仙燐眼

仙燐眼

S氏


その後アリバイを見つけた。
今現在の所在も生活ぶりも知っている

仮にS氏としよう。

S氏は一番目の結婚の時に2児をもうけている
そして、今現在の妻は4番目で、外国人で20歳も下の彼女。
一人子供をもうけている
相変わらず水道工事の会社を自分で設立しているようだが、
個人主である。

なんとか
彼の財産なるものを見つけ
ぶんどり返そうぞ、と思い、これまた、お金をかけないやり方で
自分で思案しながら、
調査しまくった。

しかし、
これは空回りだった。

彼の最初の結婚の時の妻は現在、実の弟の妻となり、
自分の二人の子供をもちろん養子と迎え入れてもらい
実家で円満そうに家族として暮らしている
実家の父親は既に亡くなり
遺産とされた東北にある膨大な敷地の実家は全て弟が相続されていた。

そして、
私の父からふんどった不動産のもろもろは
父が裁判で勝訴となる前に
3番目の妻が告訴していて
その裁判により、全て慰謝料と賠償金としてS氏の元から奪った後だった

もぬけの空になっていたS氏により
私の父の勝訴は全く意味のなさないものというものになっていたのだ。

父の落胆していた姿が浮かんだ。

一度、父が、S氏に脅迫めいたことをしようとして
外に呼び出し、話し合ってたとき
逆に、父の方がビルから突き落とされそうになったらしい。

それ以来、父はS氏の前では猫のように丸くなってしまう人間になったということだ、これは、珍しく酒を父が飲んでいたときに
つい、母親にこぼしていた時があったと
後で聞いた。

父はその後ウツ病になり始めていった・・

明らかに財産を隠していると思われるS氏だが、
なんとか搾り取れないのか、と思案して、
私は、S氏に手紙を書くことにした。
内容は、
「父が今でも枕元に立つことがあります」
「父が泣いています」
「父がS氏に会いたいと言っているのです、お墓に一度来てくださいと」
こんな文言を入れて
週に一度ほどお手紙作戦。

そして、極めつけ
父の直筆のメモ書きを同封した。
「S氏が、憎い」と書いてあった。
いわゆる、これが、遺書と。

そして、
「あなたの誠意を見せてくれないと浮かばれません
どうか、お願いします」と丁寧に締めくくりました。

その後、
S氏から定期的に
送金されるようになりました。

この時、
久しぶりに父に
両手を合わせて喜びを伝えることが出来ました。
「パパ!今夜は飲むぞーー♪」
   ↑父はパパって呼ぶな、って言ってたけど、
今日だけは昔みたいに呼ばせてね、ね、いいでしょ。



© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: