「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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読書2016.6~12
2016年の読書メーター
読んだ本の数:112冊
読んだページ数:31794ページ
ナイス数:1365ナイス
日本人になりたいヨーロッパ人 ~ヨーロッパ27カ国から見た日本人~ (宝島SUGOI文庫)
の
感想
自己陶酔、自己憐憫の裏返しのような娯楽放送やネット動画が増えているが、そのネタ本かと注意読書。ヨーロッパと日本の間の肯定的話題の総ざらいで、偏面であるかもしれないが、話材として楽しめた。日露戦争勝利でトーゴービール登場の話は、怪しい話で、あるにはあったが実状は別らしい。天声人語のトーゴービールの記事が紹介されており、また、裏取りなしで談話形式で責任逃れした記述の可能性が見えた。出島の独人医師ケンペルによる綱吉施政評価の紹介があり、現代での新しい解釈と同じで面白い。日本を安心したい気分の時に丁度よい本。
読了日:12月31日 著者:
偽りの帝国 緊急報告・フォルクスワーゲン排ガス不正の闇
の
感想
真相がよくわかった。三菱自動車と似たような、組織に属する人間達の保身の病根が、権威主義の経営者により発病していく構図で、企業が腐る典型だ。エンジニアとして一流の人々が目標を与えられて、上意下達の服従に保身しながら、目標に邁進して、見せかけの実現を遂げていったらしい。油を注いだ背後にドイツ人の米国を見下す本音があったり、企業体質が、創家、ヒトラー、占領英軍の影響によるものだったりとは驚き。それにしても今年、宿願の世界一をとるとは皮肉なものだ。
読了日:12月31日 著者:
最悪の将軍
の
感想
綱吉と正室の心に沁みる風雅な夫婦物語でもあった。恋歌もそうだが、武家の出でない妻の視線が実は武家らしい。清水克行によると、近年、綱吉は都市の治安と人心の教化に成功したとの評と。悪評の生類憐みの令は、実は、戦国気風ぶった愚連隊対策と、農村での銃規制に狙いがあったとも。作中に綱吉の政治の評価は百年かかるかもとのセリフがあるが、三百年かかったことになるのか。作中、綱吉に穢れ扱いされる忠臣蔵は、堺屋太一によると、もともと稀有のできごとで、実は不義不忠が普通の時代だったと。実は、この本が真実かも。
読了日:12月28日 著者:
朝井まかて
アメリカ・ザ・ゲンバ - America at the Scenes - (ワニブックスPLUS新書)
の
感想
13年前のイラク戦争侵攻直前の本の改題本だが、現場ネタは実に読みごたえがある。米の傲慢と公正と強欲が共存して世界に君臨してきた理由がよくわかる。対等な者同士にしか公正に接せず、認めない相手には不公正に接することも米欧にとっては、公正であるとの傲慢思想には呆れるが、さもありなん。マスコミ、映画の堕落と、その垂れ流しを喜んで過ごす日本人。そうだろう。そんな日本人の未来を支えるのは、仕事のでき・質に拘りぬく世界で唯一の至上の存在であることだと。果たして大丈夫なものなのか。
読了日:12月17日 著者:
青山繁晴
「カエルの楽園」が地獄と化す日
の
感想
中国が日本を侵略したい切羽詰まった動機には驚く。まさかと思いつつもスターリン、毛沢東の自派以外や他民族への粛清殺戮暗黒史を考えれば、そうかもしれないとも思う。長谷川慶太郎は、中国共産党の独裁支配の崩壊は間違いないと言うが、一方で日本自身が瓦解してしまうと話は別だ。つまり、反日新聞社・テレビ、左巻き評論家・学者・教師・自称市民活動家など左翼ネタの商売人達が、中国工作員達に煽られ、在日米軍、自衛隊を貶め、日本人は戦わぬ衆に馴らされ、お人よしにも、凌辱者を受け入れて瓦解してしまう可能性だ。果たしてどっちが先か。
読了日:12月7日 著者:
百田尚樹,石平
挽歌の宛先 祈りと震災
の
感想
真実に迫ったドキュメントだった。祈りは、悲しみと向き合うことで、亡き人を想い同時に生き残った者同士の励ましでもあるそうだ。河北新報社ならではの取材で、人の真相に迫る報道だと思う。生きることを報道できる数少ない立派な新聞社なのだろう。「寺院消滅」「無葬社会」の淵なしの闇の答えがここにある気がした。多死社会を迎え、限られた時間に対してどのような平安を用意できるか、送る者に問われていると気づかされた。
読了日:11月30日 著者:
河北新報社編集局編
魚影の群れ (ちくま文庫)
の
感想
仕事して生活する営みが、動物、海、四季との格闘でもあったことを思い知らされる話だった。いつもながら、繰り広げられる人々の人生は、地道でも波瀾にまみれ、なんとか冷徹な現実に折り合いをつけるものだった。現在の規律ある社会でも、人々の底には、本能的に捨てがたい渇望があることを描いていると思う。捨てられぬ生き方、捨てたときに救われる現実、やめられぬ性向、奪う者への憎悪、愛情と嗜虐の同居など、4編とも息づまる迫力だった。
読了日:11月27日 著者:
吉村昭
アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄 (祥伝社新書)
の
感想
トランプが勝った事に得心。アメリカも左巻きメディア、既得権益死守強奪エリート層の政権たらいまわしにうんざりした拒絶意志表明のようだ。左巻きと利権漁りエリートが組み合わさっている中央政府という事らしい。それが、1930年代からとは。コミンテルンとはそれほどに賢く抑制の効いた策謀勢力だったのか。ヴェノナ文書なるNSAとFBIの40年前の文書公開での歴代共産主義スパイ暴露は読んでみたい。長谷川熙の「崩壊朝日新聞」での日米開戦を扇動した朝日左翼秘密結社説が、アメリカでは大統領府で起きてたと。ハテ白黒つくか。
読了日:11月26日 著者:
江崎道朗
冬の鷹 (新潮文庫)
の
感想
題名の由来に思いがはせる。作中、鷹らしい下りは、田沼意次の失脚のキッカケが将軍鷹狩時の田沼手配の同行医師の治療のところか、前野良沢と晩年親交した尊王攘夷志士彦九郎にイワナを下賜した上杉鷹山の名前くらいだった気がする。良沢が孤高で群れぬ探求者であることを「鷹」にこめ、雪に埋もれる根岸の清貧の小屋から嫁いだ娘に助け出される老境を「冬」に表しているのかも。拝金功利流行医と対比した、偉業を成した探求者の姿を冬の鷹としたのか。対比は現代社会の性根暴露にも見えた。実に面白い。
読了日:11月23日 著者:
吉村昭
ハーバードでいちばん人気の国・日本 (PHP新書)
の
感想
流行りの自己満足受け狙いかと注意読書。近頃のハーバードの学生はエリート富裕層の子弟で小粒の人間が多いとの記事を以前読んだが、勝者教育は続いているようだ。基本は勝利指向の選民教育に変わりはないのかも。和の思考・倫理もそのための方法であれば、思考材料として学んでいるようで人間教育とはちがう印象。同大のテキストのコピぺ本で、通説が多く、内容は、日本の商業新聞と同じ印象。「強欲の帝国」を支えるつるんだエスタブリッシュ養成教育での息抜きが日本のケース学習か、勝者教育の反面教材が本音か。知日と親日は別。おめでたい。
読了日:11月19日 著者:
佐藤智恵
氷の燃える国ニッポン (ワニブックスPLUS新書)
の
感想
海洋資源分野も、新聞、テレビ、中央官庁、学閥、エネルギー独占企業に食い物にされ、事実を葬られているとは。既得権益にたかる学者、研究機関、中央官庁、いずれもが、保身のために権謀の限りを陰湿に繰り出し、日本の未来を摘んでいるとは。予算の獲得と費消に腐心し、時間稼ぎで成果を先送りするとは。まだこんなことを。エリート政官民の腐ったもたれ合いのたかりが横行してるとは。日本海沿岸自治体が連合せざるをえないわけだ。自前の資源で賄える国になる可能性が、敗戦洗脳による利権確保勢力にまたも攻撃されるとは。やるせない。
読了日:11月17日 著者:
青山千春,青山繁晴
無葬社会 彷徨う遺体 変わる仏教
の
感想
増田寛也の地方消滅と、松谷明彦の東京劣化の構図が、前作の寺院消滅と、本作の構図と重なった。近代文明が経験していない高齢社会と多死社会の到来がどのような姿、形となって迫ってくるのかが少し見えてくるような現代世相ルポだった。日本の寺には律がなく、世俗化してしまっていて、本来の布施で生きて、修行する姿を挺して社会に貢献するアジアの僧とは全く異なるらしい。救いの場とならない僧が私有化している寺は、税金払うべきとの佐々木閑の話は納得。多死無縁社会では弔いや葬送の文化は手続きに変容するようだ。
読了日:11月15日 著者:
鵜飼秀徳
これが世界と日本経済の真実だ
の
感想
