空想世界と少しの現実

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緋褪色

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カテゴリ: オンナ心
宮城県仙台市。駅前の栄えている所から、車で約20分の距離。仙山線が近くに走る、仙台東照宮のすぐ側。それが俺の実家のある場所。車と電車どちらにしようかと思案していたら、美香は迷わず車がいいと提案した。

「時間が掛かっても、車がいいな。雅夢は運転上手だし、もしも具合悪くても病院に行けるしね」
「でも長旅だよ!七時間ほど掛かるぞ?大丈夫かよ?」

「平気!向こうで、車でぶらぶらしたいんだもん!仙台は仕事でしか行ったことないし。観光気分もいいかな~って!」
屈託の無い笑顔を浮かべて言う。「じゃ、そうするか!時間が掛かっても、電車よりは俺も楽だ」
同意をして、たんまり東京土産を持ち、入籍したばかりの彼女を伴って一ヶ月ぶりの里帰り。

お袋には事前に美香と入籍したと、電話で伝えておいた。故郷に錦を飾るってわけでもないけど、俺の所有する、白のベンツE320は近所の注目の的だ!女に貢がせた車だけど少し誇らしい気分。
だけど何より誇らしいのは、妻になった美香が、他の誰よりも美しい女だからだ。

運転席を降りて助手席のドアを開けて、美香をエスコート。その様子を、俺を昔から知っている近所のおばちゃん達が、唖然として見つめている。降り立った彼女は動じることなく、微笑で丁寧におばちゃん達にお辞儀で返す。さすが元社長!振る舞いも堂々としてる。かっこいいよ、美香。

「お袋が待ってる。家に入ろうか」声に少し顔を赤らめて
「はい、あなた」 なんて答えるんだもん!マジどきどきしたぜ!ヾ(;´Д`●)ノぁゎゎでも気分はめっちゃ嬉しかったり。改めて夫婦になったんだなって感じさせるよ。

彼女も、その気持ちを伝えたくて答えたんだろう。美香の右肩を軽く抱いて玄関のガラス扉をスライドさせた。「ただいま!お袋!帰ったぜっ!!」つい声が大きくなっていた。


和室に通されて正座をする。お茶を出してくれた雅夢のお母さんは、想像以上に明るく楽しい人で、初めて会って緊張気味の私に明るく声を掛けてくれた。

「まあぁ~!ほんとよく来たぁっちゃぁ~!あんらーすっごいびっじんだこと~!ちょっとぉ雅夢っ!!あんだ随分めんこい嫁さんば、つかまえたっちゃぁ~!」((藁´∀`))

「あんっ!!俺が選んだんだぁ~!たりめーだろ~!つか、訛るからやめてくれっ!!お袋!!俺もう!東京人なんだからなぁ~!って直らねーしっ!!」(>д<;)
頼むぜ、お袋っ!!美香の前では、東北弁出さないように努力してたのにっ!!つい、喋られると出てしまうじゃねえかっ!!


`,、'`,、 '`,、'`,、('∀`) '`,、'`,、 '`,、'`,、
まっ雅夢がっ!!雅夢がっ!!もう可笑しくて可笑しくてっ!!お母さんと彼の顔を交互に見ながら、噴出す私っ!!彼は顔を真っ赤にして、抗議の視線を投げかけるっ!!



「しょーがんべ~!こっちさ長いんだぁ~!まあまあ~!美香さん、よう来なさったぁ~!そう緊張せんと足崩してぇ~!」

微笑みながら、まじまじと顔を見つめられて少々戸惑う。「ありがとうございます。大丈夫です!あの、お義母様は東京の方なんですか?私は東京の神田出身です!」
話し掛けると更にニコニコと微笑む、小柄でちょっとぼっちゃりした体系のお義母さんは、いかにもお袋さんという雰囲気だ。


「うちのお袋は国分寺市出身だよ」
「こらぁ~!雅夢っ!!美香さんは私に聞いてんだぁ~!おんめー黙ってろ~!」

私は交互に彼らを見ながら、少し笑いながら会話を聞いている。やがて雅夢のお義母さん、美恵子さんは咳払いを一つして話を始めた。

「あらやだ!ごめんなさいね~!もう宮城長いんでねぇ~!ついついこっちの言葉が出ちゃうのよね~!雅夢と喋る時は、標準語で話せって言われちゃうのよ~!この子うるさくって~!」((´∀`*))ヶラヶラ

「本当に遠いところ、よくいらっしゃいましたね~!この度は本当におめでとうございます!うちの愚息、まだまだ頼りないでしょ?年上の貴女が、どんどんお尻はたいてやって下さいな!」


きちんと正座をし、畳に頭を擦り付けんばかりの勢いで、頭を下げる美恵子さん!
「あっ!!いや、こっこちらこそっ!!至らぬ嫁ですが、宜しくお願い致しますっ!!」私も慌てて同様に頭を下げた!


