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化学で「透明人間」になれますか? 佐藤健太郎 2014年 人類の夢をかなえる最新研究15 小説宝石に連載された記事が新書になったもので、化学ものですがとても楽しい読みものでした。著者の「ふしぎな国道」も奇妙な話が緻密でとても面白かったのですが、この本も化学が苦手な者でも興味が湧いてくる生き生きした研究者の話で面白かったです。 金、ダイアモンド、花粉症、風邪、肌の美容、痩身、肥満、宇宙エレベータ、癌、温暖化、エネルギーなどなど、研究者の先端努力がなんとなく理解できたような気になれました。なんだか未来が灯るような気になれ、気持ちの良い読み物です。暗い社会科学本をたて続けに読んでしまったので、明るい自然科学に気分が晴れました。
Jan 29, 2015
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23.01.2015 - Theaterhaus Stuttgart75 Jahre Eberhard Weber mit der SWR Big Band, Gary Burton, Jan Garbarek, u.v.a.
Jan 28, 2015
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綻びゆくアメリカ ジョージ・パッカー 2013年 The Unwinding An Inner History of the New America タイラー・コーエンのAverage is Overでも衰退著しい都市として名の上がったオハイオの鉄鋼の町ヤングスタウンの衰退とその中で暮らす人々の負の循環がよくわかりました。黒人一家の世代を跨いだ勤勉と堕落と再生の格闘の歴史、勤労の曾祖父母時代、薬物・アルコール漬けの親の世代、工場閉鎖、失業、街の荒廃、コミュニティーの消失と続いた負の連鎖が記録されています。コミュニティーオルガナイザーとして荒廃した街の再生に取り組み始めた黒人女性の母としての強さ・勤勉さが、空洞化するアメリカの現実の中で可憐に見えます。 崩壊した家庭環境の中から這い上がってストレートな話をする才能を活かし、テレビ司会者として、視聴者の心をつかみ成功をおさめた黒人中年女性もとりあげられています。この人の成功は、多くの人々が心と家庭の荒廃と格闘しているとの現実からきた共感の表れのようです。 底辺の人々の様子を緻密に描いた作家も紹介されています。酒浸りと再生の浮沈を繰り返した後、成功をおさめ、50才で早逝するわけですが、描かれた作品が人々に受け入れられるのは、アメリカの共通する悩みが現実にあるからなのでしょう。 オバマの登場は、多くの人々に再生の期待を持たせたようですが、今では、多くの失望も与えてしまったと言う事のようです。今でも人気のあるクリントンについては、共和党議員で下院議長のニュート・キングリッジが先頭に立って女性問題を糾弾したそうですが、クリントンは逃げおおせました。クリントンは、それ以前からもホワイトハウスの別のボランティアとの仲は周知だったそうです。更に、指弾したキングリッチにしても妻以外に発覚したそうです。 寺島実郎さんによるとクリントンは州知事時代からの話で色情狂が核兵器のボタンを抱えている恐ろしい事態であったということだそうです。 なんとも、先進国とはわからなくなります。
Jan 26, 2015
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Average is Over タイラー・コーエン 2014年 Powering America beyond the age of the great stagnation 大停滞を乗り越えてアメリカを強くする方法 コンピュータシステムが賢くなり、膨大な人間の行動・反応のデータを高速演算して人間知能では知りえないことをはじきだして、商売をシステム化し儲ける事業が急成長しているらしい。アメリカは、Sience, Technology, Engineering, MathematicsとMarketingが重要な経済社会だそうだ。 人材目当ての企業買収が加速していて、転職することをacqhiredと言い、買収と雇用を合わせた造語だそうだ。求められる技能労働者は、真面目で正確で長期安定的で協調的で士気が高く、勉強し続けられる能力を身に着けた者だそうだ。そのような人が多いはずもなく、低技能の人は有期雇用、低賃金雇用、単純労働、直接的な個人サービス労働に従事せざるを得なくなってるそうだ。 労働市場は二極分化し、三人に一人はフリーランスで食ってくのがやっと。起業家が激増しているが、雇われないので仕方なしに起業、例えば、弁護士をくびになり屋台をひくと言うようなことらしい。 賢いコンピュータシステムを使いこなせる技能の高い人々、博士号をとった人々は年収がこの十年で増加し、修士も学士も専門学校出も年収は減っていて、労働参加率は1980年代以降最低の63%になってるらしい。年齢25才から64才の人々で働いていない人は、18%に達し、1960年代の倍だそうだ。障害年金受給者は10年前500万人が、現在820万人までになっているそうだ。刑務所に入っている人は、200万人を超え240万人いるらしい。因みに日本は、6万4千人。 男性の給与は、この40年間で28%減ったそうだ。アメリカの教育省の長官が17歳から24歳の人で4人に3人は、軍隊に不適格者(麻薬、犯罪歴、借金返済滞納、肥満など)と言ったらしい。アメリカは、企業にとって雇いたくない人が増えていると。 それでもアメリカは富裕者が増え15%までになると著者は言う。残りは規格化された単純労働で低賃金となると。標準的にシステム化された事業で中間層は無くなると。規律された仕事を嫌がるアメリカ人はその手の仕事をいやがり最低限の宙ぶらりんのフリーな生活で満足する層が出現しているそうだ。これはアメリカに限った話ではなくベルリンでも増えていると。ベルリンでは5人に一人が福祉の世話になってるがそれはそういう生き方を選んでいると。野心と言う言葉が躊躇される価値観の層らしい。 著者は中南米の移民を受け入れて人口を増やして就労させ、下部構造とし、ロボット、人口知能を装備した生産拠点がアメリカにリショアし、高技能者が人口知能と協業して富裕層となり、軍事力を維持し、国土と資源と技術を保有するアメリカは、「北米の世紀」を実現すると予測している。 低賃金層は家賃の安いテキサスなどの地域へ移住し、そこそこの可処分所得を確保して生活し、地域格差、所得格差、能力格差が二極化した超実力社会でアメリカのユートピアが実現すると言う。 何とも後味の悪い話で勉強になったが、アメリカは、チャールズ ファーガソンが言う通り、知識人からしてPredator Nationのようだ。
Jan 24, 2015
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夕張再生市長 鈴木直道 2014年 課題先進地で見た「人口減少ニッポン」を生き抜くヒント 泣けてきます。弱い意志が逆境の中で強い意志に変わっていき、努力を重ね、人の意気に応えるまでの青春に嬉しくなります。話し合いと相互理解の実践、具体策の提示と説明と修正と合意づくり、生活基盤づくり、未来への布石の優先など、まともな政治があることに救われる気がします。 起業誘致、直談判、廃校活用、メタンガス発電エネルギーの地産地消、祭りの自主再開、コンパクトシティーへのリストラ着手、もてるものの活用(ぼた山、メロン、大自然、交通立地)、老朽大病院のリストラなど具体的な話をみせてもらえます。いずれも住民との相互理解なくしてなしえないことが熱く語られています。 2008年に財政破たんし、353億の借金を税収8億の市が返済し続けているそうです。先達のつけと向き合いはじめ、子孫に残さないとの厳しい選択を市民がはじめた様子は感動的です。 行政知識・能力・経験、こころ意気、忍耐力、スポーツマン精神、人への尊重心がにじみ出ていまして、逆境と努力と幸運と人々の変化が爽やかです。 成功を祈らずにはおられません。
Jan 21, 2015
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フォルトナの瞳 百田尚樹 2014年 主人公の性格設定は、内向、繊細、器用で、自縄自縛の人生をおくってきた青春の盛りを超えた年頃と、多崎つくるに似ている気もしまして、舞台も「類、種、個」の種の葛藤のない同じような設定で、象徴的道具立てに高級車も登場し、なんだか似たような素材と思ったのですが、天涯孤独な生い立ちと不安定な就業状態との設定が全く違うものでした。 読み終わると、気持ちのこもったいい話でした。目を背けずに生きること、生い立ちで大切にしてきたものを大切に生き続けること、後悔しないこと、命を尊んで利他に尽くし、奪わぬ事など、類としての基本を現代世相を舞台にありえぬことをありえるかのように読ませてもらえました。清涼小説でした。ゼロや海賊とは異次元の葛藤話でしたが、理念は同じかと。
Jan 20, 2015
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大局を読むための世界の近現代史 長谷川慶太郎 2014年 明治、大正、昭和、平成にわたって、政治・経済体制、技術力、国防力からみて盛衰を分けた理由が見事に総ざらいされています。行末を計るための物差しを再整理できます。 日清、日露戦争の薄氷の勝利は、江戸時代の人材育成の成果と、明治期の広く海外の知識と国際情勢を真摯に学んだ成果が結実したことになるようです。その後は、独善的で軍部独裁色を帯びて、海外の先達技術の勉強を怠り、丸暗記の軍人が育ち、知識不足の凡庸な将校ばかりとなり、戦術能力が劣っていったそうです。 日英同盟で英国にお世話になっていたのに第一次世界大戦で日本陸軍大臣は、ヨーロッパ派兵を拒んで、英国民に驚愕を与え、1991年の「信頼できない友達」という英国の本でも日本陸軍の派兵反対は忘れられていないそうです。この時、ヨーロッパ戦線に参加していれば、惨状を見て近代戦、国家総力戦の何たるかを学び、その後の歴史は変わっていたのではと著者は言います。 スターリンは、粛清の限りをつくし、独裁体制を強固にした分、ソビエトから人材が払底してしまったそうです。一党独裁体制のもとで米国との冷戦を経て技術・経済格差は拡がり、勤労意欲の失われた国民は、ウォッカに溺れ、1985年には、アルコール中毒死が80万人を突破し、ゴルバチョフが手を打つ事態にまでなっていったそうです。 東ドイツも同じように困窮し、ソビエトに支援要請するもゴルバチョフに見捨てられ、遂に崩壊し、ソビエト自体も1991年には崩壊してしまったそうです。 この図式は、歴史の必然で、北朝鮮と中国にそのままあてはまるそうで、中国からの年50万トンのガソリン、食糧等の無償支援が減り始め、北朝鮮は、見捨てられ、崩壊は時間の問題となり、崩壊後、2年で中国も崩壊するのが必然だそうです。 人民解放軍と中国共産党の間には、利権をめぐる権力闘争と軋轢が実はあるそうです。人民解放軍はシャドーバンキングに加担していて、不動産バブル、理財商品のデフォルト、民族問題発生とシナリオは進行しているそうです。共産党一党独裁で社会主義市場経済を推進した結果、貧困格差が拡がり、崩壊シナリオがはじまっているそうです。 人民解放軍の兵士は軟弱な育ち方をした一人っ子が70%を占め、金持ちは、160万円くらいを政治委員に払って履歴書を買戻して除隊し、貧乏人の子弟が残り、人民解放軍に不満が充満しているのが実態だそうです。 中国も韓国も北朝鮮も臆面もなく日本の力を引き出そうと必ずしてきますが、巻き込まれず、彼らが連邦国家、民主国家をつくるのを静観すべきと著者はいいます。 米軍のオスプレイの沖縄配備は、内陸部にいる米国人を中国崩壊の混乱の中で航続距離の長いオスプレイで救い出す準備でもあると著者はいいます。日本人は、中国に13万人もおり、問題であると警鐘してます。 静かにあしぬきせよと。
