空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

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『天使の手鏡』・第9章~第11章



私はまるで長旅を終えたかのように疲れていました。

いつも通りの静かな部屋・・・

テーブルには2つのカップが寄り添って残っています・・・

私は引き出しの中の手鏡が気になって仕方ありませんでしたが、サラの翼から伝わるサラの気持ちが切なかったのです・・・

どうやら無事に彼と出会えた様でした。

私はそのままテーブルによりかかり、眠ってしまいました・・・

そして、私は不思議な夢を見たのです。

辺り一面に真っ白なユリの花が咲く花畑・・・すると、一人の美しい天使が私の前に現れました。

「サラ?・・・」

想いが強すぎて夢に見たのだと思いましたが、よく見ると似ていましたが、違っていました。

〈お礼と感謝です〉

その彼女は突然、私に一輪のユリの花を差し出して言いました。

「・・・あなたは?お礼と感謝とはどういうことですか?」

〈あなたをよく知るものです。辛かったでしょう・・・サラが追い求めた彼は悪魔との戦いで人になる呪いをかけられたのです。サラにはそれが分かったのでしょう・・・見過ごすことなどできなかったのです〉

「・・・やはりそうでしたか・・・」

〈人の命は一瞬です。この先も辛いでしょう・・・サラは翼が無いだけでまだ天使なのですから〉

「・・・」

〈あなたは正しかったのです。さぁ、これを〉

私はユリの花を受け取りました。

「・・・あなたはもしや・・・」

〈いずれまた会います・・・〉


ドンドン!ドンドン!

〔先生!今日はお休みですか?〕

私はその声で目が覚めました。

「すみません、今開けます」

慌ててドアを開けると数人の患者が待っていました。

「お待たせしてすみません・・・どうぞ中へ」

寝過ごしたのは初めてでした。

〔先生、テーブルに花なんて珍しいですね〕

一人の男が私に言いました。振り向くと見たことの無い白い花瓶に一輪のユリの花が・・・

「・・・いや、これはいただいたんです・・・」

確かに夢だったはずでした。

〔美しい花ですね〕

「・・・はい」

私は花瓶を手にとって見ました。すると、花瓶の底にこう書かれていたのです・・・

親愛なる4枚の翼を持つあなたへ

「・・・」

私はその時、彼女が誰だか分かったような気がしました。

しかし、自分のことばかり気にしてはいられません、私には私の治療を待つ患者がいるのです。

私は心の動揺を隠し、患者をいつものように診ました。

そして、またダニエルが訪ねて来たくれたのです。

[先生、この前はご挨拶もなく、すみませんでした。体調はどうですか?]

「いや、君も患者を持っているんだ、気にすることはない。体調は傷の痛みも消え、前よりも力が満ち溢れているよ」

[気がかりだったので良かったです・・・ところで彼女の方はどうですか?]

「・・・元気に過ごしている」

[それは良かった。今日はこれから予定はありますか?]

「いや、何もない、ゆっくりしていってくれ」

[はい、実はそのつもりで今日はレミィとアンディーも呼んでいるんです。近くに待たせているのですが、迷惑でしょうか?]

レミィとアンディーというのはダニエルと同じ私の教え子です。

「レミィとアンディーが?迷惑なわけはないだろう、みんな家族だと思っている、さぁ、呼んできなさい」

[はい、みんな喜びます!]

そして、しばらくすると3人はやってきた。

〔先生ーご無沙汰しております!〕

初めに飛び込んで来たのはいつも明るくみんなを和ませるアンディーでした。

「相変わらず元気そうだな」

そして、ダニエルが入り、

〈先生、お元気でしたか?〉

最後に入ってきたのはとても優しいこころを持つ唯一の女性、レミィでした。

「レミィ、ずいぶん大人になって綺麗になったね、みんなよく来てくれた、頑張っているか?」

〔もちろんです!〕

[みんな先生の教えを守って頑張っています]

〈・・・〉

その時、なぜかレミィだけがうつむいて答えませんでした。

「そうか、今日は昔に戻ってゆっくり話そうじゃないか、お茶を入れるからみんな座っていておくれ」

〔やったー、実はそれも楽しみにしてたんです!〕

[まったくアンディーは変わらないな]

