趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

April 29, 2017
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カテゴリ: 学習・教育

第百八段

【本文】

むかし、女、人の心を恨みて、

 風吹けば とはに浪こす 岩なれや わが衣手の かわく時なき

と常の言ぐさに言ひけるを、聞き負ひける男、

 宵ごとに かはづのあまた 鳴く田には 水こそまされ 雨は降らねど

【注】

〇なれや=断定の助動詞「なり」の已然形+疑問の係助詞「や」。~だからだろうか。

〇言ぐさ=よく言う言葉。口癖。

〇聞き負ふ=聞いて自分のこととして受け止める。

〇宵ごと=毎夕。毎晩。

〇かはづ=カジカガエル。初夏、谷川などの清流で澄みきった声で鳴き、風流なものとされている。

【訳】

むかし、女が、男の冷淡な心を恨んで、

 風が吹くと永久に浪がその上を越す岩なのだろうか、わたしの着物の袖の乾く時がいのは。

と常日頃の口癖として言っていたが、それを聞いて自分のせいだと思った男が、次のような歌を作った。

 毎晩毎晩カエルが数多く鳴く田には、水量がまさることだ、雨は降らないけれど。






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Last updated  April 29, 2017 09:42:03 PMコメント(0) | コメントを書く
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