みどりの日記                  ~gardener's hum~

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第5回 4月28日



『母の日の注文』


もうすぐ母の日。皆さんは大切なお母さんへのプレゼントの
準備はできましたか?
「あ、忘れていた!」なんて声も聞こえてきそうですが。
私は数ある記念日の中でも『母の日』というのは最もハッピーな
ストーリーが多い日だと感じています。ある贈り物のお話をいた
しましょう。

以前、娘さんから実家のお母さまへ“母の日”のプレゼントの
オーダーをいただいたことがありました。バラやカーネーションなど、
生の花に特殊な保存液を吸わせて加工した“見た目も触り心地も
生花そのもの”という長期保存に適した「プリザーブドフラワー」
というお花があります。
造花と違って手触りも柔らかで、より自然に近い風合いが楽しめる
というので人気があります。通常はそれらを使ってアレンジメントを
作ることが多いのですが、その時はヘッドドレス…日本語に置き換えると
“髪かざり”の制作を頼まれたのです。


その注文をくださったお客様は、三十代後半くらいの女性。
以前、私が同じくプリザーブドフラワーで作った直径八センチくらい
のコサージュをご覧になって「あんな感じでヘッドドレスを作って
もらえますか?」と注文してくれたのでした。


でも、直径八センチですからね。結構大きなお花です。
私は、お話を聞きながら、勝手に頭の中で年配の女性が渋谷を歩く
ギャルのように頭の上に大きなお花をボン、ボンと乗せている姿を
想像してしまいました…。その姿がなんとも不自然で「え、こんなに
大きなお花を頭に飾るなんて大丈夫ですか?」と心配してしまいました。


しかし、よくお話を聞いてみると、お母さまの趣味は「踊り」ということで、
発表会の衣装に合わせて髪に飾るヘッドドレスを探しているということでした。
なるほど!それならば、納得です。

「紫系で作ってください」という注文でしたので、ひとつは紫一輪で
グリーンやパールをあしらい、もう一つはピンクの花びらと重ね合わせ、
大きなお花を作りました。それをケースにセットし、リボンを結んで完成です。
「素敵な趣味をお持ちのお母さまに似合うといいな」。プレゼントを
受け取るお母さまの笑顔を思い浮かべながらラッピングをしました。


最近では、こんな風にオーダーをいただくことが増えましたが、
以前お花屋さんで働いていた頃には、母の日ともなれば多くのお客様が
お店にいらして、様々な人間模様を見ることができました。中でも印象的なのは
進学や就職で遠く離れて生活をする息子さんから、お母さんへのお花のプレゼントです。

きっと、日頃改まって言う事のできない感謝の気持ちを伝えたいのでしょうね。
「一応、母の日だからさ」…なんて、照れ屋な子どもたちのぶっきらぼうな
セリフが聞こえてきそうです。



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