〈本当にね〉

それは本当に昔に戻ったような光景でした。

昔は翼の医者は私一人でしたが、世の中が変わり、傷つく天使たちが増え、その必要性が問われ、後継者としてダニエル・アンディ・レミィがやって来ました。

その当時はまだ戸惑う子供同然でしたが、時を経て立派になってここに立っています。

そして、時を経ても当時と変わらず、笑い声をあげて話をしている姿が嬉しくてたまりませんでした。

しかし、レミィの様子だけがおかしく感じました・・・

私はそれを見過ごすことができませんでした。


つづく。




『天使の手鏡』・第9章『友愛』・・・第2話


「レミィ、どうしたんだい?具合でも悪いのかい?」

〈い、いえ、大丈夫です・・・〉

「これでも私は君たちの育ての親同然だ、分からないと思ったか?ダニエル、アンディ!レミィに何があったんだ?」

[レミィ、やっぱり先生に隠し事なんて無理だよ、先生にはちゃんと話すべきだ]

と、ダニエル。

〔そうだな・・・レミィ、先生を信じて話すんだ〕

と、アンディーにも言われると、レミィは目に涙を溜め、話し出しました。

〈先生ごめんなさい・・・私・・・診療所を閉めているんです・・・〉

「診療所を閉めている?」

〈はい。もう、やっていく自信がありません・・・ごめんなさい、私には初めから無理だったんです〉

「・・・そんなはずはない、君はここに居るだれよりもこの使命に理解があり、素晴らしいと思っていたはずだ。患者を思い、なにより患者の心が見えていた。私は今でもそれが1番大切だと思っている、だからレミィは素晴らしい医師になると確信していたのに・・・いったい何があったんだ?」

〈・・・私の診療所に堕天使との戦いで翼がひどく傷ついた天使が担ぎこまれました。私は時間をかけ、私の全てをかけて治療しました。そして、治療を終え、完治を告げました・・・しかし、その直後、再び戦いに向かった彼は戦いの最中に突然、翼が折れ、落下し・・・命を落としました・・・〉

「そんな事が・・・辛かっただろう・・・」

[でも、レミィはちゃんと無理をせずにと言ったんだろ?それに、戦場に出る天使に何があっても仕方ないんだ、どうしようもない事故だったんだ・・・自分を責めても仕方ないじゃないか・・・]

〈でも、完治を告げたの・・・それに、失って仕方ない命なんてどこにもないの・・・残された家族や愛した者の悲しみや苦しみを背負ってまた治療なんて私にはできない・・・〉

[・・・]〔・・・〕

「レミィ、君の苦しみを全部分かるとはいえないが、ここに居る私たちは君が苦しんでいるのを見過ごしはできないんだ、同じように心が痛い・・・しかし、このままでいいとも私は思わない・・・そこで1つ提案がある、私の助手としてここにしばらく戻ってきなさい。ここからもう1度やり直すんだ」

〈・・・いいのですか?〉

「あぁ、教え子をこのままにはしておけない。ここは君たちの家じゃないか、何かにつまずき、傷ついてそれ以上進めなくなったら遠慮せずにまたここからやり直せばいい、いつでもここに戻っていいんだ」

〈はい、ありがとうございます〉

〔はい、私もそうさせていただきます〕

[先生、ありがとうございます。またアンディと一緒に来ます、先生から学ぶ事はまだまだ沢山ありますので]

「よし、それじゃあ明日もみんな診療所があるから今日はこれぐらいにしておこう。レミィは荷造りをして3日後に来なさい」

〈はい〉[はい]〔はい〕

そうして、みんな帰っていきましたが、どうしたことかすぐにダニエルだけが戻ってきました。

「どうしたんだい?ダニエル」

[・・・先生、どうぞレミィをお願いします]

「そうか、ダニエルはレミィのことを想っていたんだったな・・・心配することはない、あの子は立派な医者のはずだ」

[はい・・・先生じゃないとダメなんです、先生しかレミィを助けることができないんです]

私はその時、ダニエルが言った本当の意味が分かっていませんでした。

「分かった、任せなさい」

[よろしくお願いします]

