趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

December 20, 2007
XML
カテゴリ: 漢詩・漢文
送孔巣父赴河南軍(一作皇甫冉詩) 劉長卿
江城相送隔煙波、況復新秋一雁過。
聞道全師征北虜、更言詩將會南河。
邊心冉冉郷人絶、寒草青青戰馬多。
共許陳琳工奏記、知君名行未蹉■(「足」のみぎに「它」。タ)。
【韻字】波・過・河・多・■(タ)(平声、歌韻)。
【訓読文】
孔巣父の河南軍に赴くを送る。(一作皇甫冉詩) 劉長卿
江城相送りて煙波に阻まる、況んや復た新秋一雁の過ぐるをや。

辺心冉冉として郷人絶え、塞草青青として戦馬多し。
共に許す陳琳の奏記に工なるを、知んぬ君の名宦の未だ蹉■(タ)たらざるを。
【注】
○孔巣父 字は弱弱。わかくして李白らと徂徠山に隠れ、酒を好んだ。
○河南軍 節度使の治所は今の河南省開封市。
○江城 川のほとりの町。
○煙波 もやのたちこめた水面。
○況 まして。
○復 かさねて。
○聞道 きくところによれば。
○全師 全軍。

○南河 ふつうは黄河をいうが、詩題中の河南を韻の関係で。
○辺心 辺塞にいる者の気持ち。
○冉冉 年月が過ぎる様子。
○郷人 故郷の人。
○塞草 辺塞の草。

○陳琳 後漢の広陵射陽の人。字は孔璋。はじめ何進の主簿となり、のちに袁紹に帰す。かつて袁紹のために檄文をつくり、曹操の罪状を数う。袁紹が敗れると曹操に帰し、曹操は其の才を愛でて、咎めず、もって記室となす。ここでは文才ある孔巣父をなぞらえる。
○奏記 書記。
○名宦 名声と官職。
○蹉■(タ) おもうようにならないようす。
【訳】
孔巣父が河南節度使の軍に赴任するのを見送る。
川辺の町のはずれにて君の旅立ち送らんとすれば川面にもや籠めて行く先みえぬさびしさよ、まして群れをばはぐれたる一羽の雁の空に鳴き飛び過ぐるをば見てのちは言うにいわれぬ心地する。
うわさによれば全軍は北のえびすの地に向かい、詩にすぐれたる将校は河南の地にぞ会うならん。
辺土に向かう心には年月すぎて郷里からたより伝える人も絶え、とりでに近い草茂り見ゆるは軍馬ばかりなり。
陳琳書記にたくみにて、君の将来名も官も行きづまること未だあらじ。
【参考】
『全唐詩』巻二五〇    
送孔巣父赴河南軍(一作劉長卿詩) 皇甫冉
江城相送阻煙波、況復新秋一雁過。
聞道全師征北虜、更言諸將會南河。
邊心杳杳郷人絶、塞草青青戰馬多。
共許陳琳工奏記、知君名宦未蹉■(タ)。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  December 22, 2007 01:38:38 PM
コメント(1) | コメントを書く
[漢詩・漢文] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: