リキッドの奮闘記

リキッドの奮闘記

【小説】エースコンバット【下書き】



第一章 揺らぐ共和国

2017年 11月6日 午後2時32分

アネア大陸のエメリア共和国とエストロバキア連邦との戦争が終わってから、一年程の歳月が過ぎようとしていた。
2013年、オーシア連邦の東に位置する数々の小国が正体不明のテロ事件がきっかけとなり、紛争を起こし始めた。オーシアの大統領、ビンセント・ハーリングは何とか小国達に和平をさせようと力を尽くしたが上手くいかず、一年に及ぶ大きなぶつかり合いが続き、小国は想像を超えた武力拡大を行っていく。サピンやファト等は分裂し、かなり混沌とした状態となる。やむを得ず、オーシアはサピン王国やウスティオ共和国等の友好国と共に武力行使を行い、結果的に戦争へとなった抗争は終わりを告げる。この戦争は「東戦争」と言われている。
和平後、東の国々はある程度のまとまりを見せ、お互いの国の為に一つとなる国々もあった。それによって誕生したのがフォーバット共和国である。各国の武装力はあまり縮小されないまま、フォーバットの物となった。その後、この国はオーシアやサピンと同盟を結び、一年後の現在の姿を留めている。
それと同時に隣にバルメシア公国が誕生。フォーバットと同じ様な状態だった。紛争によって誕生した二国。この二つの国家は数年の間、何事もなく存在していた。オーシア大陸南部の国境線は二十年以上ぶりに著しく変わる事になる。
しかし、この新たなる国境線も長くは存在しなかった。




雪の降る空を、一機の水色のカラーリングを施されたF-15Cイーグルがのんびりと飛んでいる。まるで自分を邪魔する物が全く無いと、誰かが保障してくれているかの様に。
<<こちら、フォーバット共和国アルシム航空基地管制塔。ジークフリート1、もとい、ヘルドブリット・アンダーソン大尉、異常は無いか>>
「こちらジークフリート1、何処にも異常無し。リーム、いちいち“フォーバット共和国アルシム航空基地管制塔”なんて言わなくていい。管制塔だけで十分分かるよ」
<<一応仕事だからな。では、そろそろ戻れ。滑走路の準備をしておく>>
「了解、管制塔」
イーグルはゆっくりと機首を傾け、その後再び機体を水平にした。今のフォーバットは非常に寒い。この男、アンダーソン大尉が所属する第45フォーバット戦術飛行隊、通称「ジークフリート」隊はフォーバット防空軍の一つである。
「ジークフリート1」のサインを持つヘルドブリット・アンダーソン大尉は丁度今年で三十歳になったジークフリート隊の隊長である。ここしばらく彼はイーグルを愛機として乗っていたが、F-14Aに一時期乗っていた事もあるし、ハリアーを愛機にしていた事もあった。ただし、ハリアーは特別な理由で。
TACネームは「ミラー」。
実は彼は、国籍を偽って環太平洋戦争にオーシア軍として参加した事がある。今考えると、とんでもない話なのだが。二回撃墜されたが、幸い生還出来た。一度目はジラーチ砂漠で、二度目はユークトバニアの首都、シーニグラード進攻時である。
泥沼化した戦争に嫌気がさした彼は、戦争終結の少し前に姿を消し、再び故郷へと―――彼はウスティオ生まれだ―――戻った。無論、その時はフォーバト共和国はまだ無かった。そして三年後、東の抗争の鎮圧軍として参加、そのままフォーバット国防空軍に入隊した。
<<こちら管制塔。貴機をレーダーにて確認。そのままルートを維持せよ>>
今度は省略したらしい。
「ジークフリート1、了解」
うっすらと、アルシム航空基地が見えてくる。この航空基地だけでも二十機の戦闘機が配備されており、いつでも出撃可能な状態にある。何故ならば、大規模な戦争は幾度と無く繰り返されてきたからだ。平和な国と言えども、いつ攻撃を受けるか分からない。その為、哨戒飛行は毎日行われている。
しかし、今はジークフリート隊しか残っていない。他の隊は本隊の駐留するヒューボット飛行基地に移された。
滑走路の両脇に敷かれたライトが見えてくる。やがてうっすらと見えていた基地がしっかりと目に入ってきた。管制塔もしっかり見える。
<<ジークフリート1、着陸を許可する>>
無線が聞こえると同時に、F-15の下部から黒い車輪が顔を出し始めた。アンダーソンは機体をゆっくり下げ、同時に速度を落とした。徐々に滑走路に近づき、灰色の道路がくっきり目に映る。やがて、イーグルは車輪を地に着けて、そのまま滑走路を走った。速度も次第に遅くなり、機体は停止した。
<<ご苦労、ジークフリート1。哨戒任務を解く>>


