ジョナサンズ・ウェイク

ジョナサンズ・ウェイク

火車(宮部みゆき)



この作品は「山本周五郎賞」を受賞していて、普通にミステリーとして読んでも面白い。主人公の刑事は復縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すこととなった。彰子は自らの意思で、しかも徹底的に足取りを消して失踪。なぜ彼女はそこまでして姿を消さねばならなかったのか。その背後には、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生が隠されていた。
様々な複線をたどりながら点と点を一つに結んでいく過程は、見事なものである。次々に暴かれる意外な展開。彼の事件への好奇心は読者のそれと一致しページを進む手が止まらなくなる。物語の行方は・・・?!

もう一つの読みどころはクレジットを主人公とした読みかただ。大手の都市銀が学生向けのクレジットカードを出して20年以上が経つが、中学・高校・大学のどこでも、カード教育は行われていない。その一方で一歩外に出ると「見境なく気軽に貸してくれる」場が提供されている。そんな今だからこそ読んでおきたい一冊だ。(2004/12/30 読了)

〈新潮文庫〉 火車

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