空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

『ねこだま』



風が集まる場所・・・そこに1人の男が現れた・・・

「動物の毛・・・何と悲しく禍々しい魂よ・・・その怨念、我が解き放とう・・・」


源 和佳

私は京都のある大学に通う動物と自然をこよなく愛する女流写真家

休日には必ず人が踏み込まない山中に足を運び、動植物の写真を撮っている

「やっぱりここは気持ちいいなぁ」

誰も居ない山中だけど、そこには獣道があった

「今日はもっと奥まで行こうかな・・・」

私はいつもより山の奥へと足を進めた

「何?・・・」

獣道の少し前に腰の高さほどの箱のような物が道を塞いでいた

「これって・・・」

古びたそれはガチャガチャやガチャポンなどと呼ばれる玩具販売機・・・

「まさか、こんな場所に?きっと不法投棄やね・・・」

よくある事だった、どんなに自然を求めてもこの辺りでは人が投棄した多少のゴミは必ずといって言いほどある

「でも、こんな場所で立ってると、まるで妖怪ポストやね・・・」

カシャ!

私はそれを写真におさめた

「何のおもちゃやろ?・・・」

それは好奇心だった

「ねこだま?」

古びて読みづらかったが、ただそう書いてあった

「何やろ?」

私は箱の中を覗き込んだが、汚れて何も見えなかった

「入ってるんかな・・・」

私は箱を揺らした。コロン、コロン・・・

「1つ残ってる?」

どうして私は好奇心を抑えなかったのか

「取り出したいな・・・あれ?」

本来、必ずあるはずの小銭を入れる所がそれには無かった

ガチャガチャ、ガチャ・・・コロン・・・

「あっ、回った!何か出てきた・・・」

それは普通の丸いカプセル、それ自体は古びた様子はなく、綺麗だった

「何だろう・・・」

私は手にとってよく眺めた

「ねこだま・・・」

中には1枚の紙と丸い毛玉が入っていた

「これが玩具?とりあえず家で開けてみよう・・・」


こうして私はそのカプセルを持ち帰った。そして家に帰って早速それを開けてみた

「これがねこだま?何なんだろう・・・」

それはストラップのように紐が付いているわけでもなく、ただの丸い毛の玉だった

「本当に何だろう?」

私はそれと一緒に入っていた紙を見た

「取り扱い説明書・・・」

これは、ねこだまです
これは玩具ではありません
必ず説明にそって必ず説明以外のことをしないでください

1、 まず、ねこだまを取り出してください

2、 その容器は必要なので捨てないでください

3、 次にねこだまを水につけ、十分に水を吸わせてください

4、 この時、使用する水の良質によって出来上がりも違ってきます

5、 注意!必ず水以外での使用を禁じます!

6、 次によく濡らしたねこだまの水切りをしてください、持って水が垂れない程度の湿り方が良い

7、 次にねこだまを濡れたままカプセルに戻してください、しっかりと閉めてください

8、 そして、カプセルを35度~37度程度の温かい場所に10時間放置してください
9、 その10時間は決してカプセルの様子を見ないでください

10、 可愛い猫が出来上がります

以上の事を必ず!守ってください!

