舞い降りた天使は闇夜を照らす8

僕は疑問に思った事を口にした。
「なんで如月さんは僕の事を好きなんだ? その前に何で僕の事を知っているんだ?」



その質問に健也はあぁと苦笑しながら説明を始めた。



「プリクラを男三人で前に取ったろ? あの小さいゲーセンで。」
僕はそれで合点した。



確かあの時は男性だけでプリクラコーナーに居たので店員に注意されたのだ。



でもなんでまたそのプリクラを如月さんが見たのだろうと健也に僕は尋ねた。



健也は誰にも言うなよと前置きをして


「俺と青山はいい感じなんだ、まだヤッてはいないけどキスはした。 だからたまたま幸一も写っているプリクラを青山に渡したんだ。」



僕は立ち眩みがした。
嘘ーン?
そうなん?
健也は手が早いので有名だったが…
嘘ーン!!



健也は今日この合コンに来ている人間全員が二人の行く末を見守ってくれようとしている。
でも僕にそんなこと出来るだろうか?



「初対面で初体験」



ラッパーよろしく韻を踏んでみた。



さて、戻りますか~と健也が言い僕たちは鏡の前で髪の毛をセットして顔を洗い個室に戻る事にした。



「あ、言うの忘れたけど誠と青山の友達(バタコさん)。付き合ってるから、そこんとこよろしく」


えー
聞いてないっすよ!
みんな何でそんなに簡単に恋人同士になれるのー?!



健也は「忘れないうちに」とコンドームを僕にくれた。
ゴム自分で買ったんだろ? 俺からのはお守り代わりに持ってろよ。



そう言うと僕達が飲んでいる個室へ健也は鼻歌交じりに足を向けた。


僕たちのいる個室に戻ると誠が女の子三人に熱心に鉄道の話をしていた。



健也は瞬時に「いやーしかし飯島愛が死んだのにはびっくりしたよね~」と話題を変えながら席に着いた。



僕も「うん、なんか凄いショックだった」と言いながら健也にならって席に着いた。



女の子たちはやっと話題が変わったと少し興奮気味に飯島愛の話題に噛みついてきた。



特に青山さんが健也と言葉を多く交わして周りの者が神妙に、ときに笑いも交えて会話を続けた。
助かった、もうちょっと遅れていたら誠はいつも持ち歩いている鉄道の切り抜きをファイルしたものを女の子たちに見せていたかもしれない。
そうなってしまったらもう目も当てられない。



僕が運ばれてきたビールのピッチャーを手に取ろうとすると如月さんが「お注ぎします」と両手を僕に向けてきた、きっと私に渡して下さいという意味なのだろう。 



僕はまだ全然量の減っていないピッチャーを慎重に如月さんに手渡した。
そして僕がグラスを両手で構える



泡も液体の量も絶妙な具合にビールを注いでくれた。
こういう事にはなれているのかな?と僕は思った。



なんせF女子大学だ。
合コンの話は引く手あまただろう。
でも健也が言うには「如月さんは幸一、つまり僕が気になっている」と言う。
信じられないけれど如月さんは僕の正面に座り僕の目をその大きな目で見つめてくる。
気がつくと不意に僕の事を見ていてそれに僕が気がつくと慌てて目を逸らす。



神様、信じちゃって良いのですか?
童貞卒業とかそんなんじゃなくて純粋に如月さんと仲良くなりたい。
出来る事なら恋人同士… いや!そんな贅沢は言いません!
良い友達でもイイです!



ただ二人でプリクラを撮りたいです!
プリクラなんて男子校だった僕は数えるほどしか撮影したことがないからです。
大学に入っても男子校病の僕は女の子とのツーショットなんて…
…撮ったことない。



だから僕に好意をよせてくれているという如月さんとプリクラを撮りたい!!
そして携帯電話のバッテリーの内側に貼りたい!
この儀式は高校生の頃に聞いたアベックがする行為らしい。
僕も! 僕も!! やりたい!!!
アベックじゃなくても!!



「じゃあ席替えしますか~!」と健也が言った。



男と女の子が対面する形で座っていた座席を、男・女・男・女に交互になるように席替えをするという。



健也は青山さんの隣。
誠はバタコさんの隣。



自然と僕の隣は如月さんになってしまった。
これも全て健也たちが仕向けたことだろう。



如月さんは躊躇いがちに「じゃあ、私… 幸一さんの隣イイですか?」と肩をすぼめ申し訳なさそうに僕に聞いてきた。



僕は「こんなワタクシで良かったら!」と緊張の中に少しの恋の気配を感じて僕が座る左隣をすすめた。



さて、会話。
どうひまひょ?


僕は健也と誠の二組のカップルを見てぎょっとした。


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