Jan 19, 2015
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しんがり 清武英利 2013年 山一証券 最後の12人 1997年11月、創業100年を迎えて自壊した山一証券。会社清算の最中、原因となった簿外債務隠し手口と首謀者を傍流にいた社員達が調べ上げ、翌年4月に調査報告書として公表し、私利私欲に暴走した歴代社長とその取り巻き達の組織犯罪を断罪した事績が明らかにされている。 マスコミは本質を何も掴めず、扇動報道に堕落している中、社員と会社を大切にする一念で事実を調査し、公にした正義感と誠実さに心うたれます。社長就任後、三か月で自主廃業を大蔵省に迫られた野澤正平氏が、記者会見で号泣した意味がよくわかりました。「社員は悪くない、再就職をできるようにお願いします」と社会に訴えた姿は異様でしたが、こみあげる抑えきれぬ無念がよくわかりました。 法人部門が、客と「にぎり」と呼ばれる癒着・損失補填で数字を伸ばし、「とばし」と呼ばれる右肩上がり前提の不良資産隠しでの粉飾。自身と手下の出世欲と驕りがそれらを加速させて暴走し、仕事と会社を穢していく様は、手柄ほしさのマスコミや、保身のすぎる司法でも繰り返されている人間の性のようです。 歴代社長とその取り巻き役員の不正、ぐるになっての正義の排除、次代の柱になれる器の人物の放逐が、13年にわたって実行されていったそうです。社と仕事を大切にした大多数の社員を裏切り、会社の未来を喪失させていったようです。 この本は、志願して敗走最後尾に残った気骨ある人が良心を全うする記録です。爽快とまではなりませんが、救われる爽やかな意気の記録でした。描かれたのは、浮利を追った者と利他を貫いた者の実像です。
Jan 15, 2015
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殺人犯はそこにいる 清水潔 2013年 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 以前、文芸春秋や報道番組で見聞きしていましたが、改めて全体を読み、警察、検察、裁判所、報道機関の深い闇に驚愕しました。痛々しい被害者の救済、犯人の検挙よりも、自己の組織を守ることを優先する権力構造に堕落の極みをみるようです。 司法が真実と正義を求めることの障害になる国になりさがってしまったのでしょうか。警察や検察は、武道で精神の鍛錬をしているはずですが、本書に登場する警察、検察、裁判所のエリートたちは、自己保身の欲に負けてしまっているようです。 冤罪を生んだDNA型鑑定の不備を隠蔽するため真犯人を放置している司法の態度は、犯罪に等しいと思いました。足利冤罪事件、狭山事件再審棄却、東電OL殺人冤罪事件などは司法による犯罪です。これらをさばいた東京高裁裁判長は、退官後、瑞宝章をもらっていますが、取り消しが妥当かと思います。冤罪を生んだ者、加担した者に責任をとらせているのでしょうか。 飯塚事件の事実を知ると、司法では自浄できそうにない気がします。権力に対抗できる第三者組織が司法を監査・懲罰するようにでもしないと権力者の矯正はできないような気がしてきます。 著者の職業倫理と正義感には感服します。ノンフィクションの真髄のような本でした。
Jan 10, 2015