「おいおい、堅っ苦しい挨拶はそれぐらいにして、親父の墓参り行こうぜ!墓前に報告しないとな!花買ってきたからすぐ行くぞ」
促すと二人は顔を上げて、互いに微笑みあった。いい感じじゃん。のんびり屋のお袋と、ちゃきちゃきの美香。きっと気は合うだろうな。まるで真里菜さんと美香のコンビだ!見つめて想う。



親父の墓は、家から車で10分程の距離にある霊園内だ。管理料は高めだが、まるで公園のように整備され、暗い、薄気味悪いという、霊園の概念を覆すようなところだ。親父の墓は一番高台にあった。運転する俺に助手席の美香が話し掛ける。


「綺麗なところね!霊園とは想えないわ!沿道に植えられているのは桜の木ね!」
「うん。此処はね、親父自身が気に入って、元気だった頃に墓建てちゃったの。骨を埋める場所は自分で決めたいってね」カーブを曲がりながら答える俺。

「そうなのよ!美香さん。お父さん、桜が大好きだったから、それを一望出来るような所がいいって想ったらしいのよ。黙って決めてきちゃったのよ!うちのお父さんたら」
お袋の言葉に、暫し思案顔の彼女。「どうした?」
「んっ?私も義父さんと同じだなって想って。自分の骨を埋めるところは、想い通りの場所がいいなって考えていたから」

その言葉に、俺もお袋もつい黙り込んでしまった。慌てて繕うように笑う美香。
「あっ!ごめんなさいっ!!深い意味は無いんです!こんな素敵なところにお墓があるなんて、ちょっと羨ましくなっちゃって!ハナミズキが綺麗ですね!大好きなんですよ!」ほんと綺麗。ハナミズキは清楚でいいな。窓から眺め考える。

「美香は俺と結婚したんだから、この霊園の墓に入れるんだからな!俺、長男だし」言葉に反応し、後部座席のお袋が強い口調で窘める。
「これっ!!雅夢っ!!めっだなことを言うもんでねぇっ!!」

「いいんですよ!お義母さん。雅夢さんは、私の最後が近いって知ってますから。だから亡くなった後の事も、二人で話し合っている最中なんです」

「人生の総仕上げですものね!後悔無く終わりたいんですよ。雅夢さんは一番の理解者ですから、とても心強いんです。感謝しきれないくらい」後ろを振り返ると、少し悲しそうな表情の義母。安心させるように笑いかけた。


「そっかぁ・・・そんなら何も言えんなぁ・・強い人だぁ、美香さんは」
「そーだよ!だから嫁にしたんだからなっ!!俺の女はいい女だけじゃなく強いんだぜ!気も強いけど意思も強いんだから!さあ着いたぜ~!う~ん!今日は天気いいな~!親父晴れ男だったからな、天晴れっていう位、見事な晴天だ!」
歩道の側に車を止め、美香を先に降ろす。少し眩しそうな表情で天を見上げている。


「きっとお父さん、雅夢がこんなにびっじんさん連れてきたから、びっくりしてるっちゃぁ~!さぁ行くか!」

雅夢が水道に置いてあった桶を二つ持ち、そこでたっぷりと水を入れて左右に持つ。私は仏花、お母さんは墓前へのおはぎと煮物を持って。先頭は彼、次に私、お母さんと続く。歩く度、ひいてある砂利がぎゅっぎゅっと音を立てた。

お墓は、歩いてきた通路の一番端の角だった。霊園が一望できる高台。頬を撫でる風が清清しい。「いいところですね。此処から見える桜は、さぞ綺麗なんでしょうね」


「そうねぇ。まるでピンクの雲海みたいよ!此処は春夏秋冬で様々な色を見せてくれるからね、来る私も楽しみなの。お父さん、雅夢、結婚したんですよ!しかもこんなに綺麗な人と」

話し掛けながら桶から柄杓でお墓に水を掛け、丁寧に墓石を拭う義母。その様子を少し眺め、持っていた仏花を包んでいた紙を取り始めた。夫婦・・か。私が死んだ後、彼もこうやって話し掛けながら、墓石を拭うのだろうか。それ程長くない先の出来事なんでしょうね。

彼は一生懸命、石の影でお線香に火を点けている。私は少し微笑んで、手にした仏花の茎を五センチほど切り落とす。仏花か・・私に供えてくれるならば、華やかな仏花にしてね、雅夢。


清掃を終えた後、最初にお袋、俺、美香の順で線香を上げた。みんなそれぞれ想うところがあったらしく、手を合わせている時間は長かった。傍らの彼女を見つめていたら、気がついて微笑み返す。
「疲れてないか?無理すんな」ゆっくりと頷く。俺達の様子を見たお袋が口を開いた。


「そうよ、無理はしないで頂戴ね。貴女はもう大切な家族なんだから。雅夢、お姉ちゃんも喜んでたわよ!さすがに、アメリカだから結婚式には出られないけど、その代わりにお祝い贈るって」

「ふーん。姉貴元気なんだろ?再婚相手とは上手くやってるんだ。美香、俺の姉貴も×1なの。今はアメリカに住んでるんだよ。俺と違ってえっれー頭良くてさ、美香みたいな才女。よく比べられたぜ~!先コーに。(>д<;) おつむが違うんだからしょうがねーだろっ!!って感じ」

「花梨は努力家だからねぇ。雅夢も努力すればもうちょっと出来る子なのに。この子昔っから努力するのが嫌いでね、人前では絶対頑張っている姿見せないのよ。ようするに格好つけたがりなの」

「男はあくせくしている部分は出さないもんなの!それが美徳!親父がそう言ってたもん」
 「ね、解る?美香さん。雅夢はね、亡くなったお父さんそっくりなのよ。帰ったら写真見せるわね!さっ!!帰りがけ何か食べて帰りましょう!じゃ、お父さん。また来るわね!」

そう。雅夢はお父さんそっくりなんだ。子ども・・か。いいな。今の私には産むこと出来ないけど。
ねぇ、雅夢?君は子ども好きなのかな。もしも、仮に君が望んだら考えていた計画、実行に移してもいい?でもその為には受け皿が必要。私の身勝手で我儘な計画、許してくれるだろうか・・・彼に視線を送ると手を握ってくれた。

「帰ろうか、奥さん」 照れたように微笑を浮かべて・・・

オンナ心 男としてへ





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Last updated  2008/09/11 01:33:29 PM
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