「何この説明書?猫ができる?・・・」

私はすぐにつまらない悪ふざけの様に感じた・・・が、

「猫ってぬいぐるみかなぁ・・・」

私は猫好きだった。というよりも気になって仕方なかった・・・

「やってみよう!」

私は説明書を手に取り、ねこだまにミネラルウォーターをかけ、

水を含ませカプセルに入れて出しっぱなしのコタツの中に入れた

「弱でいいよね・・・」

そして、私はそのまま放置した・・・そして、次の日の早朝・・・

〈ニャーオ、ニャーオ・・・〉

私はその声に飛び起きてコタツの中を見た・・・

「猫だ・・・本当に猫だ・・・」

私は目を疑ったが、間違いなく可愛い猫だった

「おいで・・・」

〈ニャー〉

猫は初対面の私にとても甘えた。私は猫をあやしながら隅々まで調べた

「まさかだけど・・・本物の猫だ・・・」

私はその猫に〈レン〉と名づけ飼うことにした・・・



日村 茂

俺は飲み会の帰り、酔いを醒まそうと自動販売機でジュースを買おうとした

チャリン!コロコロ・・・

「くそっ!」

俺は手元を狂わせ、小銭を自動販売機の下に落としてしまった

「はぁー・・・どこいった・・・」

俺はしゃがみ込み、自動販売機の下に手を入れた

「ん?無いぞ・・・ん?何だ?」

何か丸い物が手に当たった、そのまま俺は手にとって取り出した

「何だこれ?ガチャポン?・・・くそっ・・・」

俺は再び自動販売機の下に手を入れてまさぐったが、小銭は消えていた

「おいおい、俺の500円がこんなおもちゃに?勘弁してくれよ・・・」

俺は仕方なくカプセルを手に持って家へと帰った

「はぁ、飲みなおすか」

気分を害した俺は冷蔵庫からビールを取り出した

「まったく、今日はついてない・・・」

俺はストレスでいっぱいだった

「おっ、さっきのがチャポン・・・ねこだま?何だこれ?」

俺はカプセルを開け、中身を取り出した

「何する物なんだ?・・・ん?説明書・・・」

俺は適当に読んだ

「くだらない・・・」

ジャー・・・

俺は水分を含まらせると膨らむくだらない玩具だと思い、飲んでいたビールをかけた

「・・・何だ、何も変わらないじゃないか、くそっ!」

俺はそのままにして眠った・・・そして・・・

〈ウゥゥ・・・苦しい・・・〉

とても嫌な気味悪い声で俺は飛び起きた

「わっ!・・・」

目の前に毛で覆われた大きな何かがうごめいていた・・・

「な、何なんだ!」

それはこっちを見た。それは何かも分からないが、鋭い血走った目で俺を見つめた

「・・・」

声も出せず、体中が震えた

〈我に何をした・・・我が何をした・・・〉

それは震える気味悪い声で繰り返し同じ言葉を言い、俺に近づいてきた

「く、来るな!・・・やめてくれ!」



木下 由紀

私は突然、遊びに行くと友達からの電話で忙しく家の掃除をしていた

ピンポーン!

「えっ!もう来たの?」

〔イェーイ、由紀~〕

「里美、あんた酔ってる?」

〔何?酔ってなんてないわよ〕

何だかんだといっても2人は仲良しです

「さぁ、入って」

〔おじゃましまーす、ってまた掃除してたの?〕

「一応ね」

〔毎回、そんな気を使わなくてもいいのに〕

「だから、一応って」

里美と私は現在・・・しばらく彼氏も居なく、よく2人で居ることが多い

「何?その手に持っている物?」

〔あっ、これ?ここのマンションの玄関に落ちてたの〕

「もう、何でも拾ってこないでよ」

〔でも、懐かしくない?〕

それはガチャポンだった

「そうね、昔はよくやったよね?で、何が入ってるの?」

〔それがね・・・ねこだまって書いてあるんだけど・・・〕

「何だろう?開けてみようよ」

〔うん〕

里美はカプセルを開けた

「何?」

〔何だろう?ただの毛玉だけど〕

「説明書、入ってるじゃん」

〔うん・・・〕

里美は説明書を読んだ

「何?」

〔よく分からないけど、水につけておくと猫になるらしいよ〕

「何それ、可愛い」

〔そういえば、昔にもあったよね?水に浮かべておくと何倍にもなるおもちゃ〕

「うん、あった、あった・・・やってみようよ」

〔そうだね〕

「貸して、もうお風呂、入ったから浮かべておくよ」

〔えぇ、毛だらけになりそう〕

「いいの、どうせもう変えなきゃって思ってたから」

そうして、私は里美からそれを受け取り、風呂の中に入れ、ふたをした

〔どんな風になるのかな?〕

「玩具だからね、たいした物じゃないと思うけど」

〔じゃあ、明日は休みだし、ゆっくり飲みながら待ちましょうか?〕

「あんた、はじめからそれが目的でしょ?」

〔ははは〕

そして、私たちは酔いつぶれて眠ってしまった・・・そして、夜中・・・

里美がトイレに行った時・・・

〔キャーッ!〕

里美の叫び声・・・私は慌てて駆け寄った

「キャーッ!」


終わり。


それから各地で似たような多数の解決できない殺人事件が多発した

その現場には身元の分からない動物の毛とカプセルと何も書かれていない紙切れが必ず残されているという・・・


さて、この謎だらけの物語、僕のファンで僕の物語を読み続けてくれると、

いずれ解ります!その時までお楽しみに・・・

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