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2009/08/20
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カテゴリ: クロノス
「4…いや、5匹か。誉さんは下がっていて」

フリーズドッグの一群の内、殿を務めていた1匹の歩みが止まった。同時に警戒心を顕わに喉を鳴らし始める。

「まだ動くんじゃないぞ・・・フリーズ、フリーズ」

ジローは彼らから風下の位置へと回り込みながら近づく。1匹のフリーズドッグが敵の存在に気づくのとほぼ同時に、ジローはジャイアンを振り上げて群の中に飛び込んだ。

最初の1振りで一挙に2体のモンスターを凪ぐ。1匹にとっては会心の一撃となり、凍りついた岩に激突して絶命した。片方は軽傷で、後ろ足にジローとの間合いを開けていく。

咆哮し、つららの如き氷のたてがみを逆立てた4匹の猛獣が一斉にジローに襲い掛かる。
ジローもまた割れんばかりの声を上げる。気圧され、躊躇した1匹の脳天に渾身の一撃。足元に喰らいつこうとする1匹には、喉元をアイゼンのスパイクで思い切り蹴り上げた。

残ったフリーズドッグたちは明らかに動揺して見える。ジローはチャンスとばかりに跳躍し、2匹のモンスターの間に割ってはいる。マウンテンクラップ、そして同時に渾身の力を込めたバーサーカアタックを見舞う。
直撃を喰らった2匹は雪上にひれ伏した。



安堵して細く息を吐き出すジロー。

「ジローさん後ろです!」

「!!1」

先ほど手傷を負わせた1匹が背後から強襲する。身をひねってジャイアンを盾にするジローだったが、馬乗りにされてしまう。両手で必死に、自分の喉元に喰らい付こうとする相手の口を押さえつける。

「ジローさん!」

「この、やろうっ」

岩陰から駆けつけた誉が手にしたジャドで、フリーズドッグの頭部を強打する。自分に向いていた力が一瞬弱まったその隙に、ジローは胸にかけていたアンチウォーターペンダントをフリーズドッグの口内に押し込む。

「美味いぞ、食え!」

犬の頬を思い切り殴りつけるジロー。衝撃で、噛み砕かれるペンダント。その亀裂からはペンダントへ封じ込められていた魔力が、冷気となって一気に噴出した。

「離れるんだ!」

ジローはフリーズドッグの腹部を前蹴りで押し上げると、自分もその場から飛び退いた。



「フリーズって言葉の意味を知っているか?動くなって意味と、凍らせるって意味だ」

フリーズドッグは自らの体内から溢れ出た氷に飲まれ、声も上げぬまま1本の氷柱へと姿を変えた。





モンスターの一群を退けたジロー達は、装備を整えて再びロン族の村を目指し始めた。
少し行くと道の右側に大きなクレバスと、その向こうには低い丘が見えた。

その光が、丘の向こうにそびえる巨大な建造物を映し出した。

「うわあ、綺麗ですねえ」

感嘆の声を上げた誉は、ジローの外套の端をちょんとつまんで足を止める。

「あれが、アイス宮殿・・・」

宮殿の外壁は、幾重にも成った氷の層で覆われていた。長い年月をかけて凝縮された純度の高い氷である。それは光を内部で反射させ、まるで金剛石のような美しい輝きを放っている。
ダイヤモンドの名前には「征服できない」という意味がある。
見た目の美しさとは裏腹に、深い雪と厚い氷に閉ざされたこの宮殿には相応しい形容ではないだろうか。

-征服できない。決して懐かないもの、か…。

自分の後ろで宮殿の姿に見入っているこのマジシャンも、そうしたモノなのではないか。
頭を過ぎる予感と軽い眩暈を否定するように、ジローは頭を振った。





数時間後。
恒恒の地図を頼りに、2人は洞穴を進んでいた。そこは1本道で、先へ進むにつれ段々と空気が暖かくなっているようだった。
洞穴の先に見えていた光の点も、徐々に輪郭を大きくしていく。

