I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

高カリエスリスク症例0.6(糖質と虫歯の関係)

17歳女性、上顎2〜2、隣接面カリエス

前回のつづき

​​ https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202403050000/

「虫歯の電気化学説」では虫歯の成因は非常にシンプルで以下の2つの条件しかない。しかしこの2つの条件を同時に満たしていなければならない。

1、酸性環境中(H+:水素イオン:プロトン)に歯牙が存在していること

2、歯牙の内外に何らかの電位差が存在していること

虫歯ができるにはH+(水素イオン:プロトン)がHA(Hydoroxyapatite:歯牙)中を通り抜けHAの外部に通り抜けるときにHA中のCa(カルシウム)を溶出させることによるのだが、H+を動かすにはなんらかの力が必要だ。
それを起電力というのだが、前回はその力の源泉としてイオン化傾向(自然電位)の話をした。

今日はもう一つの起電力として酸素濃度差の話をしたい。酸素濃度差があると起電力が発生する。実は酸素だけではなく溶液中の物質の濃度差があると起電力を発生するらしいのだが、現実問題として酸素濃度差は色々なところで発生するので虫歯の原因としては重要だ。



この図は通気差電池と書かれているが、酸素濃度差電池とか酸素濃度差起電力と同じものだ。

電解質中(酸性溶液中)に酸素が通らないセパレーターを介して鉄(同じ金属)の電極が浸されており、左は酸素が吹き込まれ、右は窒素が吹き込まれ酸素が少なくなっている。酸素の少ない右に向かって左から電流が流れこむ。HAの場合の電流はH+だと思って良い。前回と同じくH+が流れ込んだ方の電極が溶ける。

つまり酸素濃度が低いところが腐食する(虫歯になる)。

酸素濃度が低いところというのは口腔内にいくらでも存在する。
口の中でも前歯より奥歯が低い。同じ歯でも前(近心)より後ろ(遠心)の方が低い。
他にもプラーク(歯垢)の外よりも内側、クラックの内部、虫歯の穴の中、各種充填・補綴物と歯質との隙間、食渣が挟まった隣接面、口唇や舌、頬粘膜に覆われた歯面、歯と歯の隣接面部分と考えればいくらでもある。
そのような場所が虫歯になりやすいのは歯科医師ならよく経験するはずだ。

ただ歯周ポケットの内部、歯肉縁下は虫歯になりにくい。それはH+がHAから通り抜けるときにCaから電子を奪ってH2(水素ガス)にならずに歯肉に直接吸い込まれるからだ。

次回は糖質と虫歯の関係で最終回となると思うが、もうお分かりになったと思う。

つづく


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