新聞社とテレビが既得権益に守られ、安逸をむさぼれるのがよくわかった。株式譲渡制限、再販制度、国有地安価な払下げで守られ、教条的な非論理の不勉強な安易な報道ですむ気楽な権益商売とは。マスコミが嘘八百になるはずだ。郵政民営化は郵貯の破綻を民営化で回避するためで、年一兆円の人件費税金補てんをしていたので存続できていたとは。国債に国民の資金を投入する仕組みが大蔵省の真意とは。1000兆円の借金説も財務省の増税用ネタで、国のバランスシートは金融資産と30兆の徴税力がものを言い、問題ないと。ヤレヤレ。
読了日:11月11日 著者:
高橋洋一
歴史が遺してくれた日本人の誇り
の
感想
歴史を知るための構えがわかる。実地調査をしたかのように騙る学者に要注意と。文化人類学、菊と刀はその典型と。新聞も一つの商売で昔から偏向。記事に無責任。歴史書は、創作文学で中立的歴史などない。勝者の讃歌、権力者の自己主張の都合よい内容と理解してから読み、事実を推論できるようになることが歴史通と。納得至極。吟味してから、真実、本質を考えねば騙されるらしい。聖徳太子も今や風前の存在、鎌倉幕府の成立期も変更され、足利尊氏の雄姿も別人と。歴史は、変わり、学び直され続けるもの。新聞に騙されるのは自己責任という事か。
読了日:11月6日 著者:
谷沢永一
破船 (新潮文庫)
の
感想
研ぎ澄まされた話であった。著者の真髄がいかんなく発揮されていると思う。羆嵐の恐ろしさは、自然の外的脅威と、対する人間集団の性なさから醸し出されていたと思うが、破船は日本人の自然風土と、そこに生きる精神風土が織りなす恐ろしさだった。凄みのある小説の極致で著者ならではの力作だ。力強く深遠で潔い作風に息をのむ。またもや深呼吸が必要な読後だった。
読了日:10月31日 著者:
吉村昭
2017長谷川慶太郎の大局を読む
の
感想
毎度、新聞では知りえない真相を知る。銀行の2100億ぼろ儲けはマイナス金利で失せたのではなく、預けてた分は金利温存で年2000億丸儲け。全くの無駄金。銀行の住宅ローン貸付の3割は返済遅延でマスコミは広告欲しさに事実を暴かぬと。銀行員25万人は多すぎで再編してリストラせよと。トランプが大統領になると安全保障改革が進み、露中も経済破綻するのでNATO、国連軍中心の平和な時代になると。デフレ基調は続き、量より質が勝負となり、唯一、長期資金を充分に持ち不良債権処理を済ましてる高品質技術国の日本はいよいよ強国にと。
読了日:10月28日 著者:
長谷川慶太郎
一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート
の
感想
平和の祭典の象徴のスポーツとは異種で、勝負師、博打肌の世界一に挑んだ競技者の独白だった。崇高な精神性の評論など吹き飛ぶ、鍛錬と才能と競争心の発露が運動選手の本能なのか。理念、意義などで耐えて納得できるような世界ではなく、執念と、細心さ、大胆さを組み立てるのが世界レベルの競技者のようだ。窺い知れない極限の世界だったが、記者、陸連の現実離れした自己都合の世界はやはりそうかと想像できた。
読了日:10月23日 著者:
上原善広
この日のために (下) 池田勇人・東京五輪への軌跡
の
感想
再興、信頼回復、発展による信用獲得を目指す賢く反骨の指導者に恵まれた時代があったことに嬉しくなる。そして東京でオリンピックが開催されることの意義がとても深いものであったことを思い出せる。西欧による収奪からの独立、共産勢力による侵略を阻止、イデオロギー・民族対立、戦争の克服、こうした機運を希求する祭典であったようだ。はたして次回は「意義」をこめられるか。ショーアップに堕してしまうのか。スポーツの真剣勝負が全てを吹き飛ばして理念を体現するとよい。前回も政治屋と新聞屋が指導者を貶めて利益を謀っていたとは無残。
読了日:10月16日 著者:
幸田真音
この日のために (上) 池田勇人・東京五輪への軌跡
の
感想
豪放磊落で気持ちの良い読み物。人を思い、国を思う姿をきれいになぞり、復興、飛躍を目指す事績がとてもまぶしい。西欧文明のおぞましさ、狡猾さ、残忍さはみじんもなく、オリンピックを夢見るとはそうであったのかも知れない。市川崑の五輪記録映画でみる東京は、簡素で、小奇麗で、気高く、人々は、楽しげで、競技者は果敢に自らを鼓舞し、現代の様な攻撃的な仕草は見られない。ふるまいがとても違う。人々が集い、きそいあって、分かり合う大会であったのだろう。
