趣味の漢詩と日本文学

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September 23, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
西陵寄一上人 劉長卿
東山訪道成開(一作開成)士、南渡隋陽作本師。
了義惠心能善誘、呉風越俗罷淫祠。
室中時見天人命、物外長懸海嶽期。
多謝清言異玄度、懸河高論有誰持。
【韻字】師・祠・期・持(平声、支韻)。
【訓読文】
西陵にて一上人に寄す。
東山道を訪ふ成開(一に「開成」に作る)の士、南渡陽(みなみ)に隋つて本師と作す。

室中時に見る天人の命、物外長く懸く海嶽の期。
多謝す清言の玄度に異なるを、懸河高論誰か持するもの有らんや。
【注】宝応元年(七六二)、西陵に旅しての作。
○西陵 西陵湖。浙江省蕭山県の西三十里に在り。
○一上人 唐の詩僧、霊一上人。
○東山 雲門山。紹興の南に在り。かつて霊一が住んでいた。
○開士 開悟の士。高僧。
○隋 「随」と通用。
○本師 もと釈迦のこと。転じて宗派の祖師。
○了義 仏法の第一義を了解する。
○恵心 善い心。

○呉風越俗罷淫祠 呉越の地に邪宗が多かったので、狄仁傑がその祠を破壊し仏教に帰依させたという。『旧唐書』《狄仁傑伝》「呉・楚の俗に淫祠多し。仁傑奏して一千七百所を毀つ」。
○室中時見天人命 『維摩詰経』「時に、維摩詰の室に一の天女有り、諸天人の説法する所を聞くを見て、便ち其の身を現ず」。
○物外 俗界を離れた清浄の世界。
○海嶽 四海五嶽。
○清言 俗を離れた清らかな談話。

○懸河高論 高遠な議論が長く尽きないことをいう。
○持 肩を並べる。
【訳】
西陵湖畔にて霊一上人に寄せる詩。
東山の寺に向かいて道学び悟り開いた上人よ、南の渡し場舟に乗り南を目指して御仏の道に仕えた陽(みなみ)に隋つて本師と作す。
清き心で衆生をば善き方向へ導きて、呉越の民も教化され邪教祭るをやめたとか。
講堂にては仏法を天に代わって説きたまい、世俗はなれて海山の清らかな地に行脚する。
ああ、ありがたや東晋の玄度にまさるご法話じゃ、立て板に水とうとうと匹敵するもの誰も無し。





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Last updated  September 23, 2007 07:27:10 PM
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