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「TDLでのバイトの話」

もう10年以上前になりますが、大学2-4年時にTDLでアルバイトをしたことがあります。
理由は自宅から近くて時給も悪くないからでした。
今はどうだか知りませんが、当時はアルバイトとして採用されるのは簡単でした。
TDLで働いている人の80%くらいはアルバイトのはずで、
ワタクシの記憶が正しければ、10000人くらいはキャスト登録されていたと思います。
TDLでは、バイトを「キャスト」と呼びます。

キャストの仕事は、いろんな意味で本当にきついです。
TDLは、お客様に「夢」を売るのが仕事なので、ナメているキャストは即クビになります。
つまり、大量採用してドンドン使えない奴をクビにしていく方式なのです。
はっきり言って、キャストの変わりはいくらでもいます。
そうなると逆に、生き残ったキャストは人間的にしっかりした人が多いです。

仕事の前に、頭髪検査や爪の検査も毎日あります。
通路で他のキャストとすれちがったら、知らない人でも、必ず「こんにちは」と挨拶をしなければなりません。
ルールは厳しいですが、反抗心旺盛な人はTDLの仕事に向きません。
何故なら、お客様に対して笑顔で献身的にならなければいけないからです。

前置きが長くなりましたが、ワタクシが配属されたのは、ガイドに載っていない「会員制レストラン」でした…。
ワールドバザール(レストランやショップが密集しているところ)の2階に、その会員制レストランはあります。
レストランの窓からはシンデレラ城がよく見えます。

そのレストランの会員になるためには審査があります。
ステータスがないと、お金を出しても会員にはなれません。
会員は一流といわれる有名企業が多く、個人なら弁護士とか開業医です。
希少性を売りにしているので、一般人はダメです。
もちろん僕もダメです(苦笑)。
レストランは、完全予約制のフランス料理専門店で、お酒も飲めます。
TDLは禁酒のはずですが、ここだけは例外なのです。

お客様は、お偉いさん、政治家、芸能人などが多いです。
ちなみに、芸能人は法人会員の紹介で来店します。
大物ではゴルバチョフが来たことがありました…。
そのときはSPが全ての料理を毒味していました…。
あと、芸能人では郷ひろみ夫妻、五木ひろし夫妻、研ナオコ一家、ルー大柴などは覚えています。
一般の人でも会員の紹介があれば、来店できます。
ちなみに、店の入口はカモフラージュされているので、まずわからないと思います。

レストラン内には、2つのグループがありました。
調理専門の「キッチン」と接客専門の「フロアー」です。
この2つのグループは、まるで水と油でした…(汗)。
完全予約制でフランス料理のコースがメインなので、料理を出すタイミングが重要です。
そのため、「キッチン」と「フロアー」は連絡を密にして協力しなくてはなりません。
冷たい料理は、予約人数分だけ前もって作っておき、冷蔵庫に入れておけばいいのですが、
温かい料理の場合、時間が勝負なのでそうはいきません。
フロアーがお客様の食べる速さを計算して、キッチンに合図を送るのです。
ベテランのキャストなら、時間などのコツがわかりますが、新人キャストには難しいので、よくシェフに怒鳴られてしまいます。
根性がないと、すぐに辞めてしまうので、キャストの離職率は高い職場でした…。

ワタクシが配属されたのはフロアーでしたが、接客はやりませんでした。
何故なら、やりたくなかったのです(笑)。
大学生のくせにバイト三昧だったワタクシは、週6日、7時から14時まで、
サブウェイというファーストフード店で接客のバイトをしていました。
社員は店長だけなので、ワタクシが午前中のサブマネージャとして店を仕切っていました(笑)。
TDLのバイトの勤務時間は16時から「客が帰る」までだったのですが、1日中接客の仕事はイヤだったのです。
そんなわけで、ワタクシの仕事は裏でコーヒー、紅茶、ジュースなどの飲料係り(ラッキー)。
ジュースは、果物を搾って人数分の100%生ジュースを作りました…。
それは膨大な量の果物でした…。
コーヒー、紅茶は濃すぎず薄すぎずの職人技が必要でした…。
暇な時間は銀食器を磨いたり、グラスを磨いたり、ビール運びの労働をしたり、とにかくオイシイ仕事でした(笑)。