読了日:10月13日 著者:
幸田真音
総理
の
感想
自らに都合よく事実を切り張りしながら、商売・功名欲を知的化粧顔でごまかす新聞・報道にげんなりすることがある。後日、暴露本をよんで、マスコミは事実を報道しない、自分の理屈や商売に不都合なことは捨ててしまう勢力と知ることがある。著者は長くTBSの政治記者をして退職したらしい。この本を読むと、耐えられぬもの、なせぬ事があったのではと思えてくる。 この本は、政治の実相を報道できない「ジャーナリズム」の堕落を指弾したいようだ。「プロパガンダや提灯記事に堕していないか」と。
読了日:10月10日 著者:
山口敬之
遠い幻影 (文春文庫)
の
感想
生と死の交錯に抗っても抗いきれない運命。受け入れるまでに費やされる年月。忘れ得ぬ月日も幻影のように変化し、ほのかな思いが宿り始める。老境に入り、全てをそそぎきったかのような心境に近づき、生き続けてきた人々は穏やかな表情をたたえるようになる。それもやがて消え去る幻影のひとつであるのだが。生きることの息づまるような迫真も、翻弄されるはかない運命も、月日を経て訪れる老境の安寧も、幻影のようにここちよいものが残る。死からも心に沁みわたる落ち着いた生が満ちてくる。
読了日:10月6日 著者:
吉村昭
中東・エネルギー・地政学
の
感想
著者と日本の半生記。日本に検証報道が欠けてるそうで、新聞、メディアではよくわからない事が、本書ではよくわかる。イスラムの動機、その道理、アメリカの動機、その野心、欧州の大罪、その狡猾がとてもよくわかる。腑に落ちた。日本の立場は独特で他国にない稀有な位置をとれると。宗教争いに安易に与せず、巻き込まれず、日本の和解の文明を賢く覚悟して示せと。夢見る乙女のシュプレヒコールなど誰にも相手にされぬと。技術を磨き、あらゆる方向を見据え、意見対立しても親交しつづけられる度胸と知性を磨けと。正しい指針に読後感はすっきり。
読了日:10月4日 著者:
寺島実郎
いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人
の
感想
新聞、テレビ、知識人、文化人にたいする疑念、不信は、やはり正しいと思える内容。アメリカ人にこうまで書かれるとは。メディアのいびつさ、偏向・傲慢・似非報道を恥じぬ記者の跋扈、文明の商業化、知的怠惰な国民生活など、指摘は核心。バカ騒ぎのテレビは見るにたえず、傲慢な都合報道の朝日・毎日、闘わぬ知識人・文化人の偽善性・体たらく・事大性根、映画人の商業主義・映画文化の放棄、瀬島龍三・源田実等のエリートの背信、野坂参三の日本破壊工作など。嘆息しきり。
読了日:9月30日 著者:
ケント・ギルバート
壊れた地球儀の直し方 (扶桑社新書)
の
感想
著者の半生記。自覚、報道人としての責任感、日本への貢献の覚悟が披露され、積み重ねられた取材と培ってきたマクロとミクロからの思索、証跡の数々は興味が尽きない。事実と現象を思索して、真実と本質を明らかにしてくれているようだ。このままでいた場合の未来に寒くなる。アメリカの本質、アメリカの最大の既得権益が戦争、世界は暴力と金で動き、米、欧、中の野心も体制も壊れ果てつつあると。日本が放置してきたことをせねばならぬ切迫に納得できる。新聞、テレビの錯誤・事大はつくづくどうしようもないようだ。
読了日:9月28日 著者:
青山繁晴
国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書)
の
感想
平和に安穏に過ごす者には窺い知れないが、生死が切迫した状況に対峙する自衛隊員の心情を読めた。題意は、死ぬ覚悟をするのに値する国なのかとの疑問符だ。自分の身を守るために自分の掟を捨て他人の掟にへつらうのか。満腹でもなおも貪欲にはしたなく喰らうのか。自然の摂理を重んじてすべてと共存する理念はどうしたのか。崇高な理想を目指すなら、覚悟して守る者はおるぞ、それに値する国になってほしいとの警鐘だった。
読了日:9月22日 著者:
伊藤祐靖
夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲 (文春文庫)
の
感想
