「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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IwasborntoloveyouⅥ
I was born to love you
司と洸一 ~Ⅵ~ litten by 副魔王
目閉じてると..結構可愛い顔してんやな...。
まだ、薄暗い朝の光の中で洸一はすぐ目の前にある顔を見つめた。
いつも人を微笑ましい弓形の目で見つめるそのまぶたが
安心しきったように合わされている。
――よう寝てる。
小さい頃から見てきた司の顔が何故か新鮮な『知らない誰か』のように見えた。
昨晩は 見知らぬ男の様だった。
いつもオレの後を追いかけていたあの司が
何時でも笑っていたあの司が
いつのまにかオレには届く事の無い男らしい身体つきに成長していて
握られた手の力に『想い』が込められていて
抱かれているうちにわれを忘れてしまった。
おれは、何もかも忘れてすがりつくようにして
司を求めた。
そんな男の素顔が目の前にあって、
登り行く朝日の中で静かに寝息を立てている。
不思議な感情に戸惑っている。
だけど...。、愛しくてたまらない。
そんな俺たちの情事とは無関係に
ペナントレースへの準備は着々と進められて行く。
ココに居る仲間達はみんな心置きなく付き合えるいい仲間だ。
...だけど....
リーグ戦前に『一軍』と『二軍』に分けられてしまう
「ライバル」だ。
野球人として生き残る為にココで結果を出さなければいけない。
オープン戦を消化しつつもチーム内では
ポジション毎の練習やミーティングが頻繁に行われる。
おれは...司と身体を合わせてから
練習の時も無意識に司を目で追ってしまっていた。
一瞬でもこっちを見て欲しい。
ポジションが違うから練習ではそんなに頻繁に言葉を交わす事なんて
出来ない事は分かっている。
だけど..あの日、オレを優しく、そして荒々しく登りつめさせた
司の気持ちがそこにあるなら....。
グラウンドでも俺を見て微笑んでくれ。
だけどその柔らかな微笑みは同じポジションの仲間達にのみ
振りまかれこちらには目線も来ない。
抱いて...、満足しちゃったのかよ。
思いが遂げられてそれで終わりかよ!
あれから幾晩も司を欲していても
自分から言い出せず。
司といえば天使のような微笑で
『明日もがんばろうな』と自分のベットにはいって安らかな寝息を立ててしまう。
自分の想ってもいなかった深い司への気持ちに気づかされた今、
『優しい』司の行動は俺の気持ちを掻き乱すに充分な理由だった。
その日、俺たち新人と二軍の選手がミーティング室に集められた。
そう、開幕戦間近のこの日、誰が1軍に上がれるのか
発表されるのだ。
『一軍に移動する者の発表をする。
呼ばれたヤツは今日中にロッカーを一軍のほうに移動する事。
え~まず、藤香、森永、駿河、』
先輩たちが数人呼ばれた。ええなあ...。
『新人からは...国東、辻、加勢...そして、堀尾だ。』
え...?司は?司はおらんのかいな!!
少し離れたところに座っていた司を思わず見ると
うつむいて、広い肩が小刻みに震えていた。
俺は..オープン戦でいい成績を残した俺と司は一軍に上がれるだろうと
思っていた。
あれだけ、TVでも誉めていたし。
俺との相性を考えれば司は残るはずや無いか!
今日もこちらを一度も見る事無くミーティング室を後にした司に
俺はかける言葉を失っていた。
今、追いかけて行っても、何を言ってやれるっていうんや。
プロの現実。
そして、司のレギュラー落ちなんて気にもかけなかった俺の
気持ちの大胆な変貌。
なんで、こんな大事な瞬間に見てくれん?
同じポジションじゃなかったら痛みはわからんか?
こんな気持ちにさせといて....司!!
とっくに夕食の時間も過ぎた頃、
司は部屋に戻ってきた。
「よお。一軍昇格おめでとさん」
いつもと変わりない優しい微笑を浮かべて司は言った。
「なんで、お前が落ちたんかわからへん。
絶対、俺の登板には司が受けてくれるって思うてたのに...」
数日間のいろいろな想いが交錯して
俺の瞳からはひと筋涙が流れていた。
「な、泣くなや。洸一。そないな事で...」
「そないな事って!司、悔しくないいんか!?
俺はいややで!司のいない一軍でどうやって投げろちゅうんや!」
「...洸一...」
「あれから..抱いてもくれへん。
練習中も全然俺のことなんて見いひん。
キャッチャーのヤツにだけ笑ろうて、俺になんて...
どうせ、俺に話したって解決にならんのやろ。
抱いて...終わりの俺になんて...。」
「ほんま、アホやな。洸一は。」
司の大きな掌が俺の頬を包み込み
柔らかな唇が流れていた涙をぬぐった。
「俺が...洸一を一回抱いたぐらいで満足すると思うてんのか?
練習中洸一の事気にかけてへんと思うてるのか?
