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2020年02月11日
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テーマ: 本日の1冊(3691)

「木下サーカス四代記」山岡淳一郎 東洋経済新聞社

岡山市表町商店街の南端に「千日前」という一画がある。ほんの20年前までには此処は6館ほどの映画館が林立する映画館街だった。60年前は、正月前後などは人混みでごった返す盛況だったと先輩から聞いている。更に遡ること100年前、映画の街はサーカスに続いてこの街で産声を上げ、戦災をくぐり抜け岡山の興行ならびに大衆文化をリードし続けた。

今、私たち映画ファンが娯楽を楽しんでいられるのも、先人たちが健康な興行を始めたお陰だと忘れないように本書を紐解いた。因みに、本書では言及していないが、千日前商店街の大看板は昨年秋に撤去された。現在の木下サーカス本部があるビルの目の前に、新しい市民会館の建設が始まっている。新しい文化の殿堂が造られようとしている。

もう文章は波乱万丈だ。今や世界三大サーカスの一翼を担う木下一族。118年前に岡山から幕を開けたという。サーカスという一般には知られていない仕組みと事業の継承に関するドラマがてんこ盛りである。絶対映画に出来る。映画並みの心踊る導入部を各章に設けて綴っている。‥‥それは読んでもらうとして、岡山に関する事を中心に私的メモを以下に残す。


・1886年、岡山市中島(旭川の中洲にある遊郭街)に芝居小屋「旭屋」が立ち上がる。木下藤十郎30歳。唯助はその養子。蓮昌寺の高市を仕切る。
・一代目(矢野)唯助は、西大寺観音院の裸祭りの興行の仕切りを四国や関西から取り戻した。
・1902年、軽業一座創設、奉天、ロシアなどを回る(木下サーカス創設)。
・1909年蓮昌寺の矢野巡回動物園(ライオン・カンガルー・ベンガルトラ・狼・駝鳥)に1日観覧者8千人。複数興行で、北海道・東北を回る。
・1916年、唯助は大阪千日前の被災した奥田社中を取り込み、甥に軽業、曲馬主体の第二部を作らせた(後の矢野サーカス)。
・1919年、岡山市天瀬の帝国館の向こうを張り、金馬館開設、初めて映画の昼興行を行った。大正末に若玉館も開業。さらに映画館二館、旅館、料理屋、銭湯などを同地に建設。「千日前」という歓楽街に変わる。

・1943年9月鳥取大地震。弟の行治が準備中に圧死。
・1945年、岡山大空襲、映画館灰塵に帰す。娘婿二代目光三、中国から帰還で妻子と離れ離れ。
・1946年9月大阪歌舞伎座で木下サーカス復興第一公演。金馬館、文化劇場、若玉館、白鳥座の順に映画館が再築。※私たちの調査では金馬館は現在美容室になっている(昭20-33開館)、白鳥座は現在は駐車場(昭25-60開館)である。他の映画館の名前は知らなかった。
・光三はサーカス界で初めての大学出の団長になった。団員の意識改革、近代化に努めた。
・1950年、戦後初の芸能団体の渡米でハワイへ。
・近代化への「革命」、丸太掛け小屋から洋式の丸テントへ。会場の不便解消、歩方や太夫元のしがらみからの解消。宣伝(新聞社やテレビ)には、軍隊の宣撫活動が役に立つ。
・1962年一代目唯助の葬式を、千日前の文化劇場で執り行なう。花輪が千日前商店街を埋め尽くした。
・1973年、韓国親善公演を目指して、政府に「岡山が生んだ世界三大サーカス、木下サーカス」の保護・育成を申請している。金大中事件で頓挫。タイやソウルやフィリピンなどの海外公演に拘ったのは、光三の戦中体験に関係していたのかも。誰にも何処にも語ってはいない。
・1968年、司法試験を目指していた長男光宣を成田山の1週間断食に誘い、木下サーカスに入る事を決意させる。商店街入口に建設中の7階の「ニュー千日ビル」の木下興産専務へ。
・1974年次男唯志が父親入院を機に銀行内定を蹴り、木下サーカス入団。週休を認めさせる。
・1983年、光宣が三代目襲名。待遇改善、住環境の改善(トレーラーハウス)。

・唯志は岡山に英会話学校「プリンストン」を開講、3年間で黒字へ。
・1990年、光宣倒れる。唯志4代目就任。負債10億円。
・「シルク・ドゥ・ソレイユ」はプログジェット型ビジネス、「木下サーカス」は大家族ビジネスで世界一へ。
・2018年岡山公演、西日本豪雨のあと連日35度を超える猛暑、熱波(天井付近は40度を超える)との闘いだった。一台1千万円のエアコンを8台使い凌いだ。また、大阪関空を襲った台風21号を前に千秋楽前にこの公演を畳んでいる。公演は自然との闘いである。
・此処で告白するが、まだ一度もサーカスを見たことは無い。2018年も行きたい行きたいと思いながら、1人で行くのが恥ずかしくて行けれなかった。次回は何としてでも行きたい。






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最終更新日  2020年02月11日 09時21分23秒
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