機体の色と同じく、パイロットの服も水色が主だった。背中にはフォーバット共和国の国旗が印刷されている。
宿舎までの道のりにある雪は除去されているが、数時間経てばまた積もるに違いない。にも関わらず、防寒服を着てこちらに背を向けて雪かきを一生懸命している男がいた。
「ジークフリート3」のコールサインを持つ、元ISAF兵士のレイノー・ヒルタッブル少尉である。彼の呼び名は「ブリット」。
「ブリット、雪かきご苦労さんだな」
ヒルタッブルはこちらを振り向くと、ほんの少し微笑んだ。そしてまた雪を掘り返し始めた。二十代後半の飾らない男である。その上、あまり騒いだりしない。
宿舎の扉を開けると、よく効いた暖房がアンダーソンを暖めた。同時に服に乗っている雪が水に変わり始める。目の前にあるソファーには髪も鬚も赤い、アンダーソンより年上の男が寝ていた。
通称レッド・シープ“赤い羊”の「ジークフリート4」である三十三歳のマルティン・フロート少尉だ。昼寝が一番の楽しみで、やる事が無い時はずっと寝ている。たまに愛機であるF-15のコクピットで寝ていたりもした。こんなに寝てて、夜眠れるのだろうか。この男の機体の主翼には真っ赤な毛の羊が描かれている。
彼は元オーシア国防軍中尉で、上官との激しい攻防の末、この国に来た。
彼の横にある小さなテーブルにはワインのビンが一本置かれており、すぐそばにあるコップにはまだブドウ色の液体が残っている。アンダーソンはコップを掴んで、それを処理した。ちなみに、フロートは任務中は情熱的な男と化す。
コップを再び戻すと、アンダーソンはロッカー・ルームへと足を進めた。扉には「禁煙」と書かれている。その扉を開けると、人気の無い部屋に並んだロッカーが目に入った。大尉は自分のロッカーを探し出し、鍵を差し込み、着替えを取り出した。藍色の軍隊用の「私服」である。みんなは普通、これを着る。そして、彼は着替えようと、ベルトを外した。
それと同時に、聞きなれない音が鳴り響いた。警報だ。
アンダーソンはもう一度パイロット用のやわらかい布のベルトを付け直すと、部屋から飛び出した。フロート曹長が丁度物凄い速さで会議室に走り、ヒルタッブルが頭に雪を乗せ、スコップを持ったままフロートに続いて走り去るところだった。以外に慌て者だ。


アルシム航空基地の司令官、ヘルトフル・ディックマン大佐はもう年配だ。その証拠に、フロートと違って、鬚も髪も真っ白である。鬚はサンタクロースを連想させる長さで、切った様子も無い。
「ジークフリート隊、今この基地におるのは諸君だけじゃ。そこで、早速だが出撃してもらう」
ディックマンが暗い会議室でモニターを起動すると、飛行基地が映った。
ヒューボット飛行場だ。
「知っての通り、この飛行場は本隊が寝泊りしている。たった今入った無線によると、この基地が大規模な攻撃を受けているとの事じゃ。敵の正体は不明じゃが、このままでは飛行場は壊滅する。すぐに出撃せよ!」
ディックマンは咳をした。年寄りの冷や水とは、まさにこの事だろう。さすがにもう限界だと思う。実際、上層部はそろそろ退役時だと判断しているが、彼は昔はフォーバット屈指の指揮官であった為、なかなか辞めさせられない。別に彼が嫌われている訳では無いのだが・・・・・・。
「では具体的な作戦内容を説明するぞ。ちゃんと頭に入れるのじゃ」

