空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

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『ぼくらはみんな』・12話~最終話



楽しみにしながら隣のオリに移ると、ライオンさんに負けないくらい強そうで大きくて、とても美しい模様の猫が横になっていた。

「なんてキレイな猫なんだ・・・」

トラという猫はライオンさんよりもっとボクらに近いように見えた。

〈坊や?・・・〉

「えっ?」

〈・・・そうよね・・・あの子がここに戻ってくるはずないわよね・・・〉

「ボクは旅をするノラ猫のグリーンです」

〈ノラ猫さんかぁ、小さくて可愛い・・・でも、旅をしているなんて凄いわね、子供じゃないんでしょ?〉

「はい、これでも親離れはずっと以前にしました」

〈親離れか・・・〉

「そういえば、坊やって言っていたような気がしたけど・・・トラさん、子供がいるの?」

〈うん、居たの・・・3匹の可愛い子が・・・〉

「居たって・・・その3匹の子供たちは?」

〈まだ、乳離れもしないうちに人間に奪われた・・・〉

「えっ!どうして?」

トラさんは涙を流した。

〈それも分からないの・・・あの子たちは何処へ連れていかれたの?あの子たちは大丈夫かしら?・・・ここで見なかった?〉

「・・・ごめんなさい、見てません・・・」

〈どうして?あの子たちにまだ何も教えてないのに・・・生きているかしら・・・〉

「・・・大丈夫です、猫の仲間なら本能できっと・・・」

〈でも、人間は怖くて残忍だから・・・〉

「大丈夫です、それは1部の人間だけです。きっと、どこかで元気に暮らしています」

〈そうね、きっと生きているわね・・・でも、本能だけでは立派な大人にはなれないのよ、あなたもお母さんにいろいろ教わったでしょ?〉

「はい・・・」

〈どうせ、人間に飼われるのだから関係ない・・・そう思う?〉

「いえ・・・」

〈せめて、私のおっぱいをねだらなくなるまでは一緒に居たかったな・・・〉

「・・・」

〈あなた小さいからこっちに来られない?〉

「行けますよ」

〈少しでいいからこの胸で抱かせてくれないかな・・・〉

「・・・分かりました」

ボクはオリの中に入ってトラさんの胸に抱かれた。

とても温かく、母さんを思い出した・・・

「トラさんは人間が憎い?」

〈あなたは?〉

「ボクたちノラ猫は人間と共存していかなきゃ生きていけないから・・・」

〈そうね〉

「人間って不思議なんだ、とても意地悪な人間も居れば、優しい人間も居るから・・・それが分からないから容易に近づかないけど」

〈そう・・・私は憎いな・・・子供を奪われ、仲間たちの多くも殺された・・・保護だと言ってここに閉じ込めて・・・〉

トラさんはまた涙を流した。

「泣かないでください・・・どう慰めたらいいか分からないけど、必ずまた会いにきます」

〈本当に?優しいのね〉

「はい、必ず来ます。だから・・・またこうして胸に抱いてください」

〈いいの?〉

「とても気持ちがいいんです、ボクも母さんを思い出せるし・・・」

〈そう、じゃあ約束ね〉

「はい、約束です」

そうして、約束を交わしてボクはトラさんから離れた。

〈沢山、大変なことがあるだろうけど、頑張るのよ〉

「はい」

〈寂しくなったらいつでも甘えに来ていいからね〉

「はい」

〈気をつけてね・・・〉

「はい・・・」

そして、ボクは涙をこらえ、先に進んだ。

「次も仲間かなぁ・・・ヤマネコ?」




第13話・『ヤマネコ』

そっとボクが覗き込むと、ヤマネコは待っていたかのように声をかけた。

〈やっぱり、隣で声が聞こえたからきっと猫だと思ったんだ、君はノラヘイの友達でしょ?〉

そう声をかけてきたヤマネコはボクより一回りだけ大きいだけで、その姿は猫そのものだった。

「ボクは旅をするノラ猫、グリーン。ノラヘイとは1度会っただけだから友達と言えるかはまだ分からないけど知っているよ」

〈そうなんだ・・・でも、面白い奴だろ?〉

