Angel

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全て | 日々の日記 | 小説
December 4, 2008
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カテゴリ: 小説
辰之介様と和久様にこんなに大事に想われていると知らず、私は一人でずっと考えていた。




 宿に着くと何事もなかったように振る舞い。京都の最後の夜を何事もなかったように過ごそうとした。

だけど、何時もより元気のないことに咲御婆様は気付き、和久様や辰葵お爺様、辰之介様が呼ばれて事情聴取をするはめになった。



 「で、何があったのかしら?」

咲御婆様は怒っているぽい。辰葵お爺様が弁護した。

「咲さん。ごめん。これは、私が悪いんです。二人は関係ないんで、解放してやって下さい!」

「どういうこと?」

更に機嫌が悪くなり、これには和樹お爺様も助け舟を出したのだが

「...まあまあ、そんなにカリカリしないで!八ツ橋を食べ、お茶でも飲んで!落ち着いて!」



「和樹さんは黙っていて!それとも自分の孫が健気に何事もないように、気を使って振る舞っていること、気にならないんですか!!私は、心配でしょうがないわ!」

「...そんなことないよ!だけど、そんなに怒っていても、皆が怖がって話せないだろ?で、何があったんだ?」

落ち着いた口調でお爺様は問う。

「...実は、雪乃さんの所の茶店に連れて行って...」

ゆっくり話し出した。



 暫くして、帰って来た答えは

「バーカ!いくら、あのバカ娘でも、あれの子じゃないのに、産みやしないだろ?確かに複数の異性と関係を持ったが、あの男のことは、愛してるから結婚したんだろ?辰哉がそんな器用なことは出来ない。他の者も同じように関係を持ったが、あの子は、最後にあいつを選んだ。椿を目の敵にするのは、女で、ガッカリされたり、同じ道を進むと言われ続け、育児ノイローゼになった。愛そうとし、たくさんの愛情を注ごうとしたが、愛し方が分からなかった。私は、あの子もあいつのことを否定した部分があった。だから、私も愛し方を間違えた。優しく笑い、もっと愛情を注げば良かった...」

和樹お爺様の目から涙が落ちた。普段、厳しい人からは考えられない現象だった。

「...君は愛してたよ。ただ、ちょっと厳しくなり過ぎてしまった。あの子達も解っているはずだ。親になってから気付くことの方が多いだろ?皆、間違えながら、愛し、育てる。ただ、愛し方が分からなくて、孤独や悲しみと闘っているんだ。だから、自分を責めるな!和久、辰之介。他言無用じゃ!」

和樹お爺様は仰った。和久様が言った。

「...椿は...椿はどうするんですか?」



辰之介様も立ち上がって言った。

「貴方達が行って話しても、信じないと思うわ。だから、私が話すわ。だから、今日は休みなさい!」

咲御婆様は、二人の心配する気持ち故に流行る思いを解っていたから、汲み取って、その一言を言い放ち、有無を言わせなかった。



 ー待機中

「...椿は、お前と血の繋がりなんて薄いと思いたいんだろうな。俺は、半分、そうなら不覚にも思った。」



「...嘘でも、考えるなよ!椿ちゃんが似ているのは、血のせいだと思いたい。だけど、もし繋がっていても、彼女しか要らない。椿ちゃんが幸せならどんな罪も背負う。今、言ったことを彼女の前で口にするな!悲しませることを言ったら、俺が許さない!」

かなり怒っていた。

「...言わねぇーよ。泣かせたくない。あいつの笑った顔が好きだから...」

お爺様達はハラハラドキドキして、心臓に悪いと思った。胸倉を離して、取り敢えず解決した。



 戻って来た御婆様が、話があると言われた。

「...何でしょう?」

「難くならないで、平気よ!辰葵さん達から聞いたんだけど、貴女が実は私の本当の孫じゃないかもと思ったそうね。」

「......」

「椿ちゃんは、私の孫よ!貴女の生まれた時に、私も立ち合ったのよ!だから、見間違える筈ない!それにあの子は、結構、殿方とよく遊んでいたりもしたけど、貴女の父親に出逢って、落ち着いたわ。貴女が生まれるのをとても心待ちにしていたわ。だけど、あの子達は、一族のはみ出した者達だったから、いろんな批判を受け、貴女の誕生の時も相当、嫌味なんかを言われてね。それでも、懸命に育てようとしたの。貴女の父親がね、自分に似ていないことを疑ったこともあり、心が壊れたの。それでも、貴女を二人は愛そうとしたの。周りの目を気にする度に心が病んで、悩んだ。病んだ心で、愛し方が分からなくて、愛せなかった。貴女を虐待することで、全てを忘れようとし、繰り返してしまった。だけど、後悔もし、鬱状態になった。貴女を間違いなく愛してた。だから、貴女は誰がなんと言っても、私の孫よ!北条家の名に恥じない立派な孫。だから、気にしちゃダメよ!椿ちゃん!」

ギュッと抱き締めた。

御婆様に抱き締められ、堪えていた涙が滝のように溢れ出した。

“誰かに否定されたかった。...本当だと信じて良いですか?辰之介様を好きでいて良いですか?”