そして、ダニエルは帰っていきました・・・


つづく。



『天使の手鏡』・第10章『苦心』

それから三日後・・・

〈先生、お世話になります〉

早朝、レミィとダニエルが大きな荷物を抱えてやって来ました。

「向こうは片付いたかい?」

〈はい、ダニエルとアンディが手伝ってくれて〉

[荷物なんて必要な物だけでいいのに]

と、ダニエルが大きな荷物を降ろした。

〈これは全部必要なのよ〉

レミィは微笑を少し取り戻していました。

「ご苦労だったなダニエル」

[いえ、仲間の再出発ですから。でも、レミィがうらやましいです、先生の下でまた学べるなんて]

「本当は私にではなく経験から学ぶ方が大切なんだぞ」

[はい。それでも、いつまでも先生には追いつけません]

「そんなことはない、それより暇ができたらレミィの様子を見に来てやってくれ」

[はい、そのつもりです]

〈ありがとうダニエル、でも、時間じゃないの?〉

[いけない、急がないと、先生それではまた]

「あぁ、気を付けてな」

そうして、ダニエルは慌てて帰っていきました。

「頼りになる奴だな」

〈はい・・・いつも私はみんなに心配をかけるばかりで・・・でも、いつか先生のようにみんなを守れる存在になりたいです〉

「そうか、そのためにも私と一緒に使命の素晴らしさをもう一度思い出そう、さぁ、私たちもそろそろ準備をするよ」

〈はい、よろしくお願いします!〉

私にどれだけの事が出来るか分かりませんが 私の全てをかけて助けたいと思いました。

そうして、レミィとの生活が始まりました。

レミィは私の心配をよそに頑張りました。朝は私より早く起き、準備に片付けとよく働いていました。

しかし、致命的なことに患者の翼に触れることに恐れがあり、それを落ち込んでいる時もありました。

「レミィ、片付けはもういい、こっちに来なさい」

〈はい〉

「患者の翼に触れるのが怖いのかい?」

〈・・・〉

「じゃあ、私の翼を触ってみなさい」

私はもちろんサラの翼は見せるつもりはなく、背は見せず、サラの翼は内に隠していました。

〈はい・・・〉

「どうだい?」

〈温かいです〉

「そうだ、体温よりも少し高い熱を持っている、翼には天使の力が存在している。私たちには命に等しいほど大切な物なんだよ」

〈はい・・・〉

「その尊い翼を守るのが私たちの使命なんだ、レミィもダニエルもアンディもその力がある、愛するんだ翼を!そうすれば翼からその天使の全てが伝わる」

〈はい〉

「よし、明日は頑張ってみよう」

〈はい!〉

「じゃあ、お茶でも飲もうか」

〈はい、今日は私に入れさせてください〉

「そうだな、それじゃあ頼む」

そうして、レミィの入れたお茶を飲みました。

すると、レミィがテーブルのユリの花のことを聞きました。

〈ずっと気になっていたのですが、この花は何ですか?〉

「これはユリという花だよ」

〈ユリ・・・その花は特別なのでしょう?〉

「どうしてだい?」

〈普通の花ならとっくに枯れているはずです。この花は枯れるどころかいつまでも生き生きとしているからです〉

レミィは花瓶を手に取った。

「・・・」

〈先生?この底に書いてある言葉・・・親愛なる4枚の翼を持つ者へ・・・これは一体誰のことですか?〉

「・・・ある偉大な天使からの贈り物なんだ、その言葉は初めから書いてあったが私にも何のことだか・・・」

〈偉大な天使とは誰ですか?〉

「大天使ガブリエル様だ」

〈えっ!先生があのガブリエル様と知り合いだったのですか?〉

「知り合い・・・まぁそういうことだ」

〈凄いですね、それならこの美しく不思議な花のことも納得できますね、先生って本当に凄いです・・・みんなに慕われて・・・先生は今、愛する女性が居ますか?〉

「・・・どうしてそんなことを急に?居るには居るがどうしてだい?」

〈やっぱり・・・居ないのなら私が立候補しようかと思って〉

「そんな冗談はよしなさい」

〈いえ、冗談なんかじゃありません。私はずっと先生が好きでした・・・でも、私なんかじゃ駄目ですよね・・・〉

「・・・すまない、私はレミィのことは教え子としてしか愛せない・・・だけど、レミィは優しくて素敵な女性だ、きっと君のことを思ってくれる者が居るはずだ」

