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自分を変える若干分量の勇気

　やがて意を決して歩き始めたが自信がない。そこで勇気を出して工事現場に立っているガードマンにたずねた。歩き出した方向はまちがってはいなかった。「この地図にあるコンビニはあのコンビニですか？」とたずねたら「違う」といわれた。この時点で地図を頼りにするのをあきらめた。この道をまっすぐ行くと、ほら、ここから見えるだろ、あの郵便局を超えた通りを右折して、それから最初の通りを今度は左折して…一生懸命覚えた。その通り歩き出した。が、またすぐにわからなくなった。

　三人の女性が自転車を降りて話をしているのを見た。ここでたずねなければほんとに迷子になってしまう。恥ずかしかったが意を決してたずねた。この道をまっすぐにいって、ほら今車が曲がったでしょう、あそこを左折する、そうしたらすぐわかるから。実際すぐにわかった。もっと迷うことを見越して早くきたのだが、こうして二人に質問をしたおかげで無事講演会場に着くことができた。思いがけず早く着いてしまったので、どうしたものか迷ったのだが、いつもたずねないで迷っていたことを思い出して、こんなふうに早々にたずねるべきだった、と思った。

　最初が肝心である。道をたずねることを何とも思わない人がいるのは知っている。僕にとっては泳げないのにプールに飛びこむようなこわさがある。最初はプールだったのに、そのうち谷底にジャンプするかのように恐怖が膨らんでしまう。一度成功体験があれば次からは簡単になる。

　いつもと違うふうにやってみようと思って勇気を出して挑戦すれば思いがけずうまく行くことがある。そういう成功体験を重ねることで最初はとてもできないと思っていたこともできるようになることがある。

　子どもが帰ってきた時にがみがみ叱らないで、「おかえり」といおう。朝、大きな声で、何時かわかってるの、「早く起きなさい」といわないで、気持ちよく「おはよう」と声をかけてみよう。何かを頼まれた時、「自分のことだから自分でしなさい」といわないで気持ちよく引き受けてみよう。平穏無事な生活を送っているからといって、こんなのでいいのかな、と思わないでおこう。ことさら問題を探し出すことはやめよう…

　こんなちょっとした決心が人生を必ず変える。まわりの人が変わるかはわからないし、変えようと思うのはまちがっている。しかし、私だけは変えられる。私しか変えられない。

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