7月22日(木)
対談岡井隆X穂村 弘(3)
(平成27年4月14日:NHK金沢市全国短歌大会)
岡井 隆 わたしの短歌史―その強さと弱さの魅力(3)
仮説をたて仮説をたてて追いゆくにくしけずらざる髪も 炎 え立つ
穂村 普通にこの歌の状況を読むと、「不精だ」となる。だけどこの
歌、ものすごくかっこいいんですね。まるで、心理を追究する魂が髪
の毛を逆立てた、みたいな、そんなふうに読めるんです。なぜ岡井さ
んが短歌を作るとかっこよくなるのか。
岡井 私自身としては思い出のある歌です。五、六人の人間が狭いお
粗末な研究室の中で、ある病気について、どうすればそれを叩くこと
ができるかと、毎日話し合いををしながら研究を進めているわけです。
世界中の文献がどんどん集まってきます。「多分あそこは、 A から B
にいっている。だから A と B は関係があるんだ」というような仮説
を立てるのですが、その仮説がだめな場合は、「あの仮説は間違って
いたんだ。じゃあ A から C という考え方に変えようじゃないか」と、
毎日論議しながらやっていくわけです。研究室の中の人は誰一人と
して髪の毛をなでつけている人なんていない。昭和で言うと三十年代
かな。
穂村 僕には、そこまで何かを追究したという記憶がなくて、気圧さ
れるんです。
岡井 それはまた後で、あなたのことを聞きましょう(笑)。
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