白い航跡、暁の旅人と、時代と心意気が重なる爽快な偉人伝だ。パリ留学、箱館戦争、従軍医での事績は、武揚伝を思い出す。慈善医療、貧民医療の普及では、榎本武揚の明治への献身が読めた気がした。武揚伝ではあまりふれられなかった敗戦後の旧幕臣たちの姿が知れた。解説によると、吉村は裏付けを得られぬ事は書かないあまりに禁欲的な創作姿勢と。吉村自身は、史実そのものにドラマがあると。納得。
読了日:9月9日 著者:
吉村昭
「イスラム国」の内部へ:悪夢の10日間
の
感想
著者に一理。西側諸国の興隆が利他主義に基づいたことは皆無と。サディスティックな残酷さは今日も何一つ変わらずと。問題なのは、権力、金、名声で、その為には恥も外聞もなく宗教の威信も悪用し、その威信も同胞の生活もなげうつと。いかなるテロも許せないが、イラク戦争も国家による最大のテロ。「聖戦」を考え出したのは、もともと十字軍のキリスト教徒。兄弟宗教のムスリムとユダヤ人を虐殺、アフリカ、アジアの異民族を虐殺、20世紀には大戦で7千万人を死亡させ、人種迫害・虐殺も。キリスト教的政治家は異教を尊敬したことなかろうと。
読了日:9月2日 著者:
ユルゲン・トーデンヘーファー
羆(ひぐま) (新潮文庫)
の
感想
何れも非情な営みを描いた5つの短編。選び抜いた突くような簡潔な文章はいつもながら小気味よい。死者が家族を染めていく人間の宿命、重ねられていく同じ運命が暴露される。夢中になって、突き詰め、追い立て、偏執に陥り、本性と欲望をむきだしていく姿が描き出される。打算が摂理であるような物語が静かに語られる。怒りも悲しみも、青光りして、沈鬱なまま人々に蓄えられ、代々引き継がれていくようだった。発表された45年前は動物を勝負に使う時代で、その動物の性能に固執する人間像は、今では愛玩に消えうせてしまいそうだが、尚更、鮮烈。
読了日:9月2日 著者:
吉村昭
世界史としての日本史 (小学館新書)
の
感想
題名に得心。メディアは重罪で今も進行中と。溢れる自画自賛は、自虐史観のさかさまの自尊史観で、同じレベルのあやしさと。大東亜戦争敗戦、経済成長敗戦の劣等感を払拭する防衛反応と。敗戦時の参謀・外交官は、実態は無教養で愚かと。百戦錬磨、複雑怪奇、権謀術の世界で、無教養は致命的と。日本の教育は先進国で劣位、大学も遊び場、政治も勤労も愚かなスタイルと。勉強しないとやばいと。我田引水の好きなことだけ拾い読んでいては、人も国も力は身につかぬと。歴史は新事実がでてくるから学び続けよと。日本の知的退廃がよくわかった。
読了日:8月30日 著者:
半藤一利,出口治明
無私の日本人 (文春文庫)
の
感想
心洗われる三篇だった。あとがきで著者は、「本当にこわいのは、日本人がもっているこのきちんとした確信が失われることである。」と。とても思い当たる日々が現実のような気が残念ながらしてくる。未来をどう過ごす民族になっていくのか、今、なしている価値選択を吟味せねばと思い知らされた。渦中の世代は何を感じるか、なじまぬありえぬ思考として視野の外に捨てるのか、拝金自己実現を目標にするのか、似た規範性を社会システムに求めえると思うのか、どうなんだろう。誠実な史実書は未来を考える鏡になると思う。
読了日:8月28日 著者:
磯田道史
新装版 間宮林蔵 (講談社文庫)
の
感想
実に面白い。技術探求、冒険、外交、国防、隠密、勧善懲悪などが満載の人物伝だ。幕府逸材の高官が、筋と温情を懐に、冷静で怯まぬ武の決断をなす姿は清廉だ。その下で未知の分野に成果を求める技官の武は逞しい。扇動、情動に踊らされず、実態を実地見聞して掌握して物事を予測し、状況判断し、果断にけじめと、行く末を決めた施政は揺るがない。義のある合理性が支配する社会は、世界にひけをとらない文明とつくづく思う。
読了日:8月21日 著者:
吉村昭
世界を動かす巨人たち <政治家編> (集英社新書)
の
感想
いずれも自国の強化に邁進する指導者達で、来歴には、反骨を育んできた原体験が確認できるとのわかりやすいお話。歴史は繰り返されるとのお話で、期せずして自分が反対像の再来に化けてしまっていく様子が進行形で見えてくる。闘争的攻略的な「人種戦争」が世界で続いていると思い出す。「人間の条件1942」では為政者の冷徹を蒋介石になぞらせていたが、冷徹な自らのみへの献身は世界の為政者の共通原理らしい。
読了日:8月20日 著者:
池上彰
日本人はどこから来たのか?