「うん、かなり変わってるね。君はノラヘイと話したの?」

〈うん、沢山・・・山のことを教えてくれた〉

「山のこと?・・・どんなこと?」

〈かるら、ってボクと同じヤマネコの話〉

「かるら?・・・」

〈うん、山で暮らすヤマネコの子の物語だよ、ボクはヤマネコだけど、まったくここしか知らないんだ〉

「そっか、でもノラヘイが物語を?」

〈そうだよ、普段はおかしな猫だけどね〉

「うん・・・」

〈とにかく楽しい夜だった、友達になったんだ〉

「友達?」

〈うん、君も友達になってくれるかい?〉

「うん・・・でも、友達って何をどうすればいいの?」

ボクは友達というものがいまひとつ分からなかった。

〈何をするってことじゃないよ、友達と思うことに意味があるんだ〉

「思うことに意味があるの?」

〈そうだよ、ボクらは友達、そう思うことに意味があるんだ〉

「ボクらは友達・・・」

〈そう、ボクらは友達〉

「うん、なんとなく嬉しい」

〈うん、どんなに離れたってそれは変わらない、だから寂しくない・・・ただの言葉だけど、それだけで想える、頑張れる〉

「・・・いい言葉だね」

〈そうだろ?これもみんなノラヘイが教えてくれたんだよ〉

「そうか・・・ボクも今度あったらノラヘイに言ってみよう・・・友達になろうって」

〈うん、でもきっとこう言うよ、もう友達やんって〉

「そうだね」

ボクたちは笑った、本当にとても楽しかった。

〈さぁ、もう夜が明けるよ、行くんだろ?次で最後のオリだよ〉

「最後のオリ・・・でも、いっぱいみんなと約束したから、また必ず戻ってくるよ」

〈その時はもちろんボクのところにも来てくれるよね?〉

「もちろん、友達だからね」

〈じゃあ約束なんてしなくてもいいね〉

「そうだね」

〈じゃあ、楽しい旅をね〉

「ありがとう、またね」

〈またね・・・〉

そうして、ボクは初めて出来た友達と別れを告げ、最後のオリへと進んだ。

「オジロワシ?・・・」






『最終話』

「ワシってたしか大きな鳥じゃなかったかな・・・」

どこかで聞いて、鳥だということは知っていた。

「・・・あれ?・・・誰もいない・・・」

オリの中は止まり木があるだけで空っぽだった。

すると・・・

《間に合った・・・》

と、オリをすり抜けて飛んできたのはあの小鳥さんだった。

「ん?どうしたの?さよならを言いにきてくれたの?」

《いえ、ここが私のオリだから、帰ってきたんです》

「ここが小鳥さんの?・・・オジロワシって・・・誰もいないからここを借りているの?」

《いえ、私のオリです・・・見ていてください・・・》

そう言うと、小鳥さんは止まり木の上をチョコチョコと動き、暗い隅っこに移動した。

「えっ!!えっ・・・」

小鳥さんはボクの目の前で姿形を変えた。

大きく・・・鋭いくちばしと足に・・・勇姿あふれる姿に・・・

「オジロワシ?・・・どうなってるの?・・・小鳥さんがワシになった・・・」

《そうです、これが本当の私の姿なのです・・・私は月光にあたる時だけ姿を変えることができる月光鳥なのです・・・不思議でしょ?でも、この不思議、心当たりありませんか?》

「ニャジロウさん?・・・」

《そのとおりです。私を変えてくれたのはニャジロウさんです。私がケガをして飛べなくなって、ここに来て、空を知らないと嘆くと、優雅に空を飛べる自由な鳥があまりにかわいそうだといって・・・》

「・・・カバさんの所で会った時はノラヘイの事しか言ってなかったから・・・」

《ノラヘイさんは私が変わってから使命を与えてくれたのです、自由になった分、誰かの役に立てと》

「そうなんだ・・・でも、自由になれたのにオリ中へ戻るなんて・・・」

《初めは嬉しくて飛び回って、どこかへ飛んで行こうとも思いました。でも、その前にここで暮らすみんなに会ってからいこうと思い・・・そして、みんなに会って私だけ望みを叶え、自由になってこのまま飛んでいってしまっていいのだろうか?私に何かできることがないのだろうか?そう思いました。そんな時にノラヘイさんが言ってくれたのです》