ワタクシは配属の「運」に感謝しました…。
これが一般レストランだったら、休む暇なんかなく接客も裏方も、ずっと延々と労働のはずです(笑)。
ところが、会員制レストランは、営業はランチとディナーだけなので、間に空き時間がありました。
空き時間といっても、本当に休んでいるわけではありませんが、気を休める時間があるのは最高でした…。

当時は500時間働くとTDLのパスポートが2枚、ボーナスでもらえました。
このパスポートは例の「影武者ちゃん」たちへの接待に消えることが多かったですが…(涙)。

そして、何よりの楽しみがフランス料理のツマミ食いでした。
例えば、6名予約が入っていたとします。
ところがドタキャンで5名しかこないときは、前もって用意してあった1名分の冷たい料理が余ります。
シェフは「余った料理は、必ず捨てろ!」と言います。
シェフたちは自分たちが作った料理を、他の社員やバイトが食べることを非常に嫌がるのです。
しかし、フロアーの社員は「食べ物を捨てるな。隠しておけ!」と言います。
ワタクシも食べたいので、いや、食べ物を粗末にしてはいけないので、
余りものや、客が手をつけずに戻してきた料理は捨てずに隠しておきました(汗)。
特にバイキングスタイルのパーティの時は、裏に戻ってきた大きなトレイに残った料理を、
他のキレイな皿に移しかえて隠しておくのが、ワタクシの重要な任務でした…(汗)。
シェフたちはデザートを出した後、当番以外は帰ってしまうので、
シェフたちが帰ったあとにフロアーのメンバーで隠しておいたフランス料理を食べました…。
でも、フランス料理はワタクシの口には合わないので、フォアグラもキャビアもあまり美味しいとは思いませんでした。
とにかく、色々な料理を無料で(隠れて)食べ過ぎたので、未だにプライベートでフランス料理店に行ったことがありません(汗)。

そ、それは、「フランス料理はタダで食べるもの」というプログラムが脳内にインプットされたせいです…。




また、大きな声では言えませんが、バイト先の社員はギャンブラーが多かったです。
競馬なら天皇賞1レースに30万円を投資して、40万円を回収するという荒業を使う人もいました(大汗)。
資金が回収できなかったときは、毎日食堂で不機嫌な顔でカップラーメンを食べているので、すぐにわかります(笑)。
そして、バイトでも競馬のG1レース予想に参加しなくてはいけませんでした…。
大きな用紙に全員が予想を書き込み、ギャンブラー社員が全員分の馬券を買いに行きました。
その用紙は壁に貼ってあり、“ジュン、1-5 2000円、T子、3-7 1000円”などと書かれています。

それよりも盛り上がったのが高校野球でした。
これは、店長も参加していて、半強制的参加の祭り状態でした…(汗)。
1人1万円出資して、優勝高を1つ予想します。
全員の予想を書いた大きな用紙は壁に貼られます。
この時期は仕事よりラジオを携帯して高校野球に結果に一喜一憂しました…。
30名くらい参加するので、全体で30-40万円ほど集まり、それを当選人数で分配するのです。
例えば、今春の選抜は創部3年目の済美(愛媛)が優勝しましたが、もし済美を予想した人が1名だったら1人勝ちです。
2名だったら2人で山分けです。
当たり前の話ですが、人気高や強豪高に賭けると、当選したときの配当は低いです。
もし2高に賭けたければ、2万出資です。
または2万出資して、人気高に2口賭けるギャンブラーもいました…(汗)。
最悪なのが、強豪高に賭けて、番狂わせで初戦負けしたときです。
笑いものになると同時に、早くも祭りから脱落です…。
また決勝で負けても、かなりキレます。

ワタクシの記憶によれば、過去1人勝ちしたのは1名だけです。
1993年の選手権大会の優勝高、育英(兵庫)を当てたのは、競馬に30万円を投資し40万円を回収した社員1名でした…。
たしか37万円を1人占めして、1ヶ月くらいは自慢していました(苦笑)。
そして、バイトのワタクシたちには、「食ってくれよ!」とカップラーメンの差し入れをくださいました…。
このギャンブラー社員は、奥さんに逃げられたそうです(汗)。

とにかく、ワタクシは「ギャンブルにハマるとコワイな」と、学生時代の間に勉強させていただいたのでした…。



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