の
感想
片山一道の「骨が語る日本人の歴史」では、縄文人のミトコンドリアDNA型は、シベリア、朝鮮半島、中央アジアと。渡来は5千人規模推定で縄文時代後期人口は16万人と。縄文人は骨の特徴からも世界最古の漁労の優秀な民と。本書では、アフリカ起源のホモ・サピエンスがヒマラヤの南北の両ルートで東進して、一万年後に合流し、渡海して列島にと。大陸を北上した一群は海面低下で陸続きの北海道へ進出と。対馬ルートでの進出には渡海術要と。海面低下で大陸続きの台湾から沖縄方面に渡海と。航海術の実証実験の必要性に納得。壮大で実に面白い。
読了日:8月15日 著者:
海部陽介
人間の条件1942 ― 誰が中国の飢餓難民を救ったか
の
感想
内容は、旱魃、蝗害、飢饉、逃散の中で離散した地主一族の人生だが、暴かれるのは、為政者・宗教家・支援国の腐敗と偽善。翻弄される人民の朴訥が哀しい。ワイルド・スワンを思い出すが、この本は1993年に天安門事件の悪評を打開せんと緩めた時期に間隙をぬって登場し、以後の愛国主義反日期に埋もれ、2012年にシナリオを統制されて映画化されたと。著者の責任感がなせる本。こなれた翻訳も見事。天災が人災となり、命と尊厳を蝕む国が現存する事実はやりきれない。厳しい情勢下で意図を潜ませた秀逸な本であることを訳者に教わった。
読了日:8月13日 著者:
劉震雲
人種戦争――レイス・ウォー――太平洋戦争 もう一つの真実
の
感想
著者はアフリカ系アメリカ人史専門のヒューストン大学教授と。訳者は1961年生まれとあるから相当の経験はありそうなのだが、機械的単語置き換え、英語構文単純置換放置文が多く、読んでもわからない修飾が複層した翻訳。内容はとても興味深く、貴重な証言資料の蒐集録のように思えるのだが、出典、引用正統性説明が皆無で、残念な編集。再編集して体裁を整えて欲しくなる。米欧豪の人種差別と収奪的侵略主義と横暴な唯一神信仰が、つい70年前まで、アジアを支配し、蹂躙し、搾取し、飽食三昧していたことが糾弾されている。
読了日:8月9日 著者:
ジェラルド・ホーン
〈ひらがな〉の誕生 (中経の文庫)
の
感想
日本語を作った男、上田万年では、旧仮名遣い漢文訓読みの守旧派・森鴎外の妨害にあい、言文一致の国語の近代教育は遅れ、夏目漱石の小説が言文一致の口語で実用の起点を作ったとあった。言文一致の国語は戦後となったとあった。千年前のひらがなの誕生は、日本語・ひいては大和の心の表現として登場したらしい。日本語の音を漢字借用した万葉仮名、中国古代思想を規範とする漢学からぬけだして、日本の心を表す文字として広まっていったらしい。千年隔てた、言語の変革は似た気運にあるように思えた。面白い。
読了日:7月31日 著者:
山口謠司
幕臣たちは明治維新をどう生きたのか
の
感想
英雄豪傑以外の幕臣達が社会変革をどのように生きていたのか、数多くの人生模様が拾われていて、変転の実相に近づいたような気にもなるが、短い脈絡の実例が陳列気味で何が帰納できるのか、終いにはわからなくなり、混沌の社会変革に旧支配層の変転には、才覚頼みや旧人脈頼みの様々な浮沈があった、志次第の時代変革期だったとの昔ながらの理解に。体制陥落した体制人達のひとつの事例集。国民の変革の大きさを下支えした幕臣人材との、はやりの論に一石をが、編集者の意図か。
読了日:7月30日 著者:
樋口雄彦
帰郷
の
感想
何れも心に沁み込む6編だった。獅子吼の満州のさすりびとのような不思議な世界が、南方の島々、西太平洋の海底、敗戦後の占領下での銀座、新宿、復興期の後楽園で繰り広げられる。醸し出される夢うつつの中で、穢れなき人々の凄惨と、穢れた生き様の中の清廉を交互に揺らめくように際立たされていた。きらめく光とつんざく音と人々のやり取りが静かに語られ、生きたいとのつぶやきが聞こえてきた。抒情に溢れる。無言歌では、吉村昭の総員起しの鬼気を対極のように思いだした。
読了日:7月24日 著者:
浅田次郎
模範郷
の
感想
台湾、大日本帝国、中華民国、中華人民共和国、台湾語、日本語、英語と、異次元の文化が、時代を超えて折り重ねられていく不思議な旅行記だ。さまよう自身の姿が、日本家屋の鈍い色あいに溶け込んでゆくような不思議な文章だ。修飾文の重なり合いを理解するのに読み返すところがあるが、味わい深い文章だ。西洋人初の日本文学者と著者略歴があったが、八雲はどうなるのだろう。
