趣味の漢詩と日本文学

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November 2, 2008
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カテゴリ: 漢詩・漢文
至徳三年春正月、時謬蒙差攝海鹽令、聞王師收二京、因書事、寄上浙西節度李侍郎中丞行、五十韻 劉長卿
天上胡星孛、人間(一作東山)反氣横。
風塵生汗馬、河洛縱長鯨。
本謂(一作為)才非據、誰知(一作防)禍已萌。
食參將可待、誅錯輒為名。
萬里兵鋒接、三時羽檄驚。
【韻字】横・鯨・萌・名・驚(平声、庚韻)。
【訓読文】
至徳三年春正月、時に謬つて差を蒙り海塩令に摂り、王師の二京を収むるを聞き、因つて事を書し、寄せて浙西節度李侍郎中丞に上(たてまつ)る行(うた)、五十韻。

風塵汗馬を生じ、河洛長鯨を縱にす。
本より謂ふ(一に「為」に作る)才は拠に非ずと、誰か知らん(一に「防」に作る)禍ひ已に萌すを。
参を食し将た待つべけんや、錯を誅し輒ち名を為す。
万里兵鋒接し、三時羽檄に驚く。
【注】
○至徳三年 七五八年。
○海塩 浙江省の県名。
○王師 帝王の軍隊。
○二京 長安と洛陽。
○天上 天空。
○胡星 北方の胡の空の星。スバル。

○反気 謀反の気配。
○風塵 兵乱。
○汗馬 今のフェルガーナ地方(大宛国)に産出したアラビア馬。血のような赤い汗を流すと考えられた名馬。
○河洛 黄河と洛水。
○長鯨 大きなクジラ。転じて欲深い大悪人のたとえ。ここでは安史の反乱軍を指す。

○誰知 反語で誰も知らない。
○禍 わざわい。
○食参 むかし伍参が晋の軍と戦うことを主張したとき、孫叔敖が、「戦いに勝てないときには、伍参の肉を食ってもよいか」と言って反対した故事。「伍参」を楊国忠になぞらえる。
○誅錯 「錯」は、後漢の政治家、晁錯。(?~前一五四年)潁川の人。張恢に刑名学を学ぶ。掌故・太子舎人・門大夫・家令・中大夫・内史を経て、御史大夫に上った。人柄は峻厳にして苛酷であったが、景帝に重んじられた。諸侯の領地をことあるごとに削ったため、呉楚七国の乱をまねき、呉・楚などは晁錯を除くことを大義名分とし、竇嬰や袁▽(「央」の下に「皿」。オウ)が晁錯を除くことを進言したため、晁錯は召し出されて処刑された。ここでは安禄山が反乱して楊国忠を討つのを大義名分としたことを指す。
○輒 そのたびに。
○為名 大義名分とする。
○万里 広い地域。
○兵鋒 武器の切っ先。
○三時 ここでは朝・昼・晩ということか。
○羽檄 木の札に書き、緊急であることを知らせるために鳥の羽をはさんだ文書。
【訳】
至徳三年春正月、時に謬つて左遷され海塩の令となって政治を行っていたが、帝王の軍隊が長安・洛陽を奪回したのを聞いて、そこで事情を書き記し、浙西節度使の李侍郎中丞に宛ててたてまつった歌。
空のスバルは暗くして、地上に反乱の気ふくむ。
兵乱の地に名馬あり、河洛に逆賊のさばれり。
非才のものに節度使を任せたことですでにはや、将来起こる災いの種となるこそ恐ろしけれ。
奸臣楊国忠めをば誰が退治てくれるやら、安禄山の国忠を討つを名分とはなせり。
各地で戦闘繰り広げ、火急の文書日々たえず。





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Last updated  November 9, 2008 09:46:24 AM
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