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2月20日、西新宿ブチ散歩の後、オペラ「紫苑物語」を観ました。新国立劇場音楽監督の大野和士さんの意欲的な企画の一つ、日本人作曲家による新作オペラ上演の第一弾として、西村朗さんへの委嘱で作られたオペラです。音楽学者の長木誠司さんが、石川淳の原作をかねてからオペラに良い題材だと思っていたそうです。それを西村さんに持ちかけ、このオペラが作られたということです。弓矢の名人と狐をめぐるお話です。作曲:西村朗原作:石川淳台本:佐々木幹郎演出:笈田ヨシ美術:トム・シェンク監修:長木誠司指揮:大野和士宗頼:高田智宏平太:大沼徹、松平敬 (ダブルキャスト)千草:臼木あいうつろ姫:清水華澄合唱:新国立劇場合唱団管弦楽:東京都交響楽団歌手は皆健闘。千草(狐)役の臼木さんは、独自の緊張感を孕んだ異次元的な存在感があり、流石でした。2013年に観たライマンのオペラ「リア」でのコーディリア姫役の圧巻の舞台を思い出しました。うつろ姫(主人公宗頼の妻)役の清水さんは、えげつないというか、脂ぎったというか、そういう役どころなのですが、その毒々しさを充分にたっぷりと表現していました。ブロですね。僕の観た20日に平太(主人公宗頼の分身)役を歌った松平さんは、元々カヴァー役だったところ大抜擢でダブルキャストとして出演することになったそうです。途中低い声と同時にキーンという高い声も一人で同時に発声するところがありました。モンゴルのホーミーを生で聴いたことはありませんが、おそらくその発声法と思います。演出でユニークだったのは、舞台後方に巨大な鏡を斜めに配置し、その角度をいろいろと変えて舞台を映し出し、不思議な効果をあげていたのが素晴らしかったです。しかし演出全体としては、あまりに直接的というか具体的な表現が多く、僕には安っぽく感じられました。たとえば、最期に主人公が放つ3本の矢が、知の矢、殺の矢、魔の矢なのですが、射るたびに「知」「殺」「魔」という大きな漢字が、仏像の大きな顔とともに背景に大きく映し出されます。分かりやすいといえば分かりやすいですが、漫画的な安っぽさを大いに感じてしまいました。それから狐が矢に打たれて深い傷を負うところ、大きく映し出された狐の顔に、血がどろりと流れたりします。血生臭い雰囲気としてはうまく表現されていましたが、そこまで生々しい具体的な表現が必要かと僕には疑問でした。他の場面もおしなべて、具体的、表面的な説明レベルに留まってしまい、深みに著しく欠けていると感じてしまいました。肝心の音楽。第1部は割とにぎやかというか、ちょっと騒々しい場面が続き、やや単調な感じがしました。第2部は、静かなシーンもあって幅がひろがり、それなりに楽しめましたが、それでもやはり、僕には単調さが否めませんでした。じっくり聴かせるアリアがほぼなく、全編レシタティーボという感じなんですね。現代音楽とは言え、やはりオペラですから「歌」が不足だと物足りなく感じてしまいます。西村さんの器楽曲には好きな曲が多く、多いに期待していただけに、この点は残念でした。まったく余談ですが、残念なことと言えばもうひとつ、ひそかに期待していたのが、開演前と幕間にロビーで売られるケーキというか、甘味メニューです。毎回その演目に合わせた趣向の特別甘味メニューが出るので、今回はきっとあれだろう、と予想していました。察しのいい方はもうお分りでしょう、シフォンケーキをメインにした「シフォン物語」。ああしかし、それはまぼろしと化してしまいました^_^。しかしともかくもこのような邦人作曲家による新作オペラの創作と上演はとても貴重な機会です。大野さんによる委嘱オペラの第2弾、第3弾に期待したいと思います。
2019.03.17
