「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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幸せな大学生活・6
2004年5月某日
僕はこれまでに経験した事の無いほどの『幸せ』を味わっていた。
実際、それが躁の状態による感情の高揚なのか?
それとも本当に普通の『幸せ』なのか?
僕は分からなかった。
否、分かろうともしなかった。
なすがままに2人の女性と遊ぶ事は僕の脳を考える事から逃避させた。
この頃、僕は精神32条が通り処方薬と通院費が国からの負担で一切掛からなくなった(個人の状況によりその負担額は変わります)
処方薬をオーバードーズしては自己嫌悪になり。
かといって薬ナシでは生きてイケない自分をもどかしくも思っていた。
横浜の年上の女性とはメールのやり取りをするくらいで別段会って遊ぼうと言うことはなくなっていった。
それは…僕が年下の大学の女の子を好きになっていった証拠だった。
2004年 5月21日(金曜日)
僕はNPO・NGO論と言う講義を受けていた。
僕はこの講義で失態を犯した。
感想文を教壇に立ち読むと言う行為が出来ず、皆の前で倒れたのだ。
意識こそは失わなかったが殆どその時の事は覚えていない。
そんな事があった講義に出るのは気がひけていたのだが講義内容と講師が好きと言う理由で僕はこの週もこの講義に出た。
あの失態の後、僕は講師にメールを送っていた。
躁鬱病である事、32条の事、生きている事と死にたい気持ちの間で揺れ動いていること…
そんなメールを読んだためか?
講師は講義に少し精神世界の話を織り交ぜてきた。
『心は様々なものを溜め込む容器。 様々なものは水。
コップのように小さい容器もあれば、湖のような大きな容器もある
しかし心に本来大きさなんかない
様々な問題は思いも寄らない大きさのものも存在する
キミたちは心と言う容器を大きくする訓練をする必要がある
最初から大きな心の容器を持っている人はいないのだから
容器が小さく表面張力で頑張っているならば容器を移し変えて大きくしてあげれば良い
きっと訓練しだいなんだ』
その様に講師は言っていた。
僕の心はきっとまだ小さいコップなのだろう。
そして表面張力の状態で何時切れてもおかしくないようなピアノ線のような危うさを持っているのだろう。
僕はこの講義の後、講師のもとへ急いだ。
そうしたら講師も待っていたといわんばかりに一冊の本を僕に差し出した。
『悩む力 べてるの家の人びと』
と言う本だ。
この本は精神的に障害を持つ人が集まり住む家での事をドキメントで綴った作品だ。
講師は「キミの思うままに読みなさい」と本を僕に渡してくれた。
後にメールで講師は「キミには文章を読んで理解してそれを表現する能力がある、だから今、そうこの大学生と言う今、キミにこれを読んで感じて欲しい」と言った。
僕はこの本で1つレポートを作ろうと心に決めた。
2004年 5月27日(木曜日)
僕は大学の歳下の女の子の病状を少しでも良い方向へもっていきたかった。
このままでは確実に自殺をしてしまう。
この子が死んでしまったら…
恐らく僕も自分から死を選択するだろう。
僕は彼女の住む一帯の精神科、心療内科を徹底的に探し始めた。
幸い近くに2件ほど病院があったので電話をしてみたところ…
「前に精神科に通っていたなら紹介状を書いて貰ってください」
それは分かっている、しかし彼女の母親は彼女が精神病である事、精神科へ通っていた事を隠したがる人だった。
仕方ナシに僕がその旨を病院受付に伝えると…
女性受付から男性に電話が変わり
「精神科渡り歩いてなんかやってんじゃないのか?」
と言い出す始末。
でも僕はやれやれと思い受話器を置くことはしなかった。
必死に食い下がった。
「僕も精神科に通っていて、彼女は主治医ともう会いたくないと言っている」
「僕は彼女に一緒に健康体に戻りたい」
と、必死に胸の内を伝えた。
こんなに必死になっている自分に驚きつつも…
しかし男性は
「紹介状を書いて持ってきてください」
の一点張りだった。
仕方なく僕は彼女の家近くの病院ではなく、僕自身も通う精神科を紹介した。
そして一緒に病院へ行く事にした。
2004年 5月某日
いつものように大学で年下の女の子、彼女に会い一緒に途中まで帰った。
そしていつものように彼女と電車のホームで別れ僕は帰宅した。
家で一息ついて休んでいると彼女からメールがきた。
「ODしちゃった、でもこれからバイトだから頑張る…と思う」
と。
彼女のバイト先から僕の家までは方道1時間半掛かる。
僕は心配でたまらず、家を飛び出して1時間半の小旅行へ出掛けた。
ODとはオーバードーズ。
飲んだ薬も量も分からない。
重い睡眠薬は持っていないはず。
人工透析しなくてはイケない薬もナイ。
量だってそんなに多くはないはずだ。
と、自分に言い聞かせ彼女のバイト先に向かった。
永遠に感じられる1時間半の後、レジを打つ彼女を発見した。
彼女はウツラウツラしながらあくびをしていた。
これには僕自身拍子抜けしてしまったが、元気そうなので心の底から安心した。
僕は彼女に一言だけ「もうするなよ」と言ってまた1時間半の旅に出た。
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