読了日:7月22日 著者:
リービ英雄
官賊と幕臣たち―列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート
の
感想
面白い。真実のほどはよくわからないが、薩長史観による勝者の自己都合史観は半藤一利も指摘するところ。著者の言う、グラバー商会の前身と死の商人推定、薩長の武器斡旋密輸取引の取引媒介人、英の反体制派支援の野心と米仏露の牽制の薄氷均衡、幕府の先進性・国際性、長州の原理主義の残虐性、などは、司馬小説に明治維新の心地よい人間性を楽しんでいる幕末ファンには、ハードルが高い。が、言われてみればそのようにも見えてくる。歴史小説も小説であることを今更のように思い返す。吉村昭も事実に忠実だが作者として取捨する事柄はあると言う。
読了日:7月20日 著者:
原田伊織
一度はこの目で見てみたい! 日本の世界遺産 (PHPビジュアル実用BOOKS)
の
感想
ユネスコの世界遺産の認定には偽善的なものを感じているが、とりあげられている歴史物はいづれも素晴らしい。写真家の手にかかれば奥行も息遣いも写し取ってきてもらえるようだ。いずこも、たたづんで時を忘れてみたい宝だ。醸される気が全く違う場の数々だ。佐渡鉱山が文化遺産にノミネートされているらしい。浅田次郎のうきよごでの佐渡の石像群を思い出す。そっと埋もれている像は掘り起こしたりしたものかどうか。
読了日:7月17日 著者:
三好和義
リーダーの本義
の
感想
目頭があつい。1Fの吉田昌郎所長、伊藤忠の森本堯、オザル首相、根本博陸軍中将、エンジニアの本村洋、打撃コーチの高畠導宏、上杉謙信の本質が示される。各著作での感動を思い出す。出版社からのリーダー論の依頼に応えた本だそうだが、「この世の中でリーダーでない人など一人もいない」と禅の布教師笠倉玉溪の言葉を示し、組織に生きる人間論だ。正義、真理はかざしたとたん、不義、不浄に染まり始め、本義は、義に忠実な自分にしか宿らない、そうある人に人は靡くと言う事らしい。三菱自動車、東芝の経営者の不義の罪深さはひとしおと。
読了日:7月16日 著者:
門田隆将
国会議員に読ませたい敗戦秘話
の
感想
数々の秘話が語られていた。朝日はじめ親中親ソ知識人の商売に戦後が闇を深めていく様には、これしかなすすべなかったものかと思う。報道が報道でなければ、見えずに狂信してしまう。その結果は、軍国主義にも共産主義にも全体主義にも社会主義にも、同質の堕落と暴力を許してしまうようだ。吉村昭の様々な戦争の記録は、歴史を正しくみよと言いたいに違いない。自らの野心を騙る筆には決して踊らず、山本幡男の「事実を通じて真実を、事象を通じて本質を掴」む信念が日本人には問われている気がする。
読了日:7月13日 著者:
産経新聞取材班
戦争犯罪国はアメリカだった! ─ 英国人ジャーナリストが明かす東京裁判70年の虚妄
の
感想
クエーカー教徒の著者は、白人キリスト教徒の500年の侵略・虐殺を断罪している。この野蛮の根源は、聖書の民数記のモーゼへの神の宣託、異教徒は男も女も全員虐殺し、男を知らぬ処女は分かち合えとの教えによると。非戦闘員虐殺の戦争犯罪を大統領をはじめに国家が行い、違法と衆目一致しても、正義と言い切る根底には、この教義があると。500年の白人支配を打ち破ったのが日本で、大東亜戦争で東アジアは救われたと。ベトナム、アフガン、イラクなどみれば、今でも腑に落ちる。負けずに正しさを世界に発信せよと。
読了日:7月11日 著者:
ヘンリー・S・ストークス
日&米堅調 EU&中国消滅: 世界はこう動く国際篇
の
感想
中国の崩壊回避に日銀も財務省も手を貸していると。日銀総裁のダボス会議での資本規制を認めるような発言は、中国から資産をドルや海外資産に逃がす動き防止の支援となり、中国が望むところと。中共は長谷川氏は2020年までもつまいと。田中氏はしぶとくもたすと。北は米中握って中国が電撃で倒す可能性もあると。北のミサイルは中国に一番脅威と。北と中国の人脈は完全に消されたと。東アジアは中国の正体に離反する傾向と。米は世界一の産油国になり、人口も増加しつづけ、今後も堅調。再び、米金融界が世界を支配するようだ。