―――作戦内容―――――――――――――――――――――――――――――――

アルシム基地の西方向に位置する、ヒューボット航空基地が大規模な空爆を受けている。この基地には多くの戦闘機が配備されており、敵の狙いはそれらの破壊と、パイロットたちの根絶やしと思われる。
現在、各地の飛行基地から戦闘機部隊が出撃を開始しているが、ヒューボットの本隊は地上に釘付けの状態である。
ジークフリート隊の任務は、基地の航空隊の損害を最小限に抑え、敵航空勢力を撃滅する事だ。
現在、敵の正体は不明である。
諸君の健闘を祈る。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「よし、分かったな。では出撃じゃ!ヒルタッブル!ちゃんと着替えるのじゃぞ!」


ジークフリート隊は五機構成で、残る二人の隊員は・・・・・・姿が見えない。ハンガーに行くと、既に整備班が給油を行っていた。一機のF-15Cに、「ジークフリート5」で、元傭兵のヨハネス・バルクホルム曹長が乗ろうとしていた。彼は隊の中で一番機体を大切にしている。
勿論、自分の命を大切にしていないわけでは無い。機体は消耗品だ。TACネームは「ゴールドマン」。何を隠そう、バルクホルムは綺麗な金髪なのだ。
残る一人は、「ダーティー」と呼ばれるジョロイド・バートン中尉。「ジークフリート2」。彼の二番機だ。一機のイーグルが、もう出て行こうとしている。どうやら、あれに乗っているのがバートンらしい。他の隊員は、まだキャノピーを閉めていない。自分はまだ機体に乗る所だ。もう少し急ぐべきだったか。
アンダーソンは整備兵に挨拶をし、愛機に飛び乗った。整備兵がキャノピーを閉める前に、戦闘機の肌を軽く叩いて言った。
「さっきまで飛んでましたから、状態は問題ありません。燃料も満タンです」
アンダーソンはにっこり微笑み、ハンガーから出て行く戦闘機に続いた。
ヒルはちゃんと着替えたのか?


水色のカラーリングを施された五機のイーグルは、全速でヒューボットへと飛んでいる。
横に飛んでいるのが恐らくバートンだろうが、あまり任務中に指示や命令以外の事で話しかけられるのを好まない男なので、あえて何も言わない事にした。バートンも何処かのパイロットだったらしいが、彼は言おうとしない。
熟練度の高い部隊だからこそF-15Cが与えられているが、まだF-15の配備数は少ない。
雪は止む様子を見せなかったが、視界は十分に確保できる。
<<ジークフリート5より、ジークフリート1へ。ヒューボットまでもう少しです>>
「了解。各機、レーダーを良く見張っておけ」
勿論、隊員に言った限りは自分もそうする義務がある。アンダーソンはガラスで作られた円に目を向けた。
いきなり反応が現れた。こっちに凄い速度で向かってくる。
「何か来るぞ!警戒しろ!」
白い粒のカーテンの向こうから火の玉の様な物が飛んで来た。ミサイルでは無いらしい。ぶつかるのを恐れたジークフリート隊は前から来る物体の軌道から逃れた。
物体の正体は戦闘機だった。しかも、炎を激しく噴き上げている。パイロットは死んでいるらしく、ベイルアウトする様子も見られない。機種は良く見えないが、どうやらフォーバット空軍のF/A-18Cホーネットの様だ。
ホーネットはやがて速度と高度を失い、地面へと落ちて行った。やがて、ボン、と言う音がかすかに聞こえた。大分ハデにやっているらしい。
<<こちらジークフリート4。そろそろヒューボットが見えてくる頃です>>
「だろうな。花火が見える」
雪のカーテンの向こうに確かに火の玉が光っているのだ。
すると、新たに通信が入った。空中管制機からだ。
<<遅れてすまない。こちら空中管制機スノー・アイだ。基地を攻撃する敵機の撃墜及び、離陸中の友軍機の援護を頼む。ミラー>>
「了解スノー・アイ」