〈・・・いいんです、無理なのは覚悟していましたから、でも、どうして愛する人と一緒におられないのですか?〉

「訳あって今、遠くにいるんだ・・・でも、いつも一緒なんだよ」

〈いつも一緒?心ですね・・・だから寂しくないのですね・・・すみませんでした。つまらないことを言って・・・〉

「なにも謝ることは無いよ、嬉しかった。でも、私なんかよりも周りを良く見てみなさい」

〈周りを?・・・見る余裕があればそうしてます・・・〉

「すまない・・・」

〈いえ、先生こそ謝らないでください・・・もう休みますね、おやすみなさい〉

そう言うと、レミィは部屋に駆け込んでいきました。

「おやすみレミィ・・・」

愛というのはいくつも持ってもいいのだろうか・・・

私は彼女を救いたい・・・

サラは私に戻ると約束してくれた。それは確かに愛だったはず・・・

しかし、今は彼のところで・・・

そうして頭を抱えると、ユリの花が目に入りました。

「ガブリエル様、導きを・・・」

ユリの花が答えるはずがありませんでした。

私はもう考えずに眠りにつこうと部屋に戻り、横になって目を閉じました。

すると、また私はユリの花畑の中に・・・

「また同じ夢?・・・」

しかし、前とは違い、ユリの香りや優しく頬をかすめる風まで感じました。

〈私に助けを?〉

やはり現れになりました。

「ガブリエル様?」

〈そうです〉

「やはり・・・お会いできて光栄です」

〈あなたが呼んだのです。しかし、あなたが今抱える苦心は私が救えるものではありません、導くものでもありません、苦しいでしょうが自ら答えを導きなさい〉

「そうですね・・・私のような者にありがとうございます」

〈あなたがサラを愛してくれている、理由はそれで十分です。それに私は以前のあなたをよく知っています〉

「以前の私を?・・・どういうことですか?」

〈それは今、知るべきことではありません、いずれ思い出すでしょう〉

「・・・この出会いは決まっていたのですね」

〈いえ、私が望んだのかもしれません・・・さぁ、もう戻るのです〉

「はい・・・また会えますか?」

〈必ず・・・〉

そうして私は深い眠りに落ちました。


つづく。





『天使の手鏡』・第11章『沈思』

翌朝、何事も無かったようにレミィはいつも通り私を起こしにきてくれました。

〈先生、おはようございます〉

「・・・おはようレミィ」

〈お茶を入れましょうか?〉

「あぁ、お願いするよ・・・」

昨日のことは全てが夢だったのだろうか?と、疑うほどいつも通りの一日でした。

そして、次の日も、また次の日もレミィは普段どおりあのことは口に出しませんでした。

変わったといえば、手が震えながらも一生懸命に患者の翼に触れることに頑張っています。

私はそれがとても嬉しく、私もあの夜の事は忘れようとしていました。

しかし、私の心は安心したのか・・・それとも寂しいのか・・・

抑えていたサラへの想いが強くなり、拒否していた手鏡を手に取ってしまったのです・・・

「サラ・・・」

私は手鏡に向かいましたが、手鏡は私を映すばかり・・・そこで祈ったのです。

「天使の手鏡よ、サラのところへ・・・」

そう祈ると手鏡は光りを放ち、やがて地上に居るサラを映し出しました。

「サラ・・・」

サラは変わらず美しく、私の胸を締め付けました。サラは紺色の生地に白いユリの刺繍が入った前掛けをして花屋で働いていました。

愛想良く人と接し、よく馴染んで、とても幸せそうでした。

「サラにとっては地上は良い所なのか・・・」

恋しい、切ない、寂しい・・・胸が締め付けられる・・・

「なんと情けない、サラの幸せを素直に喜べないなんて・・・やはり見るべきではなかった・・・」

すると、サラの前に一人の男が現れてサラは満面の笑顔で彼と抱き合いました。

「彼が・・・」

私は自分の中でこみ上げる醜い感情に耐えられず、手鏡をしまいました。

そうして、私は平常心を取り戻そうと、診療所の外に出ました。

「・・・」

太陽が黄金色に輝き雲に落ちようとしています。雲にたつ天空全体が黄金色に染まっていました。

