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2010.05.29
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カテゴリ: box
不安定に揺れる美莉さんのモニターの数値を眺めながら、僕はずっと悩んでいた。

・・・僕はどうするべき、だったんだろう。

あの日 、慶介君が視界に入ったときに、彼女を思わず抱き寄せてしまった時のこと。

・・・後悔。は、ない。

目の前で、自分に与えられた選択肢が消えるのをただ見てる、なんてことはできなかった。

・・・だから。抱き寄せた。

慶介くんに与えられるべき1つの可能性、
彼女から真実を聞きだせる可能性、が、確実に壊れることを分かった上で。

そのとき僕は思った。


本当に、あきらめられるものか、じっくりと考えてみるといい。』

それは、ただ、出会った日から慶介という恋人のいた美莉さんに、一目ぼれしてしまい、
一切のチャンスがなかった僕がもらうべきハンデ、のようなつもりでいたんだ。

だけど、今、事態は、そんな簡単なものではなくなっている。

・・・彼は、なぜ、連絡してこない?本当に、、あきらめられる、はずなんて、あるはずないだろう?

自分が、軽い先制攻撃のつもりで行った行為が、ここまでの効果を与えることになるなんて。

もちろん、抱き寄せたあの夜から、美莉さんと僕との間で、何かが始まっていたのなら、こんなこと、悩むことはないのだが、そううまくはいくはずもなかった。

1週間。
彼女をそばで見てきた。
最愛の彼と別れ、それでも僕の前では気丈な表情を見せ、外出許可を出させ、
そして、彼との思い出を、少しずつ片付けては、またいっそう弱って帰ってきた彼女。

病気の安静のため、では、ない。
ただ、恋をしっかりと終わらせるために。
きっと人生最後の恋だと思っている恋を、自分自身の手で。
そのための気力体力を温存するために。

それでもなお、日に日に弱っていく彼女。



・・・誰にも、、、僕にも、、頼ろうとせず。

何度も、彼に連絡するべきだと思った。
このままでは、本当に、危ないと。

だけど、どうしても、できなかった。

彼女の意思を優先した、と言ってしまいたい。
だけど、それだけではないことは自分が一番よく分かっている。

彼に返したくなかったのだ。
僕との間に、何も、芽生えないとしても。それでも。

嫉妬。

それも、醜い嫉妬。

そして、連絡をしてこない彼に対する、侮りもあった。

・・・なぜ、気づかない。どこまで、美莉さんを苦しめればいいんだ?

気づくチャンスを奪った自分を棚に上げて、そんな風に。
醜い自分を棚に上げて、今度は、彼女の元にこない彼に苛立っている。

美莉さんのモニターをにらむ。不安定な数値。眠っているはずなのに。

・・・僕はどうするべき、なんだろう。

医者としての僕が、医学的処置の施せない、彼女の心の傷に。
そして、ただの自分としての僕も、その傷には触れさせてももらえず。

合鍵を返しに行ったと言う今日。
彼女の中で、最後の希望が消えたのかもしれない。
じゃあ、次に目が覚めるときには。。

・・・やっぱり、、、これ以上は。

僕は、どうするべき、なのか、なんて、本当は分かっている。

ずるく醜い自分。
男として頼られることのない僕、
せめて、医者としては、彼女の為に、なることをしたい。
それが職務を逸脱しているものだとしても。

そう考えた時に、かなり前に帰ったはずの、高崎先生が姿を見せた。美莉さんの様子を見に行くと言う。やはり、先生も気になっているはずで。主治医としても、、父親としても。その後姿を見送りながら、僕は、

やっぱり、彼に知らせなくては。

と、やっと、心を決める。

僕は目を閉じ、ため息をつく。

僕はあのとき、ちゃんと気づくべきだった。
僕が僕の可能性を手にするためにうばったのは、
慶介君が美莉さんを取り戻す可能性、だけ、でなく、
美莉さんが、慶介君に取り戻される可能性も、だったんだ。

何度も何度も、目を閉じたまま、自分に言い聞かせる。

どのくらいそうしていただろう。
最後に、

・・・彼の腕の中に戻れば、きっと、彼女の数値も落ち着くだろう。そう、何よりも、彼女のためなんだ。

そう考え、美莉さんのモニターに目をやった僕は、その異変に気づいた。


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最終更新日  2010.05.30 01:30:46
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