隊長機はF-14D、他の隊員はF-14Aで構成された四機編成の第52フォーバット飛行隊「ローエングリン」隊の隊長アーレン・マクロード大尉は、アンダーソンとはウスティオの子供だった頃から顔見知りだった。彼だけF-14Dに乗っているのは、この機体は高価な上に維持費も高い。ジークフリート隊も実戦経験者の集いだからこそイーグルが与えられているのだ。
フォーバット空軍のF-14は改良を加えてあった。本来ならばF-14系統の機体は前が操縦手、後ろがレーダー員と言う二人乗りである。しかし、フォーバット空軍は人員削減―――と言うよりも、撃墜時の犠牲を減らしたい訳だが―――の為に、生産するF-14を全て単座にした。これにより、レーダーの性能が落ちたが、本来の目的は達成された。後ろの座席の部分が無くなったので、本来ならば機体が多少は小さくなるところを、電気系統が壊れた時の為に使うバッテリーを設置した。これなら被弾時の生存率が高くなる。
そのF-14で彼は何とか離陸しようとしているが、部下も自分も攻撃が激しくてどうしようも無い。かといって、ハンガーはそろそろ爆弾を落とされて潰されてしまうだろう。
出るしかない!
部下の一人、クルト・ハーマン少尉がトムキャットのコクピットに伏せながら吼えた。
「さっさと機体を出さないと、潰されますよー!」
「分かってるって!お前達から先に出ろ!俺は友軍機に援護を要請する!」
轟音の中、可能な限り大きな声でマクロードは叫んだ。どうやら部下には通じたらしく、F-14はハンガーの出口へとゆっくり進んでいく。
ハンガーの近くに何かが落ちたらしく、機体が地面と一緒に揺さ振られた。同時に戦闘機の唸りも大量に聞こえる。
「えーっと・・・こちらローエングリン隊隊長、アーレン・マクロード!四番格納庫から離陸する!誰か援護してくれ!」
応答が無い。この状況では無理も無いが・・・・・・。
「ええい!糞食らえ!」
本当は俺には海がお似合いなんだよ!


