花組『テンダー・グリーン』

<第8回>

▽花組公演 ミュージカル・プレイ『テンダー・グリーン』 宝塚大劇場1985年9月~11月
作・演出 ・・・正塚晴彦
作品紹介 ・・・「未来社会」に生きる若者が、見知らぬ森の中に迷い込み、そこに住む人間性豊かな人々によって愛の尊さを知るという現代のロマンスを未来に置き換えてファンタスティックに描いた作品。正塚先生の大劇場デビュー作。
作品評 ★★★★★★★★★☆
鑑賞日 ・・・2002年9月3日

▽未来の地球で、植物も絶滅し、人類はドームの中に都市文明を築き生活しているのだが、資源が枯渇し、支配者たちは地球脱出計画を進めており、その計画遂行のため、新人類と呼ばれる人間の感情を極度に抑制し,戦闘能力だけを伸ばすよう訓練された人間が作り出されていたという設定。その一人である主人公ソーン( 高汐巴 さん)は、ふとしたきっかけで自分の置かれた立場を知りドームを脱出するのだが、脱出機の故障である森に不時着する。そこで、数百年前に都市文明を捨て、「森」の植物と共存しているカイト( 大浦みずき さん)たち一族に助けられ、言葉を使わず思いを伝え合えたり、ハイレベルな感情コントロールにより生物反応を消滅させたり、蜃気楼現象を起こし「森」の存在を隠したりできる人間の存在を知る。そして、ソーンは献身的に自分の世話をし、心を開き接してくれるメイ( 秋篠美帆 さん)の優しい心にふれて、いつしかソーンも心開き、メイに対して「愛しい」という感情を抱くようになる。ここで当然のごとく、ソーンはその支配者たちに追われ、ついにはメイ共々、ソーンと同じように教育されたカーン( 朝香じゅん さん)に捕われ、メイはソーンを助けるため殺されてしまう。
とまぁ、このようにストーリーは極めて胡散臭いファミリーミュージカルっぽいものなんだけれども、作者の伝えたいこと(正塚作品のテーマは常に「命の尊さ」)が明確で、それをペイさん(高汐巴)が完璧に演じているため、全くアホらしく見えず、ここという場面、例えば、後ろから近づいてきた少年(ナーブ)を思わず殴ってしまうのだが、そのことを後悔し、その子を思い気遣うという気持ちが最後には伝わり分かり合える場面などでは、ぐっと胸を打たれるものがありました。また、カーンの「愛しているとはどういうことだ」という問いに対するソーンの答え 「命を賭けても、守る価値があるということだ」 には、正塚作品の原点があるようにも思います。
さらに、オープニングとラストで歌われる高橋城先生作曲による名曲『心の翼』も感動的でケチのつけようがありません。
ちなみに、この当時は照明の関係などで今よりもかなりメイクが濃い(目元が特に青っぽい)のだけれど、僕はこの頃のメイクの方が好きで、秋篠さんなどもとても美しく見えました。
緑を大切に

一人でも多くの人に、この作品を見ていただき、その素晴らしさに共感してもらいたい。何かしらの機会に再放送されることを切に望みます。

※併演作品…ミュージカル・アドベンチャー『アンドロジェニー~麗しき乙女たち~』 作・演出 岡田敬二でした。





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