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2018年演奏会まとめ、マーラー・ブルックナー以外のオケものです。○ 6月21日 藤岡&関西フィル、第293回定期演奏会 ザ・シンフォニーホール 「レジェンド・・・ ストルツマン、愛の二重唱」 大島ミチル オーケストラと合唱のための組曲《アウグストゥス》 (世界初演) 大島ミチル 《塵JIN》&《輪RIN》(世界初演) シベリウス 交響曲第1番 (藤岡シベリウスチクルス最終回)○ 9月 3日 オラモ&ロイヤルストックホルムフィル サントリー (再掲) ベートーヴェン交響曲第5番「運命」 マーラー交響曲第1番「巨人」○11月22日 テミルカーノフ(→体調不良で別の指揮者に変更)&サンクトペテルブルクフィル ラフマニノフ 交響曲第2番ほか○11月26日 メータ&バイエルン放響 サントリー リスト ピアノ協奏曲第一番 (ピアノ:キーシン) R.シュトラウス 英雄の生涯 ○12月18日 ハーディング&パリ管 サントリー (再掲) ベートーヴェン交響曲第6番「田園」 マーラー交響曲第1番「巨人」○6月の関西フィルの演奏会は、大阪出張の折に何かないかと探したところ、好きだったクラリネットのストルツマンさんが出るし、かつ藤岡さんのシベリウスも聴けると喜んで聴きにいきました。ストルツマンさんは流石にかなり御歳を召されたようですが(あとで調べたら今年76歳)、気持ちは十分お元気そうでした。奥様の日本人マリンバ奏者ミカ・ストルツマンさんとともに、クラリネットとマリンバのための二重協奏曲を、楽しそうに演奏されていました。ストルツマンさんの演奏を聴くのは、20年ぶり位です。東京オペラシティコンサートホールのオープニングの一連のコンサートで、ピーター・ゼルキンらとともに武満やメシアンの四重奏曲や、それからビル・ダグラスとエディ・ゴメスとの三人でいろいろな曲を演奏したときの繊細で豊穣な響きが、とても素敵でした。ストルツマンさんいつまでもお元気で。○9月のオラモ&ロイヤルストックホルムフィルは、ベートーヴェンの運命が引き締まってすごく良い演奏でした。そして運命のとき、女性の一番ファゴット奏者が信じられないほどの美音で、ひと吹きひと吹きにほれぼれとさせられました。こんな音色ちょっと普通聴けないです。巨人がこのファゴットで聴けるのも楽しみになりましたが、巨人の時にはなんと女性奏者が降りてしまい、代わって出てきた男性一番奏者は、ごく普通の音で、残念でした。あとでオケのホームページでメンバー紹介を見たところ、Co-principal 奏者の Emily Hultmark さんということでした。○12月のハーディング&パリ管は「田園」「巨人」という、メインの曲を並べたプログラム。この田園が、弦楽がノンビブラート奏法で新鮮な響きで非常に美しかったです。テインパニも非常に固いばちを使うなど、オケ全体として古楽的な透明な響きを出すことに徹底して、田園のイメージを一新するような、素晴らしい演奏でした。
2019.01.01
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続いては2018年ブルックナー演奏会のまとめです。4番 ヤング&新日フィル(1874年初稿) 7月14日 すみだトリフォニー7番 ギルバート&NDRエルプフィル 11月 2日 サントリー9番 坂入健司郎&東京ユヴェントスフィル 1月 7日 ミューザ川崎 ノット&東響 4月14日 サントリー インキネン&日フィル 10月12日 サントリー ブロムシュテット&N響 10月13日 NHKホール4番は、自分の知る限りシモーネ・ヤングさんがついに日本で初めてブルックナーを振る貴重な演奏会。しかし4番の初稿は自分としては好きではなく、その意味で残念な体験でした。この日の演奏会は、木嶋真優さんのヴァイオリンが素晴らしかったです。いずれヤングさんには、8番の初稿を日本で是非振っていただければと思います。9番は、4つの演奏を聴けました。坂入健司郎&東京ユヴェントスフィルが、素晴らしかったです。坂入さんのブルックナーを初めて聴きましたが、ゆったりとした流れで一貫し、無駄な力みがない、しかし入るべき力はしっかり入っているという、噂に違わず本物のブルックナーでした。この若さで、このようなブルックナーが振れるというのは、本当に驚異的です!ノット&東響も立派な演奏で好感を持ちましたが、ノットのブルックナーはどうしてもやや力が入りすぎてしまうところに、僕としてはちょっと違和感を感じてしまいます。それからインキネン&日フィルも凄かったです。ゆっくりとした、無駄な力のない、深い呼吸と巨大なスケールの、すごいブルックナーでした。坂入さんが唯一テンポをやや速めた第一楽章第三主題部も、インキネンはまったくテンポを速めず、そのままの歩みで進みました。8番といい9番といい、インキネンのブルックナー、こちらも本物です。完全に敬服いたします。その翌日、ブロムシュテット&N響は、残念ながら僕の心には響かない凡庸な音楽に終始してしまいました。前日のインキネンの素晴らしすぎる演奏の影響がないとはいいませんが、それを抜きとしても、同じと思います。・・・ブロムシュテットさんのブルックナーは、2012年バンベルク響との4番の神がかり的名演を頂点として、その後2016年バンベルクとの7番、そして今回の9番と、少しずつ下り坂を進んでいるように僕には感じられてしまい、残念なところです。このほか、聴きたかったけれど諸般の事情で聴けなかったものに、上岡&新日フィルの6番と9番がありました。
2018.12.31
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神戸市室内管弦楽団・神戸市混声合唱団の合同定期演奏会を聴きました。「北の響き」指揮:海老原光、松原千振管弦楽:神戸市室内管弦楽団合唱:神戸市混声合唱団10月28日 神戸文化ホール 中ホール神戸への出張が決まった折に、この日神戸近辺で行われる演奏会を探していたら、北欧ものばかりを並べた素敵なプログラムを発見しました。しかも一度は聴きたかった神戸市室内管弦楽団(旧称:神戸市室内合奏団)です。聴けるかどうかは日程的&体力・気力的に微妙でしたが、行ければいいなと思っていました。当日は、無事予定をこなし、体力・気力もなんとか持ちそうで、天気も良かったので、ついにコンサート行きを決意しました。三宮から地下鉄でわずか二駅とアクセスも良く、開演時刻のだいぶ前に会場に到着しました。緑の多い大倉山公園の一角に、ホールがありました。首尾よく当日券をゲットして一安心、穏やかな日和りで気持ち良かったので、開演まであたりを少し散策することにしました。ホールに隣接した広場には素敵な彫刻が散在していました。さらに神戸市立中央図書館や野球場を通り過ぎて、公園内の小高い丘に登りました。展望台からの眺めです。遠くに見えるのは六甲の山並みでしょうか。あとお茶目な雰囲気の富士山像もありました(^^)。陽の当たるベンチに寝そべって、青空と緑を見上げました。空をゆっくり見るのは久しぶり。気持ち良いです。いつの間にかうとうとと居眠りしてしまいました。ハッと目が覚めたら、程よい時間でした。寝過ごさなくて良かった^_^。ホールに入って座席表を見ると、やや、1階の最後列が1列で、前に向かって2,3,4,5と番号が増えていき、最前列が20列になっていました。これは珍しい!後ろからはいるので、進む順に番号が増えていくのは慣れれば便利なのでしょうか??席を探すのに一苦労しました(^^)。座席表を見ておいて良かったです。さて前半は神戸市混声合唱団。女声17名が前列に、男声16名が後列に並んで、松原氏の指揮でした。無伴奏合唱曲を5曲。グリーク 4つの詩篇 作品74より第4曲、「天国の父なる神のもとに行けたらどんなに幸福だろう」シベリウス「愛する人」 作品14クーラ 「りんごの木」トルミス 「シニッカの歌」プラキディス「追憶」作曲家はノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトヴィアです。グリークの曲は、最晩年の作品の最後の曲ということです。ラトヴィアのペーテリス・プラキディス(1947 - 2017)という作曲家は初めて知りました。静かな中に深みを湛えた、とても美しい曲でした。休憩を挟み、後半は神戸市室内管弦楽団で、弦楽合奏曲2曲。シベリウスのアンダンテ・フェスティーボと、グリークのホルベアの時代。5-5-3-3-1の通常配置、チェロ以外は立っての演奏です。長身痩躯の若い指揮者が早足で颯爽と登場し、振り始めました。一気に引き込まれました。極めて充実し、調和した、妙なる弦楽合奏の響き。かつてボッセ氏が率いていたこの楽団の演奏はかねてから一度は聴きたいと思っていましたが、これほどまでに素晴らしいとは。指揮者は、指揮棒なしで、長い腕と全身を大きく動かすだけでなく、しばしば右や左に2歩3歩と歩んで奏者のそばに近寄って音楽をリードします。その動きが実に滑らかで、音楽的です。シベリウスの荘重で格調高い響き、グリークの軽やかな曲としっとりとした曲の色分けの鮮やかさ、そのすべてに流れる真摯な音楽性は本当に感動的で、涙がにじみながらしばし聴かせていただきました。コンサートの最後は、合唱団と室内オケとの合同演奏、指揮は海老原さんで、ヴァスクスの Dona nobis pacem(我らに平和を与え給え)。ヴァスクスは、以前BGM選手権に別な曲を出して、ボツになったことがあります ^_^。この曲は、下降ポルタメント、重い曲調など、ヴァスクスらしさがしっかりと刻印された、力強さと美しさを備えた聴きごたえのある曲でした。演奏が終わってから、松原さんが登場し、しばしお話をされました。僕はまったく知りませんでしたが、ボッセさんのあとを引き継ぎ音楽監督をされていた岡山潔さんが、この10月に逝去されたそうです。岡山さんの遺志を引き継いでいきます、というお話のあと、追悼としてバッハのマタイ受難曲から第72曲のコラールが、弦楽合奏と合唱により演奏されました。マタイ受難曲で繰り返し歌われるあの“受難コラール”が、イエスの死の直後で歌われる場面です。沈痛な鎮魂のコラールが、会場の隅々まで静かに沁みわたりました。終演後ロビーに出ると、先ほどは気が付かなかった、岡山潔さんの遺影が飾られていました。関係の方々には特別な演奏会だったことを最後に知ったわけですが、それを知らなくても、この日の演奏には本当に心打たれ、心洗われる体験でした。神戸市室内管弦楽団、神戸市混声合唱団のますますのご発展を願います。感動の余韻で軽くぼぉっとした頭で、また機会があったら是非とも聴きに来ようと思いながら、帰路につきました。
2018.11.03
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守岡未央さんのリサイタルを聴きました。東京オペラシティのB→Cシリーズの第204回です。B→Cシリーズは、若手の気鋭の奏者による、バッハ(B)と現代音楽(C)を中核に据えたプログラムが毎回非常に興味深いリサイタルなのですが、なかなか聴きに行く時間がとれません。今回は守岡未央さんを是非とも聴きたく、頑張って参りました。僕が守岡未央さんの音に初めて出会ったのは、もう5年前、2013年10月のアマオケのマーラー3番のコンサートでした。このときのポストホルンが、実にほれぼれする演奏でした。あまりに素晴らしかったので、終演後に拍手も終わって演奏者たちが舞台裏に引っ込んで行くときに、思わず舞台に急いで近づき、舞台下の客席からご本人に、素晴らしいポストホルンだったことの感動を直接お伝えしました。当時はどういう方かを全く知りませんでしたが、この方が守岡未央さんだったわけです。きっと守岡さんは変なおじさんが何を言いに来たのかと驚かれたことと思います(^^)。その後守岡さんは、2014年に行われた第12回東京音楽コンクールの金管部門で第3位及び聴衆賞を受賞し、2015年日本音楽コンクールのトランペット部門で見事優勝されました。そして僕は、その後2016年4月に、アマオケのマーラー3番を聴いていたところ、ポストホルンがやはり素晴らしく、それを聴きながら、何故か2013年のポストホルンのことを思い出していました。「今日も良いけど、そういえばあのときも良かったなぁ」などと思いながら聴いていました。後日その演奏会のプログラムを見たら、なんとポストホルンに「守岡未央」と書いてあるのを発見し、びっくりするとともに、2013年のポストホルンを思いだしたことに合点がいきました。