「出口だ!」

足早に出口を抜けた2人は、眩しさに目を細める。そこは一帯を緑に覆われた草原が広がっていた。鼻腔をくすぐる春めかしい草花の匂いが、体中の緊張をほぐす。

「遂にここまで来たんだ!」

歓声を上げるジロー。誉の方へ同意を求めるように振り向くが、彼女は出口の前で景色を呆然と眺めているだけだった。

-なんだか、アイス宮殿を過ぎてから様子がおかしいような。

不信に感じながらジローは先頭を切り、遠くへ見えていたロン族の村へと向かっていく。誉はその後ろを、不思議そうに周囲を見回しながら進んだ。

人の往来が元で、自然に出来たであろう粗末な道。村の方角からは1人の男が歩いて来るのが見える。ロン族では無く、人間のように見える。背中には小さな箪笥の様な箱を背負っていた。

「すいません、僕たちはテラから来た旅の者なんですが、」

「旅の人?こんなところで人間に会うなんていつ以来か。んー、ここへは道に迷って?」

「いえ、実はこのあたりに遊亜導師というマジシャンが住んでいると聞いて。その人を訪ねて来たんです」

男は逡巡してからぽんと手を叩いて細い目を見開く。

「失礼だがあ、あなたはジローさんでは?後ろの女性は、」

「今は誉と名乗っています」

「やっぱりそうだ。あたしゃ薬売りを生業に旅をしてる、ギルド『神の保健係』の者だぁ。お前さんたちのことは話しに聞いているさあ」

「もしや、恒恒さんの病院に出入りしている薬売りってゆーのはアナタですか?」

「そうなんだなあ。いやあ、偶然ってのはあるもんだあ。しかし残念だったなあ」

「え?い、一体何の事ですか?」

「実はなあ。あたしも遊亜導師を訪ねてここへ来たんだよお。噂に様々な珍しい薬や薬草を持ってるって聞いてなあ。それを買い付けに来たわけさあ」

「ええと。あなたは以前にも一度、ここへ来たのでは?そのとき遊亜導師には、」

「それがなあ。前に来たときは会えなかったんだよお。村のロン族に聞いてみたら、暫く姿を見かけていないらしいんだなあ。なんでも『アルカディア』って場所へ探索に行ったきり、戻ってきてないらしく、数ヶ月も行方不明だって話さあ」

「それじゃあ・・・」

ジローは絶望に近い表情で男に問う。

「ああ。今も家を訪ねてきたばかりだ。やっぱり留守だったなあ。あたしも苦労して来たのに、とんだ徒労になっちまったあよ。もしかしたら、もう引っ越してしまったのかもなあ」

「ジローさん・・・」

うな垂れるジローの肩に、誉れは慰めるように手を置いた。





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Last updated  2009/08/22 08:54:51 PM
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Re:魔導師と肉(5-1)(08/20)  
SHADOW_SKILL  さん
ジローさんいいよジローさん強いよね。
褒めたからギャラはなしだよねキット。 (2009/08/22 09:24:53 PM)

Re:魔導師と肉(5-1)(08/20)  
白魔童  さん
繊細な描写だo(`・д・´)o ウン!!
一気に最後まで読むぞぉ~~!!
(2009/08/22 11:06:31 PM)

Re[1]:魔導師と肉(5-1)(08/20)  
SHADOW_SKILLさん
-----
ゲームだとMAPによってモンスターの強さはかなり違ってくると思うんですが、お話の中では全く加味してないのです。エヌゥムもフリーズドッグも犬だから同じ位の強さと想定してたりします。適当ってやつですね('A`)
だからジローさんが強いわけじゃないですwパンピーよりは強いってくらいのキモチで書いてました。 (2009/08/27 10:32:06 AM)

Re[1]:魔導師と肉(5-1)(08/20)  
白魔童さん
-----
やっぱどう考えてもこのあたりから文章がおかしくなってます・・・('A`)ハアハア
残り2話でまとめようと短くしようとして(結局5話は分割してるし・・・)書かなきゃいけない内容を端折ってしまってます('A`)ハア・・・ (2009/08/27 10:34:43 AM)

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