JEWEL

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浅葱色の若人達 2

捏造設定あり、苦手な方はご注意ください。

勇の遺体を抱いた歳三は、近所の住民から通報を受けて駆け付けた警官が彼を勇の遺体から引き剥がそうとするまで、“彼”の元から離れようとしなかった。

「嫌だ、勝っちゃん、嫌だ~!」
「落ち着いて下さい、落ち着いて!」

目の前で親友が遺体袋に入れられ、救急車で搬送されてゆく姿を見た歳三は酷く取り乱し、彼が乗せられた救急車の後を追った。

「嫌だ、勝っちゃん、俺を置いて逝くな!」

降りしきる雨の中、血塗れのコートを着て夜の街を走っている歳三の姿を、道を歩く人々は怪訝そうな表情を浮かべていた。

―何あれ?
―ドラマの撮影?
―にしては血のりがリアル過ぎじゃない?

彼らは時折そんな事を言いながら、家路を急いでいた。
歳三はわき目も振らず夢中に走っていたので、突然車が猛スピードで突っ込んで来て、避けられなかった。

(勝っちゃん・・)

薄れゆく意識の中で、歳三は勇を呼び続けた。

「土方君、土方君!」

うるせぇ。

「土方君ったら、起きてよ!」

うるせぇ、俺は眠てぇんだ、寝かせろ。

「土方君~!」
「あ~うるせぇ!」

苛々しながら歳三が目を開けると、そこは病院のベッドの上だった。
起き上がろうとした彼だったが、足がギブスで固定されている事に気づいた。

「三日間、君は意識を失っていたんだよ。左足は複雑骨折、肋骨を三本骨折しているから、暫く入院が必要だね。」
「入院だと?悪ぃがおあれはそんな事をしている暇はねぇ!」
「土方君、いい加減にしたまえ!今回の事件で君が一番辛いのはわかるが、もう近藤さんは居ないんだ!」
「勝っちゃん・・」

歳三の頬から、一筋の涙がつぅっと静かに伝い落ちた。
何とか病院を大鳥が説得し、歳三は特別に病院から数日外泊許可を貰い、勇の告別式に参列した。

「トシさん、よく来てくれたね・・」
「ふでさん・・」
「勇はあんたが来るのを待っていたんだよ。さぁ、早くあの子に焼香しておやりよ。」
「はい・・」
「トシさん、疲れたろう。はい、お茶をどうぞ。」
「源さん、ありがとう。」

勇の告別式が終わり、歳三が火葬場のロビーの窓から裏庭の桜を見ていると、そこへ監察医の井上源三郎がやって来た。

「勝っちゃんの死因は?」
「トシさんの見立て通り、失血性ショック死だったよ。」
「そうか・・俺が駆け付けた時、勝っちゃんにはまだ意識があった。俺がもう少し勝っちゃんを助けてやれば、こんな事には・・」
「余り自分を責めては駄目だよ。それよりも、早く身体を治す事だけを考えて。」
「あぁ・・」
源さんからそう励まされ、慰められても、歳三の陰鬱な気分は晴れなかった。
「犯人の目星はついたのか?」
「いいや。だが、勇さんの爪の中から、犯人のものと思しき皮膚片が検出されたよ。それで、前科者のリストからDNAデータを検索したが、ヒットしなかった。」
「そうか。」
「現場周辺の防犯カメラの映像には、一人の少年と勇さんが話している姿が映っていたよ。」
源さんはそう言うと、タブレットに保存していある映像を歳三に見せた。
そこには、中学生と思しき少年が勇と何かを話した後、廃工場へと向かっていく姿が映っていた。
「こいつの身元をすぐに洗わねぇとな。」

そう言った歳三の瞳には、光が戻っていた。

少年の身元は、すぐに割れた。

彼の名は、桂小五郎。

父親を警察官僚に持つ、エリート進学校に通う優等生である。

彼は、あっさりと勇殺害を自供した。

「残念だね、刑事さん。僕はまだ少年法の庇護下にある。あなた達が僕をどんなに追い詰めようとも、僕はすぐに野に放たれる―“元少年A”としてね。」
「このガキ、ふざけやがって!」
「また会える日を、楽しみにしているよ。」

少年―桂小五郎は、そう言った後、歳三に薄ら笑いを浮かべていた。

「畜生、あのガキ、今度会ったらただじゃおかねぇ!」
「トシさん、今の法律では我々は彼に対してはどうする事も出来ないよ。」

歳三は親友を亡くした後、その悲しみを埋めるかのように仕事に精を出した。

そんな、暮れが押し迫ろうとしている師走のある日の事。

「待て!」

歳三は相棒の原田左之助と共に、スーパーでスナック菓子を窃盗した中学生を追っていた。

「待ちやがれ~!」

鬼のような形相を浮かべながら追ってくる歳三を見た中学生はパニックになり踏切の遮断機が下りている事を確認せずに線路の中に入ってしまった。
原田が緊急停止ボタンを押したが、間に合わなかった。
電車にはねられた中学生の少年は、即死だった。

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