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November 20, 2024
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カテゴリ: 文化

海と人のアーカイブ

瀬戸内海で暮らしてきた人々の文化遺産を収集し、未来に伝える瀬戸内海歴史民俗資料館(香川県高松市)が 11 3 日に開館 50 周年を迎える。その活動や展望について、館長の松岡明子さん、前館長で現在は専門職員の田井静明さんに聞いた。

古来、人と物が交流する海の道として栄えた瀬戸内海。豊かな自然と結びついた生活の中で、人々は特色ある文化を育んできた。

瀬戸内海歴史民俗資料館は、その文化を伝える資料を収集・保管するとともに総合的な研究を行い、成果を展示・公開する、いわば〝海と人のアーカイブ〟。

1973 48 年( 11 3 日に設立され、瀬戸内海をテーマとする広域資料館として沿岸の 11 府県を対象に調査研究と展示を行っている。

松岡さんによると、収蔵する民俗資料は約 3 万点。そのうち、「瀬戸内海および周辺地域の船図および船大工用具」「西日本の瀬尾威運搬具コレクション」など 3 件、合計 5966 点の資料が国の重要有形文化財に指定されているという。田井さんも、「高度経済成長期までの歴史や風土、暮らし方をたどることができる最後の証しかもしれません」と語る貴重な品々である。

資料館は、 7 ㍍の高低差を生かした大小 10 の正方形の展示室が中庭を囲む回廊式の構造。石積みの外壁には建設工事で掘り出されたこの地の石を使っている。日本建築学会賞に選ばれるなど、香川県における戦後モダニズム建築の代表として高く評価されており、建築に関心を持つ若い人の来館も増えている。

開館 50 周年の今年は、地質学や漁業、環境など五つの視点から瀬戸内海を見る連続セミナーなど、多彩な記念事業を行っている。

アーティストと一緒に漁網を編むことを通して民俗資料と向き合うプロジェクト「そらあみ」も、その一つ。網に使う糸を染めるところから始め、延べ約 560 人が参加。昔ながらの道具で網を編んだ。

民俗資料館は実際に使われていた物。見るだけでは伝わりにくい。「かつて漁師さんたちが網小屋で話を交わしながら網を広げていたように、人のつながり、古い民具とのつながりを呼び戻そう取り組みました」と語る松岡さんも、今回、道具をつって初めて発見することがあったという。

事業に参加するアーティストたちには、古い民具のかたちやたたずまいの向こうにある人の存在、失われたものを感じ取る力、想像する力を感じるそうだ。

「新しい分野の人たちと一緒に考えることで与えられるヒントも少なくありません。 50 周年を機に取り組んでいる試みから得ているものは、とても大きいと感じています」

瀬戸内海歴史民俗資料館(香川県高松市)

開館 50 年の歩みと未来

「地域の資料館や博物館は、その地域の文化にとって最後の砦であり、セーフティーネット(安全網)だと思うのです」

こう話す田井さんは、同時代性を意識した資料館活動の重要性も強調する。

多様性が重視される一方で大量生産の時代である現代は、「一つの資料で地域を代表しているとは言い切れない時代。地域社会が多様な人で成り立っていることが伝えづらくなっているのではないでしょうか」とし、収集や調査研究では、そこに住み暮らした人の〝思い〟が必要だと言う。

「その人はなぜ、その道具を使ったのか。どう使ったのか。なぜ残ったのか。そんな『ヒント』や『コト』の情報に立ち返る必要があるのではないでしょうか。地域の魅力を発信するときは『モノ』と共に、どのような〝物語〟を収集しておくかが重要だと思います」

開館から 50 周年を迎える 11 3 日には記念のシンポジウムを開く。

田井さんは、「若い世代の皆さんや、ほかの地域から移住した方を含めて、資料館から新しい議論や人とのつながりを生まれることを期待しています」と。

民俗資料の見方や活用には、まだ多くの可能性があると行く松岡さん。「幅広い人に響く多方向の試みを続けることで地域に関心を持ち、そのまま未来を考える新しい視点を持つ人が増えれば、素量官として大きな意味を持つ活動になります。今後も、大切で、面白いテーマだという発信を続けていきます」と語る。

【文化 Culture 】聖教 023.10.26






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Last updated  November 20, 2024 05:05:24 AMコメント(0) | コメントを書く
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