、同時に救世主でなければならないのです。




 アフラ・マズダーは、物質的なものに対して、精神(霊)的存在です。
ゾロアスター教でアフラ・マズダーを不可視とするのは、この事実に基づくのです。
中世ペルシャの霊界物語「アルダー・ウィーラーフの書」によれば、
主人公スローシュ(スラオシャ)とアードゥル(アータル)に伴われて天国に昇り、
オフルマズド(アフラ・マズダー)の声を聞くが、その声のする方向には光明が見えるのみで、
他に何も見いだせなかったと書かれています。
ゾロアスター教で最も重視される神学文学「デーカント」においては、不可視性は霊性の第一義とされ、
アフラ・マズダーは霊中の霊と称されると共に、不可視であることが説かれています。
 中世ペルシャの神学で、メーノーグ、ゲーティーグの二世界観として体型づけられますが、
ゾロアスター教で霊が扱われる根拠は、現俗的世界における物質的存在よりも高次の存在形態の確信でした。
そして、それによりこの世界の存在が可能になると信じられていたのです。


実体
 アフラ・マズダーが実体と考えられているのは、全てのものの第一原因であり、永遠であるとされているからです。
中世のゾロアスター教神学では、オフルマズドは過去・未来にわたって永劫であり、原因の原因であり、
自身は原因を必要としない存在であると説き、全存在の根本的原因であるとしたのです。
 ゾロアスター自身、アフラ・マズダーを「始元にして終末にましますもの」と称しています。


完善者
 全ての善きものはアフラ・マズダーに発し、その王国は善の完成です。
アフラ・マズダーは最も善きものであり、全ての善きものが備わっているが、悪しきものは何ら存在しないのです。
それゆえ至上神として崇められます。
善と悪を峻別し、相矛盾する敵対関係にあるとするのが、ゾロアスター教の真髄です。


全能者
 アヴェスタでは、アフラ・マズダーを無敵なる者、最強の者と称しますが、その一方で敵対者アンラ・マンユが存在します。
この悪魔に対抗する為に彼が善き者たちの助力を必要としている様にも述べられます。
さらに創造から終末の歴史過程にあって、アフレマン(アンラ・マンユ)の影響がより優勢な期間も存在することが知られています。
 アフラ・マズダーの全能性は、全ての悪を余すところなく滅亡することと同じで、
そのためには、あらゆる悪が出そろうことが不可欠であったのです。
しかもこの悪に関しては、時間の中に閉じ込められたアンラ・マンユのみが独り関わっているのです。
それゆえ、アフラ・マズダーの全能性を否定するものではないのです。


全智者
 アヴェスタでは、全てを知るを意味する「ウィースポー・ウイーザワンド」なるエピセットを有するのは、
アフラ・マズダーとミスラがあります。
後世では、アフラ・マズダーのみとされています。
 具体的には、審判者たる性格によるもので、全ての被造物の善・悪業を知り尽くしています。
そして、終末観の発展とともに、アフラ・マズダーの全智性は歴史の摂理そのものと重なり、
過去・未来・現在の三時を知る者とされます。
敵対者であるアンラ・マンユは、過去・現在は知っていても、未来についての知が無く、それゆえ無知者とされます。


創造者
 原初オフルマズド(アフラ・マズダー)は光明に満ちた上界に、
アフレマン(アンラ・マンユ)は暗闇の下界に、各々独立して住んでいました。
アフレマンが境界を侵そうとした事から、この両者は闘争に入り、
ここにオフルマズドの創造行為は開始される事となった。
創造はまず、霊的状態で始まり、その順序は、第一にワフマン(ウォフ・マナフ)、
第二にアルドワヒシュト(アシャ・ワヒシュタ)、第三にシャフレワル(クシャスラ・ワルヤ)、
第四にスパンダルマド(スプンタ・アールマティ)、第五にホルダート(ハルワタート)、第六にアムルダート(アムルタート)でした。
 以上のアマフラスパンド(アムシャ・スプンタ)に続いて、
ヤズド(ヤザタ)やフラワフル(フラワシ)を、さらに世界の霊的原型を創造したのです。
そして三千年の後、アフラ・マズダーは物質的創造を開始します。
それは、天空を最初に、水、大地、樹木、聖牛、原人の順に創造し、
七番目に火をもって全ての創造物に活力を賦与したとされています。


絶対正義
 アフラ・マズダーが応報審判の主であり、絶対正義です。
各人の行為の善・悪を正確に量り、寸分違わずそれに応報を下す厳格な審判者です。
ゾロアスター自身も強調したところであり、アフラ・マズダーとアシャ(正義)との強い絆を見てとれます。
また、アヴェスタでアフラ・マズダーの息子とされる火(アータル)が、
アシャの象徴と理解されることからも、見てとれます。
 アフラ・マズダーは終末の総審判において火で全世界を包み、
それにより悪を滅亡に追い込み、正義を完成させるのです。


無量光
 アタラ・マズダーが光明神と考えられていたのです。
元来は、アタラ・マズダーの住居である最高天を意味していたのです。
後に、アフラ・マズダー自身と同一視されたのです。
オフルマズド(アフラ・マズダー)は、その精神において真実であり、
その身体において光明であるというのは、中世以来の神学的見解です。
全ての光の源泉は、この神にあると信じられていたのです。
アフレマン(アンラ・マンユ)が暗闇の源泉にあるというのと同様です。


ゾロアスター教 最高神アフラ・マズダー 大天使と天使 ヤザタ 大魔王と悪魔 悪魔の軍団 聖火と真言

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