だが、しっかりその無線は届いていた。アンダーソン大尉に。
相変わらずだな。あいつも。
<<こちらジークフリート5。今のは誰ですか?>>
「ヒューボットのフレンドだ。とりあえず敵を落とせ」
五機のF-15Cは既におびただしい火花の散る戦場を鼻先に置いている。
そして、AWACSの仕上げ。
<<ジークフリート、交戦を許可する>>
レーダーに無数の点が移り、彼らは血の荒ぐ世界へと飛び込んだ。うちの隊の連中の実戦経験は十分。頑張って生き残ってくれ。
飛行場は轟音に塗れている。大量の戦闘機が飛び交い、ミサイルの放つ煙と機銃の出す光が風景を飾っていた。地上には滑走路やハンガーが並んでいる。何とか離陸して戦っている友軍機もいれば、道路で黒焦げになっているのもいた。アンダーソンは散開を命じ、高度を上げた。まずレーダーを目視し、そしてすぐに標的を目視すると高度を下げた。そして目標の後ろへと降りた。葉巻の様なずんぐりした機体―――MiG-21-93フィッシュベッドだ。機体の色は灰色だ。いきなり後ろに着かれた敵機は逃げようと、機体をひるがえした。
遅い。既にHUDの照準の真ん中に捉えられている。
ボタン一つで丸っこい機体は音と共に風穴をうがられた。煙を噴き上げたかと思うと、フィッシュベッドは火に包まれる。またもやパイロットは死んでいるらしく、そのまま機体と一緒に吹き飛んだ。
腕は落ちていない。実戦は久しぶりだったから心配していたが。
<<おいおい、もしかしてアンダーソンか?>>
さっきの声の主だ。マクロードだ。アンダーソンは元気に返した。
「マックか?良く俺だと分かったな」
<<今格納庫から出ようとしてんだ。お前のイーグルはハッキリ見える。離陸するから援護してくれ。四番格納庫だ。でっかく「4」って書いてある!>>
確かに書いてある。あれじゃかなり目立つ。良く見るとぞろぞろトムキャットが出ていた。ハンガーにまだいるのがマクロードのF-14Dだろう。あれでは、いい的だ。
「了解した。ジークフリート隊、四番格納庫付近のローエングリン隊を離陸まで援護せよ」
反応は素早かった。すぐに自分の隊が集まるのが分かる。経験とは価値のあるものだ。
<<部下を先に離陸させる!、滑走路はいけるか?>>
<<何とかいけます!>>
<<分かった!頼んだぞジークフリート!>>
幸い一番近くの滑走路はまだ使えた。他の滑走路はほとんどが穴が空いているか、スクラップが塞いでいるかのどっちかだった。敵機は明らかにローエングリン隊を狙っている。証拠に敵の一機のF-4Eが腹に括り付けた爆弾を落とそうとしているのが目に入った。アンダーソンが照準に捕らえる前に、ジークフリート3のヒルが巧みに機体を操り、機銃でファントムを引き裂いた。運よく火を噴いたF-4Eは四番格納庫を飛び越えて落ちていく。さすがはISAF。
しかしそれで終わるはずも無く、混戦状態の中敵機がこれ以上は敵を離陸させまいと、次々に向かってくる。
「よし、みんな行くぞ。もし失敗したらローエングリン1の幽霊が夢に出るぞ!」
<<変な事言うんじゃねえ、アンダーソン!>>
実戦経験豊富な彼らには、同じ人間を殺す事には躊躇しなかった。だが、それは決して喜ばしい事ではない。それは本人も十分自覚している。本来なら自分の様な生き物は必要ない。しかし、必要なのだ。それが今の時代。
五機のファントムが滑走路を狙っていたが、ジークフリート隊が迫ってくるのを見るとすぐに散開した。あのカラーリングは何処のだろう?エンブレムを見ようにも、今は無理だ。敵機はこちらを攻撃しようと機体を操り、ロックオンを掛けようとしているらしい。性能では明らかにこちらが上だが、油断はならない。
「ジークフリート1から各機へ、敵は旧式だが油断するなよ。すまないがダーティー―――バートンの事だ―――は離陸するトムキャットを見といてくれ」
<<了解、ジークフリート1>>
ダーティーの行動を確認する暇も無く、敵機が襲い掛かって来る。アンダーソンは正面から来た敵の機銃を見事にかわし、擦れ違う瞬間に旋回して後ろに着いた。
「ジークフリート1、FOX2」
ミサイルに尻を木っ端微塵にされたF-4はあっという間に爆発し、塵と化した。少し右を見ると、フロート機が敵機を追い散らしていくのが見えた。バルクホルムも傭兵の血を煮えたぎらせながら、ファントムが後ろから自分を食おうとするのを楽々かわし、スピードを急に落とす。金髪の男の後ろにいた戦闘機は彼の前に出てしまった。後はイーグルの装備するM61 バルカン砲に穴だらけにされるのみだった。この男はこの戦法が得意だ。