どんだけ自制心と戦ってるんかわからへんのか?」
「司....」
司の触れている頬が熱い。
ああ、そうだ。この男の掌は『想い』がこもっているんだ。
「一軍発表があるまで...洸一に無理させたらアカン。
そう思うて、我慢しとったんやで。
でも、もう、ええわ。
俺に火ぃつけたんは、洸一やからな。」
二人分の重みで、ベットのスプリングが軋んだ音を立てて沈み込んだ。
横たえた洸一の髪を撫で、唇を落とす。
かすかに開かれた洸一の目が再び閉じられ、
お互いの気持ちを代弁するかのような舌の動きにあわせて、
洸一の指が、司の背中で震えながら握り締められた。
湿った音をたててそっと唇を離すと、
少し荒くなった呼吸を整えながら
洸一はゆっくりと瞳を開いた。
「好きで...たまらん。」
思わず呟いた司の声に、洸一はたまらず身体の芯が熱くなる。
司は洸一のシャツを忙しなくたくし上げると、
自分のシャツのボタンもすべて外し、乱暴に脱ぎ捨てる。
ゆっくりと降ろされた司の手が洸一のズボンにかかった時
ピクンと洸一の体が跳ねた。
「――嬉しくてどないかなりそうや」
そう、呟いて洸一も司のベルトに手をかける。
互いの体を覆うものが何ひとつ無くなった時、
司は洸一の両手をその熱い掌で包み込み、シーツに洸一の手首を縫いつけた。
「どんなに抱きたかったか。久しぶりやし...
持たなくても怒んなや」
嵐のように司の唇が落ちてくる。
その一つ一つに司の愛情が記される。
両胸の敏感な部分をキリッと噛みしだかれた時、
「あ...っ....」
洸一の湿った喘ぎ声が闇に放たれた。
洸一の両脚の内側に手を滑らせ、抱え上げた太腿の柔肌に唇を当てて
強く吸い上げて証を刻む。
じらすように、その唇が司を欲している部分の周りで
音を立てながら愛撫を繰り返す。
「司っ...」
「なんや。もう、おねだりかいな」
触れられてもいないのにそそり立った洸一自身を間近で見ながら
意地悪な笑みを浮かべて司が呟く。
「何日か、喋れなかった分。ココでたくさん声出してもらうで」
意地悪な唇がそっと先端を掠めた後、
一気に洸一自身を擦り上げる。
待っていた快楽の激しさに
洸一の体が弓なりに反った。
「司、司っ・・・・・・!」
行為に気持ちが伴うとこんなに感じるものなのか。
数回、弄られただけで洸一はあっけなく精を解き放っていた。
「まだや。もっとおしゃべりするで...」
再び太腿を抱え上げ、
双丘を割り奥に隠れている窄まりを舌で解す。
卑猥な音がまたも洸一を欲望でそそり立たせる。
ぐちゃ、ぐちゃと指で窄まりを攻めつつ
唇は洸一自身を攻め立てる。
洸一は、苦痛と快楽の狭間で意識を移ろわせ、
夢中で叫んだ。
「司!司!欲しいよ...」
それと同時に司の熱い物が障壁を掻い潜り浸入してきた。
「ふ・・・っ・・・・・・」
司の熱い滾りを受け入れた洸一は
苦痛を逃そうと短く浅い呼吸を繰り返しながら喘いだ。
「洸一・・・・・・」
欲望のままに奥まで入り込み、激しく動きながら
司は伝わってくる喜びと熱に身を焦がして低く呻いた。
待ち望んではいたものの洸一は声にならない悲鳴を上げる。
涙を滲ませた瞳で司を見上げ、激しく首を左右に振って。
壊れるくらいに揺さぶられ、気が狂うほどに強く激しい快楽が洸一を包む。
司の汗が洸一に落ちて、交じり合って流れていく。
今までの感情が一気に高まって
剥き出しの感情と情欲が形を変えて、二人は体をしならせる。
「もう...アカン..」
「ああああっ!!」
理性を失った激しい律動で
二人はは半ば絶叫に近い声を放って全身を震わせた。
朦朧とした意識の中で、放たれた互いの想いを感じながら
司は身体を繋げたまま洸一にゆっくりと唇を重ねる。
まだ、荒い息の中で奥深くまで洸一を味わうと
息を整えつつ司が話し出した。
「さっき、コーチに呼ばれた。
一軍には塔馬さんがおって、なかなか実践が積まれへん。
二軍でどんどん試合勘を養って、いざと言うときすぐに
こっちに呼んだる言われたわ。
俺も..ちょっと残念やったけど、お前が登板するときには
何が何でも駆けつけるで」
「..な、んや。そうだったんかいな」
「...でな。俺ら野球人としても、恋人としても
これからやないか。
練習中に顔覗きっこして、俺らの関係がバレるような事には
絶対にしとうない。
これからも...ずっとこの関係を守り通すんや。
...それに洸一。
俺のことなんて何年も見てくれなかったお前を
俺が何年好きでいたと思うてるんや。
洸一を守る為なら...
練習中会えん位、我慢せな。」
汗だくの満足した顔で司は続ける。
そうだな...。俺たちはまだ始まったばかり。
決して、その道は平坦な物ではないけれど
いつか俺たちの叫びが、認められる日がくると
信じて歩いていこう。
信じて、努力して、高めあっていこう。
そう、俺たちの「DOUBLE CALL」は
今、始まったばかり。
-Fin-
I was born to love you
「終了記念座談会」へ続く
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