♪♪健康でいることが一番・・・!

♪♪健康でいることが一番・・・!

Vol. 18脱「薬漬け」の道探る【1】


【脱「薬漬け」の道探る】


-----世界に例ない処方量 <変わる精神医療>-----


【 1 】



入院患者に処方された薬がナースステーションに用意される
どんどん増える薬の数。入院時2剤がいつの間にか7、8種類に。

 川崎市に住む男性(49)が3度目の入院をしたのは8年前のことだ。

「身の回りで何かえたいの知れないものが動いている」という不安感が募る。
テレビから流れてくるとりとめのない言葉にも一喜一憂する。そんな日々を送っているうちに息苦しくなってきた。

開放病棟で9カ月過ごした。入ったばかりのころは2種類の薬で済んでいた。

ところが、体が震えていたのでそれを止める薬も飲むようになり、同じ効果がある別の薬も加わる……薬の副作用で便秘になり、
下剤も処方された。

退院するころは7、8種類を、朝、昼、晩の毎食後と就寝前に飲んでいた。

「薬が増えるのにつれ、まず活字が読めなくなった。新聞記事を読んでいても、論理の流れを追えないんです」

やがて、何をするにも意欲がわかなくなった。デイケアの単純作業をこなすのが精いっぱい。病棟に帰るとベッドに潜り込む。

リハビリ参加時に書いた自己紹介の趣味の欄には「寝ること」と記した。

退院。生活訓練施設に通ったのちアパートで生活している。再発を防ぐため薬は手放せない。
だが、いまは4種類計6錠を就寝前に一度飲むだけ。ここまで減らすのに6年かかった。

医師から「精神分裂病(統合失調症)」と告げられ、薬の名前を教えてもらったのは2年前。
それまでは病名も、どんな薬かも知らないで、言われるままに飲んでいた。

「入院中は早く退院したくて無理して薬を飲んだ。
退院後も大量の薬を飲んでいるうちは医者に薬のことを質問する気力さえわかなかった」

抗精神病薬の使い方は日本と海外では大きく異なっている。

横浜市で8月に開かれた世界精神医学会に合わせ、全国精神障害者家族会連合会(全家連)が「多剤.大量処方から抜け出す」
と題した市民公開講座を主催した。ここで、患者や家族ら450人に慶応大医学部精神.神経科の稲垣中医師が9カ国のデータを示した。

薬が1剤という患者の割合は、日本が20%なのに対し、米国は61.7%、旧西ドイツ62.9%、イタリア52.2%など。

一方、4剤以上処方している割合は、日本では11.5%あるのに、米国、ブラジル、旧ユーゴ、パナマなどではゼロ。
イタリアが1.1%、ハンガリーが1.7%だった。


ページトップへ



なぜ日本の医者は、何種類もの薬をたくさん処方するのだろうか

「入院中心主義」のために、患者を病棟でおとなしく生活させることが薬物療法の目的になっている
▽一度多剤処方の習慣がついた医師は、単剤処方が不安になる
▽患者、家族が薬のことを医師に任せきりにしている
▽医療保険の審査が多剤処方に甘すぎる――。

 多くの専門家が、著書や論文でこの問題を指摘している。

日本精神神経学会は米精神医学会が97年に発表した「治療ガイドライン」を翻訳して出版したり、日本独自のガイドラインづくりをめざしたりするなど、標準的な治療法の普及に努めている。

日本精神神経学会の佐藤光源理事長(東北福祉大大学院教授)はこう訴える。

「精神科の薬の副作用は体に有害なだけでなく、患者の社会参加を阻むことにつながり、深刻な問題だ。
薬の使用にあたって、よく『さじ加減』という言葉が使われるが、経験に頼って多剤を大量に処方するのは多くの場合、
有害でしかない」

 ●統合失調症の薬

 50年代にクロルプロマジン、ハロペリドールなど今も広く使われている抗精神病薬が登場し、統合失調症の薬物療法が始まった。
80年代に入り、意欲の喪失、抑うつなどの陰性症状にも効果があり、副作用が起きにくい
「非定型抗精神病薬」と呼ばれる薬が開発された。日本でも90年代末以降4種類の薬が発売され、
薬物療法の改革に役立つのではないかと期待されている。

 ●家族のための情報

 全家連(事務局03・3845・5084)は機関誌「ぜんかれん」の5月号と9月号で多剤大量処方の特集を掲載。
山梨県立北病院の藤井康男副院長が問題点と解決法を分かりやすく説いている。11月号でも薬物療法の特集を予定している。
7月に星和書店から出た「分裂病治癒者のカルテ」(西川正著、3300円)は、カルテをもとに薬物療法を具体的に紹介している。
西川医師は「患者や家族に読んでもらい、相互理解に役立てて欲しい」と話している。

(朝日新聞 2002/09/15)

【 2 】へ



ページトップへ



BBS


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: