Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business Performance Journal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48 『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章
伝統的な成長会計手法は、コンピュータハードウェアの価格と量など可視的な投資に注目して、より大きな不可視投資(補完的な新製品・サーヴィス・市場・ビジネスプロセス・業務スキル等の開発)を無視してきた。また、産出についても同様に、価格や量などの可視的な面に注目し、サーヴィスの多様性とスピードなどの不可視的な便益を無視してきた。このため、IT 投資の貢献を適切に測定することができなかった。1970-80年代のデイタを使うと、コンピュータ投資は産出に約0.3%/年貢献(Jorgenson and Stiroh:1995, Oliner and Sichel:1994)していて、これはコンピュータの消費者余剰への貢献値(Brynjolfsson:1996)とほぼ等しい。
推定された成長の大部分は、コンピュータ製造業における性能価格比の大幅な下落の直接的寄与による。米国における IT ハードウェアの名目購買額は GDP の1.4%で、性能価格比は年に25%減少するので、GDP に対する名目購買比率が一定であれば、実質0.35%生産性が向上する。GDP デフレイターを見ると、コンピュータハードウェアは、米国のインフレ率を0.5%程押し下げている(Gordon:1998)。最近の研究では、IT 投資の急増を生産性とリンクさせて、1990年代後半のコンピュータの産出への寄与は1.0-1.1%と推定されている(Oliner and Sichel:2000, Jorgenson and stiroh:2000, Gordon:2000)。
変動する経済では、これらの不可視投資を費用として計上すると、産出を過小評価することになる。例えば、米国では最近ソフトウェアを資産計上することになったが、この変更によりソフトウェア投資は1979年の100億ドルから1998年の1590億ドルまで増加した(Parket and Grimm:2000)。これは、1990年代の実質 GDP 成長率に0.15-0.20%の寄与をすることになった。
不可視資産への支出を、費用でなく資産への投資として見直すと、米国の GDP 成長率や生産性向上率は、年に1%以上過小評価されていることになる(Yang:2000)。不可視資産の規模を正確に推定することは困難であるが、IT の経済への寄与を考える際に、無視することはできない。企業レヴェルのデイタの使用により、不可視的投入について、マクロレヴェルの場合より適切な測定ができる(Siegel:1997)。
2.消費的産出の質的変化
IT 投資による質的改善の大きな部分(例えば、適時性・カストマイゼイション・顧客サーヴィス等)は、必ずしも売上の増加に反映せず、統計に現れない。コンピュータの質的貢献についての計測漏れは、以前の技術の場合より大きいと考えられ、生産性向上と経済成長を過小評価している(Boskin et al:1997, Baily and Gordon:1998)。
IT サーヴィスマネジャーの調査によると、IT サーヴィス投資の動機として、顧客サーヴィス・製品品質・便宜性・適時性等の不可視的側面は、費用の節約より重要である(Brynjolfsson and Hitt:1997)。また、IT は製品多様性と関連している(Brooke:1992)。
測定されない便益のもっとも重要なものは、新製品の価値である。新製品の売上は計測されるが、それがもたらす消費者余剰は測定できない。さらに、新製品が物価指数を計算するバスケットに入れられるのは時間が経ってからであるので、物価上昇を過剰評価し、産出の増加は過小評価されることになる(Boskin et al:1997)。また、IT によって製品多様性が大きく増している(Nakamura:1997)。