何度も心の中で問い掛ける。


優しい温もりを感じながら、眠る。




 ーIN 母&父視点

「...椿は、向こうで幸せにやってるかしら?」

「九条家の孫や和久様がいるから大丈夫だろ?あいつは俺達に似ずに育って良かった...。愛しい娘が、幸せならそれで良い。」

あまりに意外な発言だが、本心だ。

「...私は、あの子を誰よりも愛し、護ろうとする辰之介様と一緒になって欲しいわ。」

「...駄目だ!どんなことがあっても、結婚など許さない!忘れたのか?俺達を虐げ、苦しめた連中のことを...。外の者と結婚して欲しい...」

その言葉の真意を知らない。

「...解ってるけど、椿は優しくて、賢い子だから、ちゃんと見分けられる筈...。辰之介様は、辰哉様にそっくりだから、きっと大丈夫...。私達の時のように護ってくれる筈。」

「...だけど、やっぱり反対だ!」

こんな話をされているとは知らなかった。

「...私は、大丈夫と信じたい。巴様がきっと護ってくれる筈よ!あの子は巴様の生まれ変わりだから...」



二人は夢のお告げで、巴様に逢っていた。ただ、どこで間違ったか、私を傷付けたあとしか、優しく出来ずにいた。

ちょっとした劣等感もあったのかもしれない。

「...椿は、幸せになれるのだろうか?」

「きっと...きっと大丈夫!御母様達の所にいるんだから...」

そう言った。





 私は、夢を見た。

巴様が出て来て、笛を奏でている。なんだか寂しそうだった。奏でれば奏でるほど募る想いが甘く切なくて、逢いたいと想う気持ちが溢れ出しそうになっていた。
いるはずのない方に触れたい衝動にかられたように、指先を伸ばして呟く。

「...逢いたい...氷石さん...」

今にも泣き出しそうになるくらい切ない表情をしていた。



“毎日、逢っていても、足りない。抱き締められても、口付けを交わしても足りない...。愛しくて、触れたくて、もっと傍にいて欲しくて...。わがままだと分かっているのに尽きない想い。離れている時間がたとえ数分でさえ、数時間のように長く感じてしまう...。早く逢いたい。抱き締めて欲しい。溺れてしまうほど甘い口付けをして欲しい...。”

巴様は思った。夜空の星星に祈った。

“私の愛しい方に早く逢わせて下さい。...1分1秒でも早く"



辛いはずなのに、決して寂しいと言わない巴様は、どこか私に似ていると思った。

私も言えないが、巴様は強いなと思う。


 気高く、優しくて、真っ直ぐな所が、全て、笛の音色に表れている。そして、最後まで希望を捨てないで頑張っている所がとても強いと思う。

でも、溜め込んで、一人で泣く姿は、私みたいだなと思った。

もう逢えないわけではないのに、逢えない時間が寂しいんだと思った。

 笛の音色を聞く度、恋しさが込み上げた。




 夢から覚める直前、待ち詫びていた人が優しく抱き締めて、笑顔と涙が同時に零れ落ちる優しい夢を見た。




 目を覚ますと、涙が零れ落ち、無性に辰之介様に逢いたいと思った。すると、笛の音が聴こえた気がした。

空耳かと思ったが、どうやら空耳じゃないらしい。耳を澄ましていると、何だかぎこちないような音はするが、でも、どこか優しい音色。




「~♪」

聴こえて来る音色は外から、窓を開け、下の方を見渡すと人影を見つけた。ハッキリ誰かは判らないが、気になるので、御婆様を起こさないように起き、秋とは言え、冷え込む時間帯なので、上着を羽織り、ゆっくり下に向かった。
御婆様は、実は起きていた。



「...ふふふ...。気を付かなかったのね。さて、寝てなくちゃね!」

御婆様は、抜け出したことに気が付いていた。




 息を切らし、下に行けば、笛の音色がほんの直ぐ近くまで響いていた。近付くとやはりいたのは、辰之介様。

何だか悲しそうな顔をしていた。

笛を持ったまま、何か思い詰めているみたいだった。後ろから来て、手に首を回し、抱き付いた。

「?!」

「...辰之介様。」

寂しいと言えないけど、なんだか今日は暫く逢っていなくて、久々に逢える喜びと寂しさが入り混じったような不思議な感情が私を掻きたてていた。

ほんの数時間前に逢ったのに、寂しさが募り、そう感じさせていた。

「...椿ちゃん?」

名を呼ばれて、彼がここにいる安心感を憶え、だけどまだ、埋まらない寂しさを埋めたくて、さっきより強く抱き付いた。

「...椿ちゃん?今日は甘えん坊だね...」

名前を呼ばれて、愛しさが込み上げ、もっと温もりを感じたくて、顔を近付けて口付けをしようとすると、絡めていた腕が解かれ、すっぽり彼の腕の中に抱きすくめられていた。

「...椿ちゃん。」

甘く囁くような声が媚薬のように感じ、口付けていた。

何度も角度を変え、口付けをする。



「...椿ちゃん。何があっても、君を護り続けるよ。何時になるか分からないけど、俺と結婚してくれませんか?」

甘さに溺れて行った私達だが、辰之介様は意を決したようにそう言った。

「...辰之介様。もしや今回の件で焦られてしまわれたのですか?お気持ちは嬉しいのですが...」

不安だった。

「...それはきっかけにしか過ぎない。椿ちゃんとここにいられるのが幸せなんだ。初めて逢った時から、君をお嫁さんにするのが、夢だった。椿ちゃんは、俺と繋がりが兄弟じゃないかと疑っていたけど、たとえそうであろうと、俺は君以外要らない。」

真剣な眼差しだった。ちょっと怖かった。だけど、色んな不安を掻き消したくて、抱き付いた。

「...君は、今日は本当に甘えん坊だね。」

また、口付けを交わすが、とても切なかった。否定されたのに、まだ疑う私がいた。

「...愛してる。」

不安を掻き消すように言った。





 私達は、夜が明ける前に帰って行った。

そして、帰りは皆に挨拶をしに行った。辰之介様と和久様は、特に大変だった。だけど、寂しくてしょうがなかった。



 戻って来た辰之介様に、自分らしくないが、甘えるように、べったりしながら帰って行った。





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Last updated  January 3, 2009 04:58:40 PM
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