なぜ日本の医者は、何種類もの薬をたくさん処方するのだろうか
「入院中心主義」のために、患者を病棟でおとなしく生活させることが薬物療法の目的になっている
▽一度多剤処方の習慣がついた医師は、単剤処方が不安になる
▽患者、家族が薬のことを医師に任せきりにしている
▽医療保険の審査が多剤処方に甘すぎる――。
多くの専門家が、著書や論文でこの問題を指摘している。
日本精神神経学会は米精神医学会が97年に発表した「治療ガイドライン」を翻訳して出版したり、日本独自のガイドラインづくりをめざしたりするなど、標準的な治療法の普及に努めている。
日本精神神経学会の佐藤光源理事長(東北福祉大大学院教授)はこう訴える。
「精神科の薬の副作用は体に有害なだけでなく、患者の社会参加を阻むことにつながり、深刻な問題だ。
薬の使用にあたって、よく『さじ加減』という言葉が使われるが、経験に頼って多剤を大量に処方するのは多くの場合、
有害でしかない」
●統合失調症の薬
50年代にクロルプロマジン、ハロペリドールなど今も広く使われている抗精神病薬が登場し、統合失調症の薬物療法が始まった。
80年代に入り、意欲の喪失、抑うつなどの陰性症状にも効果があり、副作用が起きにくい
「非定型抗精神病薬」と呼ばれる薬が開発された。日本でも90年代末以降4種類の薬が発売され、
薬物療法の改革に役立つのではないかと期待されている。
●家族のための情報
全家連(事務局03・3845・5084)は機関誌「ぜんかれん」の5月号と9月号で多剤大量処方の特集を掲載。
山梨県立北病院の藤井康男副院長が問題点と解決法を分かりやすく説いている。11月号でも薬物療法の特集を予定している。
7月に星和書店から出た「分裂病治癒者のカルテ」(西川正著、3300円)は、カルテをもとに薬物療法を具体的に紹介している。
西川医師は「患者や家族に読んでもらい、相互理解に役立てて欲しい」と話している。
(朝日新聞 2002/09/15)