「そうなんだ・・・ワシさんは優しくてカッコイイね」

《いえ、私はこことここに住むみんなが大好きなだけです》

「ずっとそうするの?」

《もちろんです、昼はこの姿で、夜には月光鳥となってみんなと共にみんなのために飛びます》

「みんなのために飛ぶ・・・」

《はい・・・もう夜が明けますね・・・旅を続けるのでしょ?》

「うん、でも1度、ニャジロウさんとノラヘイに会いに戻ろうと思ってるんだ」

《そうですか、よろしくお伝えください》

「うん・・・」

《ここは楽しかったですか?》

「うん・・・」

ボクの心は複雑だった。

こんなに寂しさがこみ上げるのは旅を始めてから初めてだった。

《それは良かった・・・また来てくれますか?》

「うん、約束をいっぱいしたからね」

《楽しみに待っています・・・それでは最後にもらってほしいものがあるのですが、少しだけ待っていただけますか?》

「待てるけど・・・ボクに何かくれるの?」

《はい、少しここで待っていてください・・・》

そう言って再び小鳥になって飛んでいった・・・

そして、しばらくして戻ってくると小鳥さんは羽根を1枚通した輪っかをボクの首にかけた。

「羽根の首飾り・・・」

《私の羽根です、だから月光にあたると小さく、月光に当たっていない時は大きく、形も色も変わります》

「痛くなかった?」

《平気です》

「素敵なものありがとう・・・でも、これどうやって作ったの?」

《これは私の羽根にレッサーパンダの子が小さな牙で穴をあけ、その穴にライオンさんからもらったヒゲを通し、チンパンジーさんに結んでもらいました》

「みんなが・・・ありがとう・・・大切にするね・・・」

ボクは嬉しさのあまり泣いた・・・

《別れ際に泣かないで下さい、旅をして、またここに立ち寄ってくれるのでしょ?》

「うん・・・必ずまた来るよ・・・」

《また約束が増えましたね》

「うん」

《では、また会う日まで・・・》

「うん、また会う日まで・・・」

ボクは別れを告げ、出口に向かい、外に出た・・・

その時、微かにみんなの声が聞こえたような気がした。

「みんなありがとう・・・」

ボクは動物園に頭を下げ、走った・・・ニャジロウさんのもとへ・・・


そして・・・

グリーンは動物園を出た後、ニャジロウのところで数日を過ごし、再び動物園へ戻りました。

そして、グリーンはあての無い旅を止め、動物園に永住しました。


終わり。

出演

チンパンジー
〈絶対、人より賢くなってやる!〉

オランウータン
〈苦しゅうない、近うよれ〉

ゴリラ
〈あの人は今、どこ・・・〉

アシカ
〈オレ様はキングだ!〉

ホッキョクグマ
〈たくさん雪、降らないかなぁ〉

メガネグマ
〈オリの外は危険だと言ってるだろ!〉

ゾウ
〈また空の散歩がしたいわ、またニャジロウさんに会いたいなぁ〉

コアラ
〈オレ見て楽しい?・・・オレ、もっと愛想良くするよ〉

カンガルー
〈シュッ!シュッ!君もボクシングやらないか?〉

ラクダ
〈楽園・・・まだなのか・・・〉

ペンギン
1〈歌、聴いて!〉
2〈楽しくなるよ!〉
3〈君も一緒に歌おうよ!〉

カバ
〈バフ・バフ・フガフガ・・・〉
《みんな変わっているが仲間じゃ》

レッサーパンダ
〈もう寂しくないよ、独りじゃないもん〉

キリン
〈ここで私は幸せよ〉

オオカミ
〈オレの事はいい、血を受け継ぐ犬たちをよろしく頼む〉

ライオン
〈誇り高く生きよ〉

トラ
〈みんな、見た目と違って強くないのよ・・・守ってあげてね〉

ヤマネコ
〈遠くだって友達、心だけでも友達だよ〉

オジロワシ
《ボクがこの翼で、ニャジロウさんにもらった力でみんなに笑顔になってもらうんだ》

ノラヘイ
「ほんまに猫になってよかったわ、どこかで会いましょ」

ニャジロウ
「信じれば奇跡もおきるぜ」


そして、
グリーン
「みんな大好きだよ・・・ありがとう・・・

ぼくらはみんな・・・仲間

ぼくらはみんな・・・精一杯

ぼくらはみんな生きている!」



最後までのご観覧、ありがとうございましたm(__)m

何でだろ?ハッピーエンドなのに編集してて泣いちゃった。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。


動物園・・・ずっとずっとずっと昔、とにかく嬉しくてキャッキャ騒いで喜んだ

ずっとずっと昔、動物が好きで愛らしくてジッと観察した

ずっと昔、動物を通して世界を見ようとした

そして、思った・・・

ヘイの中でも外でも、姿形が違っても僕は言いたい!

「ぼくら」と・・・


本当に最後まで読んでくれた全ての人に感謝しますm(__)m

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