下手すればやられるが。
<<こちらローエングリン2、離陸を開始する。援護を頼んだ>>
一機のトムキャットが既に滑走路を走りぬけようとしている。幸い、今まで落とした機体はマクロード達の花道を塞いだりはしていない。
<<アンダーソン!俺の部下を守ってくれよ!俺も出るからな!>>
「分かってるよ」
マクロードはこんな状況の中でも誘導してくれる整備員に敬礼をし、その近くでM16を空に向けて引き金を引きっ放しの兵士を見据えた。あんな銃では効かないだろうが、勇気は認めざるを得ない。彼のF-14Dが外に出たことで、格納庫は空となった。なので整備兵も一人残らず立ち去っている。
そしてローエングリン1がハンガーからある程度離れたところで、燃えがった敵機が今までいた“箱”に突っ込み、大爆発を起こした。
危なかった・・・・・・。
その後、やっとの事で部下の一人が長い道路を走っていくのが見えた。本当なら空母から出た方が似合うのだが、フォーバット空軍の事情で、地面から出る羽目になっているのだ。ちなみにマクロードのスーパートムキャットは発艦出来る空母が無いので、もし海の上に浮いた滑走路から出るならばF-14Aか別の機体に乗り換える必要がある。
上で花火が炸裂する中、マクロード機は部下に続いて滑走路を目の前に見据えた。丁度ローエングリン4が離陸した後で、三番機が走り出そうとしている。既に離陸した二番機―――ハーマンが乗っている―――は元気に飛び回っていた。そしてローエングリン3が滑走路を突っ走る。
よし、行ける!
そう彼が喜ぶと同時にファントムが機銃掃射を仕掛けてきた。黒い弾痕が次々と作られ、こちらに迫ってくる。
「わああああああああ!」
つい彼は叫んだが、自機に穴を開けられる前にAAM―――空対空ミサイルの略称―――がF-4を打ち砕いた。
「よーし、アンダーソン!援護ありがとよ。離陸するぞ」
<<了解。ローエングリン1、離陸を許可する>>
ジークフリート隊の隊長は管制官の真似をした。そういえば、管制塔は何処だろう?破壊されたのか?
下を見るとF-14Dが離陸を始めた。どんどん加速し、道路を走って行く。敵の戦闘機部隊は粗方追い散らされてしまったらしく、マクロードの離陸を邪魔しようとする物はいない。
だが、こういう時にアクシデントは起きる。炎上した友軍のF-5Eがマクロードの進路に落ちた。幸い、火炎地獄までの距離はあった。
「まずい!マック!上がれ」
<<ひゅえええい!うおおぉぉぉぉぉおおお!>>
しかし、F-14はまだ上がらない。このままだと炎に突っ込む。
上がれ!
もうすぐでマクロードが火に包まれる。アンダーソンは目をつぶった。そして、少し経ってから開けた。ローエングリン隊の一番機は何とか空に上がり、生きていた。既に車輪を引っ込め始めている。彼の下ではF-5が無残な姿で燃えていた。
<<ふーっ・・・・・・助かった>>
「よかったな、何とか―――マック!後ろに敵機!」
知らないうちにマクロードの後ろにMig-21が食らい付いていた。そして、丸太の様な機体は黄色い閃光を放ち始めた。
<<うおっ!何しやがる!>>
被弾は免れたが、ミグは彼の後ろから離れようとしない。すぐに一機のF-15Cのパイロットは判断を下す。
「マック、なるべく真直ぐ飛べ!」
<<ふざけんな!ロックオンされちまうぞ!>>
「いいからやれ!」
F-14がしぶしぶ従った。コクピットではすぐに警報が鳴った。マクロードは後ろを向く。
「ロックオンされたぞ!早く―――」
一機のイーグルがフィッシュベッドの側面から現れ、見事に八つ裂きにするのがよく見えた。敵機も真直ぐ飛んでいたので、簡単に仕留める事が出来たのだ。イーグルはそのまま煙を噴いたMig-21の上を飛び去った。マックは感嘆の声を上げる。
「サンキュー!お見事!」
<<早く部下に指示をしろ>>
「わかってらぁ」
未だに敵の攻撃は止まない。飛行場の施設の半分以上が燃えているか、煙を上げているかだった。宣戦布告もせずによくここまで派手にやってくれるものだ。レーダー上では敵と味方が入り乱れている。無線機が鳴った為、彼はスピードを少し上げ一時、混乱から離れた。
<<こちらAWACSスノー・アイ。敵軍の脅威レベルが減少。その調子で行け>>
「了解。敵は一体どこの国ですか?」
<<まだ分からない。努力はする>>

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