読了日:7月9日 著者:
長谷川慶太郎,田村秀男
戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書)
の
感想
明快でスッキリできた。高度成長できたのは360円レート、石油ショックはインフレの非要因、バブルを鎮めたのは日銀ではなく違法取り締まりの成果、低成長にしたのは日銀の利上げ、日銀の目標独立性を高めた責任は大蔵省の小賢しさ、小泉政権で経済が持ち直しそうになったのも元に戻したのも日銀。著者も後知恵でわかったと言うが、皆、勉強不足と。米英は学び手をうつが、日銀は自己固執と。つくづく日本の大手メディアは信用できないことを再認識。城山三郎の描いた通産省も実は役立たず、成長戦略など国がやっても進まず、民間のみができると。
読了日:7月7日 著者:
髙橋洋一
日本兵を殺した父: ピュリツァー賞作家が見た沖縄戦と元兵士たち
の
感想
2013年翻訳本。グアム、沖縄戦の12人の米兵証言録。吉村昭の殉国、同ノートの対極の証言録だ。地獄絵に言葉はでない。吉村の珊瑚礁も同構図のサイパンの惨劇だ。著者は、ニミッツを断罪。マッカーサー指揮なら飛び石進軍のごとく、包囲して捨ておき、ここまでの惨劇にはならなかったのではと。吉村と同様に鉄血勤皇隊の生存者の証言を録している。民間人を攻撃目標にするアメリカの戦術は、佐藤優と山内昌之によれば、リンカーンからで、厭戦醸成に市民・婦女子・老人を攻撃したと。著者の南京の被害者数引用は安易。
読了日:7月6日 著者:
デールマハリッジ
崩壊 朝日新聞
の
感想
朝日の記者の著者の執筆動機は、「一言の詫びもなく」「威張り返った、そして物事をごまかす態度に愕然とした」からと。虚報、変節を営々と繰り返してきたと。エリート大卒が共産主義の階級闘争による歴史発展ドグマを盲信し、親ソ、親中が社長・役員になり、主義・空論にふけり、事実を疎かにして視野狭窄と。新聞社を隠れ蓑にした事実上の左翼結社と。戦前の苛烈な戦争鼓舞記事は、日本を米英との戦争に仕向け、ソビエトや中国の共産党への攻撃を回避し、戦争で日本を壊滅させて共産化するスターリンと同じ意図と。許されぬ。もう買わず、読まず。
読了日:7月3日 著者:
長谷川熙
広島はすごい (新潮新書)
の
感想
「北陸資本主義」、「福井モデル」で地方の創意と地力に目を見張る思いがしていたが、広島も負けぬ熱情が回転してるようだ。仙台や福岡の人気には及ばないようなイメージが広島にはあるが、かなり「すごい」ようだ。熱帯夜に訪れた平和公園の火とドームの静けさが印象深いのだが、人々、企業は躍動的で少しも留まらないらしい。世界一のモノを造り出してきた人々と郷土であることがよくわかった。生まれる一級品に目を見張らされた。面白い。知らぬばかりで実は各地にすごいシリーズがあるのかも。
読了日:6月28日 著者:
安西巧
マイナス金利の標的: 世界はこう動く国内篇
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感想
マイナス金利の意味がよくわかった。新聞社が信用できない事を再度確認。日経もアテにならないと元日経の田村秀男談。マイナス金利でも円高になっているのが、崩壊目前に資産逃避する中国富裕層、国営企業幹部の日本国債買いによるものとは・・・。二人とも安倍総理に高い評価。普天間の仕切り直しの裏話にまたあの島がとりざたされていた。上手くいけばよいのだが。
読了日:6月26日 著者:
長谷川慶太郎,田村秀男
今世紀は日本が世界を牽引する
の
感想
2016年1月の本だ。春窮絶糧の歴史があるそうだ。反乱は春に起きるそうだ。食いつぶして越冬し、種を失い、反乱に追い込まれると言う図式だそうだ。中国が破綻前夜で、経済依存の韓国も逃れられず、北が破綻した時の備えはたりず、一方、中国は越流入防備を固めてあるそうだ。反日の愚を反転させた理由はこの行き詰まりにあると。重電、インフラ、技術特許、ロボット、医療産業に日本は秀で、易々とは真似できぬ。中韓の破綻には何もしてはならぬと。戦前の轍は踏むなと。さて、今年、どうなるか。
読了日:6月25日 著者:
長谷川慶太郎
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