(このあたりのことは「オーケストラ・アンサンブル・バウムのマーラー3番を聴く」の記事に書きました。)その後守岡さんは、2016年7月に東京文化会館モーニングコンサートVol.97を開催されましたが、これは平日昼間で聴きに行けませんでした。その次の2016年9月に紀尾井ホールで開催された「明日への扉」シリーズでのリサイタルは、聴きに行くことができ、守岡さんの明るく豊かな音色を堪能しました。もうそれから早くも2年がたち、今回東京オペラシティのB→Cシリーズでのリサイタルとなったわけです。9月18日 東京オペラシティ リサイタルホール守岡未央(もりおか みお) トランペット松下倫士(まつした ともひと) チェンバロ、ピアノ金子鈴太郎(かねこ りんたろう) チェロ会場は満員の盛況。プログラム前半は、ピッコロトランペット、チェンバロ、チェロによる三重奏で、バッハ、アルビノーニ、テレマンのバロック・プログラムでした。守岡さんはちょっと緊張気味だったかもしれないですが、明るく伸びやかなピッコロトランペットを聴かせていただきました。金子さんのチェロは小ぶりで、エンドピンを外して(?)、ヴィオラ・ダ・ガンバ風に両足で抱えて演奏していました。後半はトランペットとピアノによる近・現代作品で、エネスコ、ボザ、ラフマニノフ、松下倫士(守岡未央委嘱作、世界初演、トランペットソロ)、最後はスノウという作曲家の作品でした。多彩な味わいのプログラムで、それぞれに美しくうっとりとさせられました。松下さんのピアノもきらきらと輝いていて、冴えていました。プログラム最後のスノウの曲はクラシックの作りですが途中にジャズ的な部分もあり、美しく素敵な曲でした!盛大な拍手のあと、ちょっと守岡さんのスピーチがあり、「今の自分にできることすべてを出しました。」と仰っていました。そしてチェロの金子さんも参加して3人で、アンコールを2曲。最初は「天空の城ラピュタ」の名曲、「君をのせて」。紀尾井ホールのリサイタルのときにも守岡さんはこれをやり、そのときに宮崎作品かなり好きだとお話しされていました(^^)。守岡さんのトランペットとピアノ、チェロによる「君をのせて」、良かったです~。そして最後は、BachにかえってG線上のアリアを、再びピッコロトランペットに持ち替えて演奏していただきました。大昔、中学~高校の頃、トランペットを少しかじっていました。高音が出ず苦しむ一方で、モーリス・アンドレの音色に憧れ、心酔する日々でした。アンドレが来日したときのリサイタルも、聴きに行きました。守岡さんのトランペットは、明るく豊かな歌があり、アンドレに通ずるものを感じます。これからのますますのご活躍を期待しています。いつかまたマーラー3番のポストホルンも、聴かせてください。
2018.09.19
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本日(7月14日) すみだトリフォニーホールで、シモーネ・ヤングさんの指揮による新日フィルのコンサートを聴きに行きました。メインはブルックナーの交響曲第4番(初稿)でした。プログラム前半は、木嶋真優さんのヴァイオリンによるブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。芯のある音で、気合の入ったいい演奏でした。木嶋さんはその後にアンコールを弾いてくださいました。「ふるさと」でした。あのメロディが素朴に弾かれた後、三つの技巧的な変奏が堂々と奏でられました。きっとこのアンコールは、西日本の豪雨で被災された方々に向けて、神戸ご出身の木嶋さんが発した、心からのメッセージだったと思います。胸に響くメッセージでした。被害を受けた方々の生活が、少しでも早く落ち着くことを願います。
2018.07.14
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プロムジカ2018ツアーのその3、最後の記事です。プロムジカ女声合唱団指揮:デーネシュ・サボー4月4日 東京カテドラル関口教会 聖マリア大聖堂2018日本ツアーの半ば、関東での最後の公演です。ここ東京カテドラル関口教会聖マリア大聖堂は長い残響で知られます。かつては朝比奈隆氏がブルックナーの交響曲を繰り返して演奏しましたし、合唱や古楽の演奏会がときどき行われています。過去にプロムジカがここで歌ったかどうかは知りませんが、僕にとってはここでプロムジカを聴くのは初めてです。今日はとても大勢の聴衆が集まり、広い会場は満席ということでした。大聖堂は空から見ると十字架をかたどった構造ということです。内部から見るとそういうことはわかりませんが、ともかく天井がとても高く、壁はコンクリート造りで、垂直ではなく斜めに傾いていて、上の方で左右が合流しているような感じです。前方に大きな祭壇があり、後方にはパイプオルガンを備えたバルコニーがあります。その間に祭壇の方を向いた沢山の信者席があり、そこに座って聴きます。教会ですので、今日は全部宗教曲のプログラム。いつものように入場しながらの歌で始まりました。合唱団は祭壇の前の方というか、信者席に近い方で歌い、サボーさんは信者席の中央に前後に伸びた通路の、前から数列目くらいのところで指揮をされました。この大空間に独特の長い残響で、やや遠くから聞こえて来るような響きで、コンサートホールとはまた違った、教会ならではの厳かな雰囲気のうちに進んでいきました。最初の4曲はルネッサンスの曲で、そのあとはハンガリーの作曲家の曲が歌われ、休憩となりました。休憩時に撮った、夕闇の中に立つ大聖堂です。後半は、引き続きハンガリーの作曲家の曲が歌われていきます。いつものようにときどき配置を変えますが、コンサートホールでのように客席通路に散らばるということは少なく、むしろ壁に沿って大きく広がることが多かったです。この響きの空間に合わせた配置変化だったのだと思います。今日を含め6日間に3回と集中して聴けたためか、コダーイ、コチャール、ジェンジシのハンガリーの3人の作曲家の作風や響きの違いが、聴いていてなんとなく分かってくるように思いました。もちろん曲によっても大きく違うので極めて大雑把な印象ですが、コダーイを基準とすると、宙に漂うような響きのうつろひが美しいコチャール、リズムなどに斬新な感覚のあふれたジェンジシ、という感じでしょうか。いずれも美しい曲の数々を、長い残響に浸りながら、たっぷりと聴けました。前半は少しフライング気味の拍手がありましたが、休憩のときに係の人が、余韻が消えるまで拍手は控えましょうとしっかりアピールしていただいたおかげで、後半は長い残響が完全に消えて一呼吸するまで静寂が保たれるようになり、安心して聴けました。そしてあっという間にコンサートは終盤を迎え、ビーブルのアヴェ・マリアが歌われました。そのあとサボーさんが「春爛漫。」と仰り、「さくらさくら」が歌われました。最後はサボーさんの流ちょうな日本語「皆さんも歌わなければなりません。」という言葉に導かれ、「ふるさと」を、その場の全員で歌いました。今回、大きなコンサートホール、小さなコンサートホール、大聖堂、というそれぞれ異なる響きの場でプロムジカを満喫するという、夢のような1週間になりました。それぞれの違いも身をもって実感しました。響きの繊細な美しさという点で、大きなコンサートホールはさすがに良く設計され、良く作られていると思いましたし、小さなコンサートホールで至近距離で全身で味わう立体的な感触は圧倒的でした。そして今日の大聖堂は、教会という特別な場所と、独特の長い残響とで、歌うほうも聴く方も普通のコンサートと少し違った厳かな雰囲気の中での、貴重な聴体験になりました。今日もなんと、運よく小さな花をいただきました。この素晴らしい合唱の響きを、再び聴ける日が来ることを願いながら、日々の生活を過ごしていきたいと思います。最後に、サボーさんありがとうございました!最後の最後に、プロムジカのメンバーの皆さん、ありがとうございました!最後の最後の最後に、後藤田さんはじめ関係の方々のご尽力、ありがとうございました!
2018.04.26
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前日の所沢公演の感動の余韻醒めやらぬまま、川口公演にやってまいりました。会場の川口総合文化センター・リリアは、川口駅すぐそばにある建物です。プロムジカ女声合唱団指揮 デーヌシュ・サボー3月31日 川口総合文化センター・リリア音楽ホールリリア音楽ホールは、川口総合文化センター・リリア内にある、座席数500ほどの音楽専用の小ホールです。パイプオルガンがあり、天井も高く、響きの良いホールで、ここで古楽オペラなども時々上演されます。今日は歓迎演奏はなく、プロムジカ合唱団のみの出演です。歓迎演奏がない他は、昨日と同じような進行で、前半が宗教曲です。コチャールのイ調のミサに始まりましたが、始まって程なく、今夜のコンサートが特別な体験になることを悟りました。昨日の所沢は、歓迎演奏がありましたので、小さな出演者のお友達とか家族などが多く聴きに来ていたと思います。その関係でホール内の雰囲気が少しざわついているところがありました。それに対し今日は、聴きに来ている人たちの集中度が極めて高く、雑音を立てる人はほとんど皆無です。しかも、ブロムジカのコンサートには非常に珍しいことに、聴衆がかなり少なめです。何らかの事情、たとえば歓迎演奏の予定があって席を沢山空けておいたところ歓迎演奏が取りやめになった等の経緯があったのかもしれません。小さくて響きの良いホールであるだけに逆に、演奏が始まるまでは、彼女たちの歌にはもしかしてちょっと狭すぎて、響きが飽和してしまうかなと心配していましたけれど、始まってすぐそれは杞憂だったことを知りました。合唱団39人全員が乗るにはかなり狭い舞台ですが、そこは工夫されていて、約10人はほぼいつも、舞台後ろのオルガンがある高い通路に位置して歌うので、響きが程よく広がって効果的です。またもちろん、発声そのものが本当に無理なく綺麗なので、この小さなホールでかなり強く歌ってもまったく濁らない、実に美しい響きが現れてきます。小さな上質の響きのホールで、熱意ある少数の聴衆だけで、サボーさんと彼女たちの紡ぎ出す音楽の呼吸を本当に目の前で身近に感じながら、全方位からの美しい響きに文字通り体中が浸れる、という体験は、ちょっと信じられないほどのものです。こんな贅沢させていただいていいんだろうかと思いながら、ただただ響きに身を任せて聴いていました。これまで数多くのプロムジカの歌を聴いてきましたが、これほどの幸せなひとときは初めてです。前半の最後は、ビーブルのアヴェマリアで締めくくられました。途中の曲目は昨日と少し違いがありました。休憩をはさんで後半は、昨日と同じく、ハンガリーの作曲家による世俗的合唱曲の数々でした。そしてその後は日本の歌で、「さくらさくら」、そして「花は咲く」。2016年のカンテムス合唱団が歌ったのと同じように、2-3人ずつで別れて座ったメンバーたちが少しずつ立ち上がって、歌われていきました。僕はもう胸がいっぱいになってしまい、音楽を冷静に聴くことができませんでした。。。すでに記憶があいまいですが、最後はサボーさんの指示で、会場全員で「ふるさと」をうたい、歌いながらメンバーが退場していきました。プロムジカも、カンテムスも、いつもおしまいはメンバーがひとりずつ花を持って、退場しながら座席の観客に花を手渡していきます。これまで僕は一度も花をもらったことはなかったのですが、今日は運よくいただくことができました!2018年ツアープログラムと、いただいた一輪の花です。サボーさんとプロムジカの皆さん、本当にありがとうございました。
2018.04.19
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ハンガリーの少女たちによるプロムジカ合唱団のコンサートを聴きました。4年ぶりの来日ということです。僕は4年前の公演は聴き逃したので、2012年以来6年ぶりのプロムジカ体験となり、とても楽しみにしていました。プロムジカ女声合唱団 指揮デーネシュ・サボー3月30日 所沢市民文化センター ミューズ・アークホール 所沢市郊外、航空公園に隣接した所沢市民文化センターミューズは、大・中・小の三つのホールなどがあるところです。アークホールは座席数2002、オーケストラのコンサートも良く開かれる響きの良い大ホールです。(朝比奈隆氏もここでブルックナーを演奏したことがあります。)春の夕暮れ迫る頃に、久しぶりにこちらミューズにやってきました。アークホールの入り口には、桜の花が描かれた手作りの素敵な立て看板がありました。今回の来日は、埼玉県所沢市の少年少女合唱団が結成20周年を迎えて、プロムジカと一緒に記念のお祝いのコンサートをしたいという強い願いを出し、それを受けてサボーさんとプロムジカ合唱団の来日演奏が実現したということです。関東、中部、関西で計7回のコンサートが予定されていて、今日はその初日です。いつものように、プロムジカの歌に先立って、まず日本の合唱団による歓迎演奏がありました。今回は、小さい子供たちの合唱団から中学生くらいまで、6つの団体がそれぞれ短い曲を歌いました。 フイーニュ・ジュニア 代々木コーラスクラブ 国分寺市立第三中学校&合唱団「燦」 上尾児童合唱団 所沢市立南陵中学校合唱団 所沢フイーニュ少年少女合唱団最初と最後が、メージャー佐知子さんという指導者が育てた、今年創立20周年を迎えた合唱団ということです。最初に登場したフィーニュ・ジュニアは、幼稚園児あるいはもっと小さな子たちが、金子みすゞの「すずと小鳥と私、みんな違ってみんないい」、という詩にメロディーをつけた歌などを歌ってくれました。その声が無理のない発声で素直で美しく、とても素敵でした!他の合唱団も、やはり小さな子供たちによるわらべ歌や、中学生らによる「群青」、「島唄」、「てぃんさぐの花」など、親しみやすい歌がいろいろと歌われ、どの団体も素晴らしく、これだけでもかなりの感動をいただきました。休憩を挟んで、プロムジカ合唱団の登場です。いつものように、前半は宗教曲でした。コチャールのイ調のミサやサルヴェ・レジナ、オルバーンやジェンジェシの作品など、そして最後はビーブルのアヴェマリアが歌われました。久しぶりに聴くプロムジカは、斉唱も、合唱も、いつもと同じく本当に美しい響きで、うっとりとするばかりでした。ふたたび休憩を挟んで後半は、これもいつものように、ハンガリー民謡などの世俗曲と日本の歌が歌われました。コダーイの「夕べの歌」、「天使と羊飼い」、「踊りの歌」、バールドシュの「ヘンルーダの花が咲いたら」などでした。そして最後は、若松正司編曲の「さくら さくら」でした。このなんとも素晴らしい曲は、プロムジカが日本でしばしば歌ってくれます。ただ彼女たちの日本ツアーは、いつもは夏なのですが、今回は例外的に桜が美しく咲いている時期で、まさにこの歌を歌うには絶好のタイミングでした。プロムジカのメンバーも、今回日本の桜をその眼で実際に目にすることができたことでしょう。その後は、これもいつものように、歓迎演奏の6団体全員がステージに上がりプロムジカ合唱団と混ざり合い、「ふるさと」の大合唱、そして「最後の最後の最後の最後の最後に」、これもいつもの締めの曲(コダーイだったかコチャールだったか)の合唱曲で締めくくられました。歓迎演奏・休憩をいれて3時間、美しい合唱の響きをたっぷりと味わえました。休憩の間にロビーでは、歓迎演奏した合唱団が集まっていて、中学校を巣立っていく3年生などを囲んで盛り上がっているようでした。春、別れと、新しい旅立ちの季節ですね。サボーさんの育んだ合唱の“カンテムス・ファミリー”と日本の合唱を愛する人々との交流は、日本ハンガリー合唱交流委員会の後藤田夫規子さんのご尽力などで支えられ、長く、実り豊かに成長し、昨年には25周年を迎えたということです。サボーさんは、日本とハンガリーの長年にわたる合唱交流の功績を称えられ、昨年日本政府から勲章を授与されたということです。日本の合唱技術の向上にも大きく貢献しているのだと思います。本当に素晴らしいことです!
2018.04.01
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