そうしてしばらく美しい光景を見ながら胸の高まりを沈めていると、黄金色に輝く太陽を背に使いに出していたレミィが手を振って帰ってきました。

「・・・レミィ・・・」

私の心で止まっていた何かが静かに動こうとしていました・・・

いつものように元気いっぱいのレミィに私は温かさを感じました。

「おかえりレミィ、その沢山の小さな袋は何だい?」

〈これはいろんなお茶です。先生に楽しんでもらおうと思って〉

「そうか、ありがとう・・・」

〈先生、どうかしましたか?なんだかとても悲しんでいるように見えましたよ・・・泣いているようにも・・・〉

「いや、何でもないよ、あまりに太陽が美しかったのでな・・・」

〈・・・やっぱり何かあったのですね?〉

「レミィ、今でも私のことを?」

私はなぜ、そんな事を聞いたのでしょう・・・

〈はい、あきらめはしましたが、やっぱり先生のことは尊敬もしていますし、大好きです・・・だから、こうして一緒に居られるだけで幸せです〉

「・・・」

〈でも、先生が愛する人と幸せならかまいませんが、辛く悲しい思いをしているのであれば私を受け入れてください、元気をだしてください、私にできることがあれば気になさらずに言ってください〉

「ありがとうレミィ・・・」

〈すいません、先生に意見など・・・でも、私は先生が、〉

「いいんだ、大丈夫だから。中に入ろう、そのお茶を入れておくれ」

〈・・・はい〉

診療所に入ると、いつの間にか手馴れた様子でレミィがお茶を入れてくれました。
なんとも心地よい香りが部屋中に漂いました。そして、そのお茶も格別でした。

「レミィ、このお茶は?」

〈私も初めてですが、やすらぎの木の芽だそうです〉

「やすらぎの木?・・・あの静寂の森の?」

静寂の森とは天空で唯一の木々が集まる森です。やすらぎの木というのはそこで1番大きく森の中心にある木のことです。

〈私の母がお世話になっている先生にと、珍しいものなのですか?〉

「あぁ、静寂の森で1番古く大きな神樹だよ、神様がここを創った時に神様が植えた木だと言われている木だ」

〈それで・・・心まで温まるような感じがしますね〉

「本当に温まる・・・そうだ、今度の休みにでもダニエルとアンディを誘って静寂の森に行ってみないか?」

〈えっ?でも、あの森に入るには主天使様の許可がいるのではないのですか?〉

「それなら心配ない、レミィは早速2人に連絡しておいておくれ」

〈はい、分かりました〉

レミィはそう返事をすると私に微笑みました。

〈良かった、先生が元気になって・・・〉

「レミィのおかげだよ」

〈いえ、このお茶のおかげです・・・〉

「いや、レミィのおかげだ、ありがとう」

〈・・・先生にお願いがあります〉

「なんだい?」

〈私を・・・1度でいいんです、先生に愛されたい・・・〉

「・・・」

〈私を1度だけ教え子ではなく・・・愛をください〉

「1度だけなら・・・」

私は私自身とレミィがこれで吹っ切れると根拠も無く思ってしまいました。

〈本当ですか?・・・断られると思ってたのに・・・〉

「1度だけ、今晩だけ一緒に寝よう・・・後で私の部屋に来なさい」

〈はい・・・〉

私はどうしたのでしょう・・・後のことも何も考えず・・・部屋のベッドで待ちました。

〈お邪魔します〉

レミィは自分の枕を抱えて部屋にやってきました。

〈灯を消しますね・・・〉

「あぁ・・・」

レミィは私の隣にきて胸に顔をうずめ、体を寄せました。

〈温かい・・・〉

「レミィもだよ・・・」
私は優しく強く抱きしめました。すると、突然泣き出しました。

「どうしたんだい?」

〈嬉しくて・・・幸せすぎて・・・〉

「レミィ・・・」

私はレミィを教え子の境を越え愛しました・・・

朝、目が覚めるとベットにはレミィの姿はなく、いつも通りお茶の香りが漂っていました。

そして、枕元に手紙が・・・

〈4枚の翼、先生の事だったのですね。そして、その翼は愛する彼女の翼なのですね、強い2人の愛を感じました。これで私も吹っ切れそうな気がします。ご迷惑をかけてすみませんでした。そして、ありがとうございました〉


つづく。

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