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2020年03月03日
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テーマ: 本日の1冊(3691)

「太平洋食堂」柳広司 小学館

第一次世界大戦前夜の紀州新宮で、リベラルな医者をやっていた大石誠之助を描く。この時代、社会主義者を標榜して、新聞で論陣を張り、演説会に登壇し、人が気楽に集まれるサロン(太平洋食堂)を開き、自由に新聞・雑誌を閲覧できる場を提供し、俳句やフリートークのサークルを作り、尚且つ、貧乏人からは診察代は取らないという「個人でできること」をやっていた人物であった。

太平洋は世界に開いている。大石はアメリカやインドへ留学していた世界人でもあった。新宮は田舎ではない。奈良の熊野詣での昔から、地方の都会だった。昔も今も東京だけに人物がいるわけではない。それでも、戦争は人々の生活に影を落とし、ブラック企業は労働者を搾取するだろう。現在と似ている部分は多々ある。その中で、大石誠之助はどうなったのだろうか?新宮に居て、大逆事件とは関係なかったのに逮捕されて死刑に処されたのである。いや、死刑になった12人全員が冤罪だったのは、この本で詳細に述べられている。一方、この時代いろいろ制限はあるにせよ、昭和の戦中と比べれば、まだ言論に自由な雰囲気は残っていた。あまり描かれてこなかった明治時代小説と言えるだろう。


大石がしていたのは、現代の知的リベラルがしていることの理想型だと思う。しかし、戦争前夜にそういう運命に陥る。明治末期に日本に芽生えた社会主義思想という名の理想主義は、このように壊滅的な打撃を受けた。私は大きな教訓があると思う。大逆事件は、単なる社会主義者弾圧ではない。日本は大きな事件があると、コロッと空気を変える(意味は違うが、昨今の感染症騒動を見てもそう思う)。

新宮市は、2018年になってやっと「名誉市民」という称号を大石誠之助に与え、名誉を回復させた。もっとも、まだまだ復権にはほど遠い岡山県井原市出身の森近運平よりはマシではあるが。





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最終更新日  2020年03月03日 14時04分08秒
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