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米国と人民解放軍 布施哲 2014年 米国防総省の対中戦略 否応なく突きつけられている軍事情勢がよく解りました。自国の利益を最終的には優先して自国の利益至上で邁進する同じような価値観のアメリカと中国。そして対峙しているアメリカ軍と中国軍。その攻撃的な武器の準備状況がよくわかりました。 その膨大さには、日本の右傾化云々以前に、アメリカもさることながら中国の侵略願望と軍国化の方がよほど極右で軍国的であると思われます。 軍事物を読むと、合理的で科学的な印象を感ずることはありますが、細部にまで論理的で戦術的な分析・解説がなされるほど、目的と手段の逆転、疎外された精神を感じてしまい、危うい自己陶酔型の試みを感じてしまいます。 本書でも、著者は、米軍関係者に開戦の分析はあるが、終戦の検討が欠けていると指摘しています。また、中国軍の最高位の委員会では、文民は習近平ひとりで、他は皆、軍人だそうです。 著者は、軍人達が論理的に構築してみせる軍事戦略も、その立案動機には、予算取りや権勢掌握野心が潜んでいる可能性があると指摘しています。中国は、国内の不安定要素が外に対しての攻撃になる危険があり、外国との間の「成果」で国内の勢力争い、予算どりに優位に立とうとする輩がでるそうです。国内勢力争いに外交問題を起してしまう国でもあるようです。 やはり、「文民統制」が最期のよすがなのでしょうが、いずこでも危ういようです。 著者が本書で解説してみせてくれる、絶え間なく増強され、訓練を重ねているミサイル・潜水艦・空母・駆逐艦・戦闘機・爆撃機・電波兵器・サイバー兵器・宇宙兵器の数々には、反吐がでてきてしまいそうです。 米国太平洋軍 32万人 艦船180隻 航空機1900機 米国国防費 52兆4000億円 空母 11隻 1隻1兆円 搭載物を入れると1隻3兆円 1隻の年間運用費1500億円 攻撃型原子力潜水艦 53隻 毎年2隻増ペース 太平洋の海底にソーナー網を敷設済み 軍事衛星 100基 軍事利用商業衛星 150基 中国人民解放軍 226万人 内 海軍 26万人 空軍 30万人 国防費 11兆5232億円 対艦弾道ミサイルを内陸に配備して米国太平洋艦隊に対峙 通常潜水艦を多数増強し、ミサイル発射台として配備 因みに自衛隊は、23万人 内 海上4万 航空4万 国防費 4兆7838億 アメリカは、既に海洋国家となり、中国もそれを目指しているそうです。その動機は、国益のための海上支配だそうです。 アジア太平洋地域は、米国の輸入元の第1位、輸出先の第2位で、1兆ドルの取引があり、アメリカ経済成長のエンジンとなる地域だそうです。 中国は、耕作可能地が国土の15%しかなく、大豆、トウモロコシなどは国内で賄いきれず、大口の輸入国だそうです。石油も国内生産では追いつかず、中東からの輸入は欠かせないそうです。 インド洋からマラッカ海峡を通る貨物は、世界の貨物の50%を占めるまであり、石油の世界輸送の70%にまでなるそうです。 東南アジアの海で欲の動機が形成されるのはわかりましたが、奪い合いがあってはならないことは、もはや自明です。
Jan 8, 2015
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Predator Nation チャールズ・ファーガソン 2012年 強欲の帝国 ドキュメンタリー映画でアカデミー賞をとったインサイド・ジョブの監督だそうだ。この本の狙いは、著者曰く 悪事を行った者が一人も罰せられず、不正蓄財も没収されていないので、金融犯罪を訴追したい。 略奪的金融の台頭は、アメリカでの寡占勢力の台頭の中核をなしていて、この道徳心のない寡占勢力がアメリカの教育・技能・インフラ・産業を低下させ、アメリカを出来レースの国にしてしまったことを明らかにしたいそうだ。 二大政党制も複占政治体制で、どちらの政党もロビー活動、便宜供与、特権、選挙資金などで巨額の金を受け取り、ともに、金融、有力産業、富裕層に魂を売り渡していると。ブッシュもオバマも金に依存していて同じだそうだ。価値観の対立はしているが、金の面では両方とも協働可能にしているそうだ。 レーガンもクリントンも金融規制緩和でブッシュも踏襲、オバマも背信で皆愛想がつきたそうだ。財務長官も回転ドア人事の典型でぼろもうけしているそうだ。ルービンは、ゴールドマンサックス、財務長官、シティーと渡り蓄財、サマーズも財務長官後ハーバード学長になるが、企業の顧問で巨万を得、学内から問責で辞任。 FRB議長のアラン・グリーンスパンもバブルの時には、住宅ローン商品の利用を推奨していたそうで加担していたと。 サブプライム問題の真実は、クズ証券での詐欺を銀行、保険、格付け会社が先を争って行った犯罪だと。住宅ローンの返済能力のない者に値上がり益で返済とだまし、貸付を促進し、資金を供給し、債権を証券化して、でたらめの目論見書と格付けで販売して、リスクを転嫁し、資金を回収し、執行役も取締役もクズを承知でトレーダーを狂奔させ、執行役も取締役も、巨額のインセンティブ報酬を得て、倒産前に転職し、倒産しても痛みなく、逃げおおせたそうだ。 本書で暴露されている悪事にはうんざりしてしまい、目をそらしたくなるほど。本の題名の意味がよくわかった。
Jan 4, 2015
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深海の使者 吉村昭 1973年 昭和17年から20年までに繰り広げられたドイツの最新兵器の技術情報入手ための潜水艦による輸送記録に圧倒されます。100メートルを超え、100人規模の乗員を要する伊号潜水艦、小ぶりながらすぐれた建造技術と最新レーダーを備えたUボート、果敢に実用化された長距離飛行機の活動記録と悲劇が丁寧に披露されます。 それらを駆使してシンガポールからヨーロッパまでの喜望峰を回る大航海の隠密行動に果敢に挑み、絶命していった優秀な技術者や軍人に悲しみがこみ上げます。交戦ではなく、最新技術資料、最新兵器、優秀な技術者、要人、不足物資などの輸送を使命に派遣された人々の戦いが克明に明らかにされています。 伊号第30潜水艦 往復に成功するもシンガポール港にて機雷で沈没 U180号と伊号第29潜水艦 インド独立運動家チャンドラ・ボーズの日本訪問達成、インド洋で移乗 U511号 日本に譲渡のため呉まで成功、邦人要人日本移送 伊号第8潜水艦 往復に成功し、呉まで成功 伊号第34潜水艦 往路マラッカ海峡にて英国潜水艦に雷撃され沈没 U1224号 日本に譲渡のため伊号第8号潜水艦で日本から派遣された50名が操船、 大西洋で米軍護衛駆逐艦攻撃により沈没 伊号第29潜水艦 復路シンガポール着後、日本への帰路バリンタン海峡にて 米国潜水艦魚雷により轟沈 伊号第52潜水艦 往路、到着目前のビスケー湾にて途絶、沈没推定 U234号 潜水艦とジェットエンジンの最新技術を学んだ日本の技術者2名の帰国と 独空軍司令の日本赴任 大西洋上でドイツ降伏となり、米艦に投降。日本人2名は艦内自決 半藤一利の解説によると、吉村昭の最後の戦史がこの小説で、これを最期に戦史を書かなくなったそうです。理由は、生き証人に取材できた率が35%しかなく、戦艦武蔵の時は関係者90%に取材できたことから、関係者がなくなっていることに愕然としたためだそうです。事実を関係者から丁寧に聴取して小説に仕上げる著者の手法から、それがかなわなくなり、戦史の絶筆を決めたようです。半藤一利いわく、潔い戦史の絶筆は「でたらめの歴史や戦記を書いて、それが何になるというのか」との吉村昭の警告ではないかと。 朝日新聞の偽歴史報道などもってのほかの事でしょう。この本の中に朝日新聞がでてきてまして、東京-ニューヨーク間無着陸飛行記録の樹立をめざし、朝日新聞が陸軍に働きかけ、戦況から計画は流れるものの、陸軍と朝日新聞が協力して新型飛行機を開発し、昭和18年シンガポールからドイツまでの要人輸送飛行が実施され、失敗したそうです。機体は優秀で非公認ながら昭和44年まで破られなかった無着陸飛行記録を新京、ハルピン、白城子巡回飛行で達成したそうです。 1971年の吉村昭の「総員起し」の伊号第33潜水艦がトラック港で修理中に沈没したこと、山崎豊子の「二つの祖国」のモデルとなった日系米国人伊丹明もでてきて、興味深かったです。
Jan 4, 2015
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