ジョナサンズ・ウェイク

ジョナサンズ・ウェイク

ちいさなちいさな王様(アクセル・ハッケ)


「おまえのところのことについて、ちょっと話してくれるかね」

ぼくは人間の生い立ちについて当たり前のことを話す。
「人は生まれたときはとても小さくて、歳をとるごとに段々大きくなっていき、やがて死がやってきて、ついには無くなってしまうんだ」

「そんなの非論理的だな」
王様の世界では、生まれたときが一番大きくて何でも知っている。起き上がると、もう文字も書けるし、コンピュータのプログラミングだって出来る。だが、歳をとるごとに少しずつ色んなことを忘れていき、小さくなるほど多くのことを忘れていく。そして赤ん坊のように小さくなった彼らは、ある日、仕事をもうしなくてもいいよ、と解放の宣言を受ける。

王様は言う。
「おまえたち(人間)は、はじめに全ての可能性を与えられているのに、毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。年を重ねていくにつれて、何か別のものになりたくてもなれなくなる。こう考えると、大きくなるというより、小さくなっていくと言ったほうがいいのではないか?」

正直、ドキッとした。

ちいさなちいさな王様

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